海外に長期滞在するうえで避けては通れないビザ・入国事情。数年前までは比較的容易に長期滞在が出来たタイも近年はビザ取得・入国管理の厳格化が進み、以前に比べて難しくなってきているという話をよく聞きます。
本記事では2019年3月時点のタイのビザ・入国事情をご紹介します。
※手続きに必要な書類やプロセス等は変更される可能性がありますので、最新の情報については下記の領事館・大使館・イミグレーションのWebサイトでご確認下さい。

無査証(ノービザ)入国について

タイを訪れる旅行者は、観光目的で30日以内の滞在であれば、入国経路に関係なくビザ無しで入国することができます。ただし、以下の条件があります。

  • パスポートに6ヶ月以上の有効期間が残っていること
  • 出国のための航空券や乗船券を所持していること
  • 滞在期間中の十分な資金を所持していること(一人当たり現金10,000バーツ、一家族当たり現金20,000バーツ)

滞在を延長したい場合は、イミグレーションにて7日間から最長30日間の延長が可能です(申請料金1,900バーツ)。
かつては滞在期限が切れる前に隣国へ出国し、再度タイに入国する「ビザラン」という手法を繰り返す人が多くいましたが、近年は不法就労外国人を取り締まる意向からビザラン規制を強化する傾向にあります。ビザランを複数回行っている場合、入国の際に別室に連れて行かれて取り調べを受けたり、入国のための賄賂を要求されるケースもあるので注意して下さい。

ビザの種類

全部で十数種類あるタイのビザのなかでも代表的な観光ビザ・就労ビザ・ロングステイビザについて以下に簡単にご説明します。

観光ビザ(カテゴリー:TR)

観光目的で30日以上滞在する場合、タイ国外で観光ビザを申請・取得する必要があります。滞在許可日数は60日以内で、一度出国すると失効してしまうシングルエントリー(有効期限90日間)と再入国が可能なマルチプルエントリー(有効期限180日間)があります。イミグレーションで最大30日間の延長が可能です(申請料金1,900バーツ)。

就労ビザ(カテゴリー:NON-B)

タイでビジネスをするにはこの就労ビザと労働許可証(ワークパーミット)が必要です。国外での申請・取得が原則です。最初の滞在許可期間は90日間で、その後1年毎の更新となります。新規申請時や延長時、申請場所によって申請書類が異なり、書類の準備も猥雑なため代行業者を利用して申請するケースも多いです。

ロングステイ/リタイアメントビザ(カテゴリー:NON-O-A)

満50歳以上で就労を目的としない長期滞在者向けのビザです。こちらも最初の滞在許可期間は90日間で、その後1年毎の更新となります。タイの銀行に直近3カ月以上80万バーツの預金があること、更新後も最低40万バーツ以上預金しておくこと、あるいは月額の年金支給額が6万5,000バーツ以上あることが条件です。

ビザ申請の手順

国外でビザを申請する際の手順は以下の通りです。

  1. 必要書類の準備
  2. 申請手続き前にオンライン予約(※)
  3. 大使館・領事館にて申請
  4. 後日、大使館・領事館にて申請結果を受領 ※2019年2月よりラオス・ヴィエンチャンのタイ王国領事館でもオンライン予約が必要になりました。

申請時の主な注意事項として、申請書類が申請日から3ヶ月以内に発行されたものであること、入国日の2週間ほど前から余裕を持って申請すること(更新の場合はビザの有効期限が15日以上残っていること)が挙げられます。
また、ロングステイビザや配偶者ビザなどはノービザで入国後、国内でビザ切り替えが可能です。国内での切り替えや更新手続きでは、必要書類として明記されていない書類を要求される場合がありますので、関連書類を事前にコピーして持参することをおすすめします。

ビザ取得後に滞在者が注意すること

晴れてビザを取得した後も、90日以上の長期滞在や出入国をする場合は以下のことに気をつけなければなりません。

90日レポートの提出義務

ビザ取得後、90日以上滞在する場合は最寄りのイミグレーションに現住所を報告する義務が生じます。申請日は期限日の15日前から7日後までで、期限内の提出義務を怠った場合は2,000バーツの罰金となります。ただし一度国外に出国し入国すると再度その日から90日間のカウントが始まります。
また一度イミグレーションで直接提出したことがある方は、オンラインでの提出も可能です。
チェンマイイミグレーション・90日レポートオンライン提出

再入国許可証(リエントリーパーミット)の取得

ビザは有効期限内であっても一度出国すれば失効となります。ビザの有効期限を保有したまま出入国を繰り返す場合は再入国許可証が必要になります。基本的にはビザ取得時か、出国前にイミグレーションで取得しますが、空路であればバンコク・スワナプーム空港でも手続きが可能です。手数料はシングルが1,000バーツ、マルチプルが3,800バーツとなっています。

オーバーステイ時の罰則

滞在期限を超えてタイに留まった場合は不法滞在となり、1日につき超過分の罰金500バーツが科せられます(最大20,000バーツ)。90日以上オーバーステイした場合タイへの再入国が1年間禁止され、1年以上なら3年間禁止、3年以上なら5年間禁止、5年以上なら10年間禁止となります。40日以上のオーバーステイでは逮捕・拘束される可能性もあるので、万が一期限を過ぎてしまった場合は早急に出国しなくてはなりません。

永住権の取得について

以上のような猥雑な手続きや義務を無くしたいということであれば、永住権を取得するのも一つの手です。
タイの永住権は、日本人としては年間100名まで取得することができ、①タイに投資している者、②タイ国内で就労している者、③タイ人配偶者または家族がいる者、④タイに恩恵をもたらす特殊技能者であれば申請・取得することができます。
しかし、ビザ更新の手続きが不要になる等のメリットに比べて、申請・取得に多大な時間と費用がかかることや、永住権を取得しても外国人としての制約が残るなどのデメリットの方が大きいため、実際に申請する日本人は年間20~30人程度とあまり多くないようです。

最後に

国外で新規にビザを取得する場合は、必要手順・必要事項を守っていればそこまで難しくありません。一方、タイのイミグレーションでビザの更新等を行う場合は担当官の裁量次第なところがあり、なかなか一筋縄ではいかないケースもあります。
ちなみに、増築・改修工事のため一部業務を移転していたチェンマイのイミグレーションは2018年9月から元の空港近くのオフィスで全業務を再開しました。人員も増加され、以前よりは待ち時間も少なくスムーズに手続きが出来るようになっています。
永住権を取得する場合を除いて、タイに滞在する限り一生ついてまわるビザ事情ですが、条件緩和や手続きの簡素化によって今後少しでも楽になるといいですね。