厳格な男女関係も今は昔…なのに未婚化が止まらない! 韓国の結婚事情

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※本記事は特集『海外の結婚式』、韓国からお送りします。

クリックorタップで韓国説明

 

ついに日本超え! 上昇する韓国の未婚率

日本と何かと似ているといわれる韓国。とくに少子高齢化などの社会的な動きが日本に続いてやってくることが多かったため、日本の動向に関心を持つ人が多かったように思います。しかし未婚化や晩婚化の傾向はついに近年、男女ともに日本を上回りました。

2015年のデータでは日本人の初婚年齢は男性30.7歳、女性が29.0歳なのに対し、韓国では男性が32.6歳、女性は30歳となっています(出典:일본 ‘만혼화’ 심각, 한국은 더 심각(日本の「晩婚化」深刻、韓国はより深刻(ハンギョレ新聞) 数値は厚生労働省、韓国統計庁による)

「七放世代」や「ヘル朝鮮」という世相を表すここ数年の新造語に代表されるように、韓国では「青年失業」が大きな社会問題になっており、こうした未婚化には経済的な要因が大きいとされています。韓国の就職事情については以下の記事をご覧ください。

https://traveloco.jp/kaigaizine/work-korea

 

男性が家を準備して、女性は家財道具を準備する

結婚後の生活ももちろんですが、結婚するときにも準備にお金がかかるもの。結婚式や新生活へ向けて用意するお金や物品のことを韓国では「婚需(ホンス、혼수)」といいます。この婚需では、一般的に男性が住居を準備し、女性が主に家財道具を用意。これまで働いて貯めたお金であったり、親も子供を援助するのが普通です。

大邱にあるウェディング通り。結婚用品街を「婚需通り」ということも

住居に関しては家を購入する資金があれば理想的ですが、なかなかそううまくはいきません。韓国では「チョンセ(傳貰、전세)」といい、まとまった金額を家主に預け、月々の家賃は実質無料で部屋を借りる制度があるのですが、これには日本円にすると数百万~一千万円単位のお金がかかります。これが結婚の際、男性側に求められるのです。

「ウォルセ(月貰、월세)」といって月々の家賃を払うカップルもいるようですが、結婚前の女性に話を聞くと「最低でもチョンセじゃないと」と厳しい声が返ってきたりもします。このような場合にはローンを組むなりしてお金を工面するようです。

韓国の独特の家賃システムについては以下の記事をご覧ください。

https://traveloco.jp/kaigaizine/house-korea

 

占い好きの韓国。結婚には占いでの相性も重要!

韓国の女性たちが集まると、占いの話をよくしていると感じます。年始であれば今年の運勢はどうこうという話が出たりもしますが、恋人がいる場合は一緒に占ったりすることも。全く信じない人もいますが、結婚する前には相手との相性を見てもらうのです。

釜山の繁華街にある占いのテント

この占いは主に「四柱(サジュ、사주)」といわれるもの。日本では四柱推命という名で知られています。生年月日や生まれた時間をもとに二人の相性を占ってもらうのですが、その相性のことを「宮合(クンハプ、궁합)」といいます。その「宮合」に難あり、つまりは、占いの結果が悪ければ、結婚を見送る人もいるというのだから驚きです

そんな話を耳にしてもしばらくは半信半疑だったのですが、あるとき韓国人女性に「占いの結果なんて関係ないですよね?」と尋ねてみたところ、「関係あるんですよ」と真顔で返ってきて驚いた記憶があります。

次に、結婚式の様子を見てみましょう。

 

とにかく合理的な韓国の結婚式

韓国の現代の結婚式は、「礼式場(예식장、イェシクジャン)」という、ウエディングホールで行われるのが一般的です。式が決まると正式には紙の招待状を送りますが、最近ではカカオトークというLINEと同様のメッセンジャーアプリを使って送ることもあります。

韓国のウェディングホール。ビルのなかにあることも多い。

参席者の服装は「ジーンズでなければOK」とも

韓国の結婚式では参列者の服装には特にこだわりがありません。韓国では「ジーンズでなければ大丈夫」ともいわれるほど。学生は普段着でも良いという人もいますが、キレイめの服を着ていけば特に問題ないとも言われます。

日本であれば男性はスーツに白ネクタイのようにほぼお決まりのパターンですが、いくらか自由度が増すのが韓国の結婚式。実際のところスーツを着ていく人が多いですが、少しカジュアルなジャケットを羽織ったり、冬場にはスーツで出かけたりする人も。女性はドレスを着ていくことはなく新婦よりは目立たない色合いのワンピースを着るなど普段よりキレイな服装でやってきます。

会費制の結婚式、ご祝儀袋は準備不要

韓国の結婚式は会費制に近いものがあります。会社の同僚や知人なら3万ウォンまたは5万ウォン(約3000・5000円)で、グループでまとめて渡す場合もあります。食事をすることも考えると、一般的には5万ウォン(約5000円)のことが多いようです。親しい友人など近しい間柄であれば、10万ウォン(約1万円)以上にします。

結婚式場に飾られる花輪。「祝 結婚」「祝 華婚」と記される。

式場の受付には、無地だったり、漢字で「祝 結婚」と書かれた空の封筒が置かれているため、準備しなくても特に問題はありません。ご祝儀を封筒に入れて渡すと、食事券が手渡されます。食事をせずに帰る場合には若干の車代が用意されていることも。さらに日本のような引き出物もありません。

流れで始まり、流れでお開きとなる結婚式

礼式場では厳粛な雰囲気はなく、参列者が集まり始めてザワザワとしたなかで、開始時間になると新郎新婦が入場して自然と始まります。

礼式場での結婚式の様子。新郎新婦の母は韓服で出席することも。

韓国の結婚式は、宗教とは関係がなく行われる場合が多く、日本でいう「人前式」というスタイルが一般的。「主礼者(주례자、チュレジャ)」といわれる知り合いの媒酌人をたてて、夫婦の愛とこれからの人生を誓いあうもの。特に男性は両親に対し、ひざまづいて「クンジョル(큰 절)」という最敬礼のお辞儀をします。また場合によっては結婚式のなかに踊りや歌などの余興を含むこともあります。

韓国では特に披露宴が行われません。結婚式を終えたあとはご祝儀を渡すときに受け取った食事券をもって式場に併設された食堂へ移動。ビュッフェ形式で好きなものをとり、各自で食事したり軽くお酒を飲んだりするのがごく一般的なスタイル。食事をしているあいだに新郎新婦がケーキカットをしたり、参列者の席をまわり挨拶をしたりします。

韓服姿でケーキカットする新郎新婦

ビュッフェの食事では、韓食を中心にして中華や和食が含まれたりすることもありますが、料理のなかに欠かせないものといえば「クッス(국수)」という素麺に代表される麺類で、これには「夫婦の縁が末永く続くように」という意味が込められています

結婚式に欠かせない食べ物、クッス(素麺)

「クッスを食べること」は結婚することの代名詞のように使われ、なかなか結婚しない子どもに対して、親が「いつクッスを食べさせてくれるのか?(언제 국수 먹여 주는 거야?)」と迫ったりもします。友人からもそのように言われたりするそうです。

そして食事を済ませると流れ解散。その後は新郎新婦と親族だけで「幣帛(ペベッ、폐백)」といわれる伝統型の結婚式を執り行います。この際には夫婦がお色直しをして伝統衣装に着替えて儀式を行うのです。

 

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そうしたこともあり参列者は長い時間拘束されることはなく、あまり負担がかからないようになっている点で、簡素かつ合理的な印象を受けます。しかし、韓国では親しい人だけを呼ぶわけではなく頭数を増やす傾向にあり、人によっては「サクラ」を呼んだりすることもあるのだといいます。そんなこともあり付き合いが多いと、日本以上に結婚式に出席する回数が多くなるのが普通です。

ウェディングカーに乗り、新婚旅行に

結婚式が行われている式場の前を通ると、風船などで飾り付けられたウェディングカーが停められています。日本ではなかなか見ることがないので驚くのですが、これは新郎新婦の友人たちが風船をつけて装飾するのだといい、式を終えた後、そのまま新婚旅行先へ旅立つカップルもいるのです。

地方のお祭りでの合同結婚式で、ウェディングカーが待機している様子

韓国の伝統的な結婚の儀式、婚礼式

今ではほとんど行われませんが、伝統の様式で結婚式を行う人も稀にいるようです。「結婚式」という言葉は日本統治時代以降に流入した言葉だともいわれており、本来は「婚姻式(혼인식、ホニンシッ)」または「婚礼式(혼례식、ホルレシッ)」といいます。写真は韓国民俗村という伝統テーマパークでの伝統婚礼式の再現。

琴や笛、太鼓などの伝統楽器での演奏が行われるなか、夫婦になる二人には付き添いの人がつき、向かい合って座り儀式が執り行われます。男女のあいだで最上級のお辞儀、クンジョルが交わされ、二つに割れるひょうたんの盃でそれぞれがお酒を飲んだりといった儀式が行われるのです。

次に結婚までの男女交際と、結婚後の夫婦生活における韓国らしい特徴を見ていきます。

 

厳格なはずの男女関係も、儒教の影響は薄れつつある

朝鮮時代には儒教が国教とされていたため、現代の韓国にもその価値観が影響しています。中国の経典「礼記」のなかには「男女七歳にして席を同じうせず」という言葉があります。7歳にもなれば男女の別を明らかにして、みだりに付き合うことは避けるべき、というもので、これを「男女有別」ともいいます。

最近は男女交際がかなりオープンに

このようなこともあり、かつて韓国の中学高校では男女別学の学校が多かったのですが、グローバル化の流れのなかで今では共学が増えています。そして近年は男女交際もかなりオープンなものになり、街中でベタベタしたり、電車のなかでキスをする若者を目撃することもかなり増えてきました。

それまで婚前交渉はタブー視され、俗に「速度違反(속도위반、ソクトウィバン)」ともいわれる、できちゃった結婚の割合は2001年の7.52%から2015年の17.8%までに上昇しています(日本は25%程度)。このように性に関することや男女関係に関しては、少し前までかなり保守的なものがあり、時代の流れとともに変化しています。

実際に「男女有別」という意識がどんなふうに根付いていたかは、伝統家屋である韓屋の造りにもよく表れています。

伝統家屋のつくりは男女別々。今は同じベッドで寝る

韓国の伝統家屋である韓屋は、木造の平屋建てでした。当時の身分によっても家の広さや構造が異なりますが、とくに上流階級の家では男女の生活空間が建物や部屋で区別されていました

伝統家屋・韓屋の様子

母屋にあたるアンチェ(안채)は敷地の奥にあって台所を備え、アンバン(안방)という部屋では女性や子どもが暮らしていました。手前にはサランチェという棟があって、そこには応接間の役割をもち、主人の居間でもある舎廊房(サランバン、사랑방)がありました。つまり、男女は別の建物で過ごしていたのです。

実際にソウル・仁寺洞の近くにある「雲峴宮(ウニョングン、운현궁)」という王族の親族にあたる人が暮らした邸宅を見てみると、アンチェの建物が口の字型に建てられており、入口はひとつで外部から男性が気軽に侵入できないようになっています。ちなみに朝鮮王朝の王宮である景福宮でも、王と王妃が暮らす場は建物が分けられています。

雲峴宮の母屋にあたる建物。中庭を囲むように建てられている

現代の韓国人はアパート暮らしをする人が多く、それぞれの家庭によっても異なりますが、基本的に夫婦の部屋はひとつで残りは子供部屋となります。そして韓国の夫婦は同じベッドに寝ることがごく普通なのだといいます。

韓国では年長者には敬語を使ったり、お年寄りには席を譲ったりという「長幼の序」といった儒教的な価値観は残ってはいますが、「男女の別」という意識は、徐々に薄れつつあるように感じます。

 

未婚化が社会問題の韓国、結婚を取り巻く環境を改善できるか?

現代の韓国では、男女の付き合いにおける儒教の影響が薄れており、交際がオープンなものとなり、かつては別々であった夫婦の空間も同じになっています。

とはいえ大きな問題は未婚化の進行。経済的な要因などもあり、結婚を先送りにする人たちが増えており、「独身主義」が社会問題化しているという実情があります。2018年には合計特殊出生率(女性が生涯に産む子どもの数)が0.98となり、ついには世界最低となりました。

男女の交際は開放的になりつつあるとはいえ、未婚の状態で子どもを産むことは日本以上に避けられることもまた事実。韓国の未来は「結婚」を取り巻く環境をどれだけ改善できるかにかかっているようです。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

吉村 剛史

吉村 剛史

東方神起やJYJと同年代の1986年生まれ。「韓国を知りたい」という思いを日々のエネルギー源とするも、韓国のオシャレなカフェには似合わず日々苦悩。ソウルや釜山も好きだが、地方巡りをライフワークとし、20代のうちに約100市郡を踏破。SNSでは「トム・ハングル」の名で旅の情報を発信。Profile / Twitter / Facebook / Instagram / 韓旅専科

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