2018.04.05

『写ルンです』でインドネシア・ジャカルタを撮ってみた

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『写ルンです』でインドネシア・ジャカルタを撮ってみると、そこで働くさまざまなひとびとの素敵なポートフォリオに。色褪せた風合いと混じり合う、伝統文化の人形や獅子舞のふしぎな存在感は必見です。現地在住の武部さんがご紹介。

 

「写ルンです」でジャカルタを撮ってみた

写ルンですを片手に、ジャカルタの街に繰り出しました。

編集部からのミッションとしては「観光地と日常生活の両方を撮る」という以外に特にしばりはなかったのですが、自分なりにメインテーマとして「職業」を設定。今も昔もあるジャカルタらしい生業の数々を写ルンですで切り取れば、現代でも過去でもない摩訶不思議な空間がふわふわと表れてくるんじゃないか、と思ったのがその理由です。

旧市街にて、いってきますの図(使用カメラ:iPhone 5S。以降注意書きのない写真はすべて写ルンです使用)。

 

実は……ジャカルタの若者の間でも流行中のフィルムカメラ

去年の秋ごろ、私が日本出張の際、長女から突然「使い捨てカメラ買ってきて!」とリクエストがありました。どうやらフィルムカメラはジャカルタでも流行っていて、中でも手軽に使える写ルンですは、日本に旅行するインドネシア人がドンキホーテなどでお土産用にまとめ買いすることがけっこうあるようです。

また、わざわざフィルムを使わずとも、フィルムで撮ったレトロ感が出るその名も「HUJI」なるアプリもあります(写ルンですのメーカーFUJI FILMのもじり!)。

iPhone 5Sで撮影

HUJIは知っていたけれど、元ネタを知らなかった次女(iPhone 5Sで撮影)。

 

ジャカルタの観光地といえばまずはここ。旧市街を激写!

では写ルンですを持って出発! 目指すは観光地です。しかし。ジャカルタはビジネスや政治の中心ではありますが、観光資源は正直なところイマイチ……。そんな中、出張者が自由時間に立ち寄る場所としてお約束なのがコタ(Kota)地区の旧市街です。

ぴっかぴかのオフィスビルが並ぶスディルマン(Sudirman)通り、タムリン(Thamrin)通りを北上すると、オランダ植民地時代の古い建物が集まっているエリアがあります。16〜17世紀ごろにアジア貿易の中心地として栄えたバタヴィア(当時のジャカルタの名称)を彷彿とさせるこの場所。ここが非常にフォトジェニックなのです。

観光用馬車のお馬さんがいぇーいとお迎え。写ルンですを使うのなんておそらく10数年ぶりだし、ちゃんと撮れるかどうかかなりドキドキものでしたが、想像以上にいい感じの出来栄えで自分でもうっとり。背景の色を抑えると、対象物がぱきーんと映えますね。

これはオンデル・オンデル(Ondel-ondel)といって、ジャカルタの伝統芸能のひとつ。魔除けの意味があるそうです。この二人組は観光客の撮影用にただ置いてある張りぼてですが、通常はこの中に人が入り、音楽を鳴らしながら街を練り歩いてお金を集めたり、お祭りを賑やかしたりします。今でもよく街中で遭遇する、現代に生きる伝統芸能と言えるでしょう。

ここファタヒラ( Fatahillah )広場は、周囲を歴史やワヤン(人形劇)など各種博物館、雰囲気のいいリノベーション・カフェといったオランダ時代の古い建築物に囲まれ、休日はたくさんの人で賑わいます。自然と観光客目当ての商売人が集まってくるわけですが、彼らはただの土産物売りだけではありません。

歴史上の人物のコスプレで、写真を撮らせてお金を集める人。これはインドネシア独立戦争の英雄、スディルマン将軍の銅像コスプレです。手前にお金を集める入れ物や、一緒に写真を撮るための小道具が置いてあります。

テンポラリーのタトゥーを描くアーティスト。

こちらは準備中の大道芸人。

さて、そこからちょっとすぐ近くの中華街の方に歩いて行きます。

ジャカルタではすっかりいなくなってしまった自転車オジェック(ojek)。いわば自転車タクシーですが、このエリアではまだけっこう見かけます。このおじさんは、「旧市街巡りはどうだね」と声をかけてくれました。今オジェックは圧倒的にバイクが多いのですが、それについてはこちらの記事もご参照を。

世界最悪の大渋滞はビジネスチャンス! インドネシア・ジャカルタの通勤地獄

古ダンボールをリヤカーで運ぶおじさん。スハルト大統領による独裁政権への鬱屈した不満が爆発して起きた1998年5月の暴動。その際、スハルトに優遇され経済を牛耳っているとされた華人が標的となり、彼らの商店が集まっているこの辺りは破壊や放火などで大きな被害を受けました。それ以来国外に脱出した華人も多く、約20年たった今も崩壊したまま放置された建物が見られるため、にぎわう市場を外れた一帯はなんとなく寂れた雰囲気です。

通りがかりのいい感じのミーアヤム(mi ayam)、つまり鶏そば屋さん。

街を練り歩いてお金を集めるバロンサイ(barongsai)、いわゆる獅子舞。ちょうど春節前ではありましたが、華人の多いこのエリアでは年中見られます。

 

独立記念塔とアンチョールで垣間見る、開発の今昔

東京に住んでいる人の多くが東京タワーに登ったことがないように、ジャカルタっ子の多くが意外と来たことのない場所が、奥に見える独立記念塔・モナス(Monas)。1962年にスカルノ大統領の号令のもと建設が始められ、1975年のスハルト大統領の時代になってから完成したジャカルタのシンボルです。高さ132メートル。手前は園内をめぐる観光バス。

さっきの写真では頭が切れちゃっていたので、改めてこちらも。表面が純金で包まれたてっぺんの炎の下が展望デッキで、基底の部分は歴史博物館になっています。画質の適度なレトロ感により、写ルンです発売当時の80年代、建設ラッシュの進むジャカルタのブイブイ感が出ています。

運搬中のオンデル・オンデルに遭遇。

インドネシアといえば美しい海! ジャカルタにも海はあります。

アンチョール(Ancol)は総面積552ha、東南アジア最大のリゾート地区。エリア内に遊園地、水族館、ホテル、レストラン、ボーリング場、ショッピングモール、高級マンションなどがあり、運営元のプンバングナン・ジャヤ・アンチョール社はジャカルタ特別市が大株主の上場企業です。

公共の場所ではないので海岸に行くのにも入場料が必要なわけですが、その割にまあ、控えめに言っても汚い。このジャカルタ湾一帯ではアホック前ジャカルタ知事が支持していた人工島建設が進められています。アニス現知事はこれに反対して中止を唱え、いやでもすでに進んでるのにさてどうなるの?……みたいなゴタゴタがあったりもします。ちなみに、ここのマリーナからスピードボートに1~2時間乗るだけで透明な海が広がる別世界、プラウスリブ(Pulau Seribu)に行けます。

哀愁あふれるアンチョールの周遊船。

 

日常を切り取ってみたら、今なのになぜか懐かしかった

さて、続いて普段の生活の中で写ルンですを持ち歩いてみました。

まずは、我が家のキッチンがなんとなく昭和っぽいので試しにパチリ。小学生の時の自分が見たら、電子レンジがわからなくて「なんで台所にテレビが?」と思ったことでしょう。

私の通うオフィスの目の前にある歩道橋には、いろいろな物売りやストリートミュージシャンがいます。ウクレレやギター、スピーカーを抱えたカラオケシンガーなんかが多いんですが、たまにこんな人たちも。

バイオリンのデュオ!

どこを撮っても味わいがあるカフェ、Mondo by the Rooftop。これもテーマ「職業」の一環です。なぜかというと、この場所はカフェオーナーとしてのSHUN君のパッションの結晶だから。私の行きつけ! と言いたいところですが、我が家は北ジャカルタ、こちらは南ジャカルタにあり、昨今の渋滞ではなかなか辿りつけないのが非常に悔しい

廃墟のような怪しいビルの屋上にあるここ、ポップ、ロック、パンク、ガレージ、スカ、ノイズ、ジャズ、面白い音楽ならなんでもあり、アートの展示や詩の朗読イベントなんかもやっちゃう「ヤバい」スペースで目が離せません。

店内やイベントはこんな感じ(すべて携帯カメラ使用)↓

イベント情報はInstagramでチェックを!

Mondoの屋外、背景に見えるコンクリートの壁が、現在建設中のMRT(大量高速輸送)の線路。ここに来るたびに建設が進んでいてびっくりします。来年にはここに人がたくさん乗った電車が通る様子が見られるようになるんだな、と思うと不思議な気分。ここでビールを飲みながら、車内の人たちの顔をぼんやり眺めるのは楽しそうです。

こちらは尊敬する加藤ひろあき君。日本語とインドネシア語を駆使し、ジャカルタをベースに音楽活動をされています。時にセンチメンタルで時にユーモラス、時に優しくて時に厳しいジャカルタ生活の実感を歌わせたら天下一品。すでに20万ビューを超えた彼のPVはこちらです。

なにぶんフィルム数が限られているので、2ショット限定。史上最速のフォトセッションでした。そのわりに悪くない(というかむしろ最高な)この仕上がりは、彼のオーラとジャカルタの太陽のおかげ! 私は、熱気と混沌と音楽でできているような街だからこそこのジャカルタが大好きなんだってことを、改めて思い出しました。

 

意外と便利で簡単! ジャカルタでのフィルムの現像

さて、フィルムの現像ですが、果たしていまどき業者がいるのかどうか? という点については、さすが流行しているだけあってまったく心配ありませんでした。ジャカルタに何ヶ所かある中、今回お願いしたのは「周りの仲間たちがけっこう使ってる」とフォトグラファーの友人が紹介してくれたArtisan Film Lab

こちら、わざわざ店舗に足を運ぶ必要はなし。サイトからオーダーフォームをダウンロードして印刷、注文を記入したらフィルムと一緒に郵送します。先方に届き次第見積もりが送られてきて、銀行振り込みを完了したら7営業日で現像、デジタルデータにした上でDropboxで受け取り……という仕組みです。ネガは別途郵送してくれました。

時空間を漂いつつ、ジャカルタへの愛を再確認。今回はずいぶん興味深い体験ができました。写ルンですを持ってご近所探検、おすすめですよ!

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この記事を書いた人

武部 洋子

武部 洋子

東京生まれ、1994年からジャカルタ在住。現在はインドネシア国籍を有する。上智大学文学部新聞学科卒。『旅の指さし会話帳インドネシア語』(情報センター出版局)、『単語でカンタン!旅行インドネシア語』(Jリサーチ出版)など著作の他、『現代インドネシアを知るための60章』(明石出版)執筆、辰巳ヨシヒロ作『劇画漂流』インドネシア語訳など。インドネシアへの入り口がロックだったので、90年代インドネシアロックにはうるさい。Twitterはこちら

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