2018.05.08

2018年W杯開催国ロシア! でも地元じゃ意外と不評? その理由

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2018年ワールドカップ、はじまりますね! そこで海外ZINEでは、世界各地のサッカー事情について調査&レポート。まずは開催国であるロシアから、現地ではさぞかし盛り上がっているのでしょう~……と思いきや!? 意外と冷めた意見が多し。一体全体どうして? その理由に迫ります。

 

ロシアは2018年ワールドカップの開催地

4年に一度行われるサッカーの祭典、FIFAワールドカップ。今年、2018年6月14から7月15日にかけて開かれる第21回大会の開催国は、このロシア

サッカーロシア代表といえば、2002年の日韓大会において日本がワールドカップ初勝利を上げた相手として記憶している方も多いのではないでしょうか? ソ連時代は7回出場、最高成績4位という好成績を収めていたのですが、実は、ロシアになってからはあまりぱっとしません。2002年大会以降は2大会連続予選敗退。前回の2014年大会で本戦出場を果たすも、グループリーグで敗退。そして今大会では開催国のため予選免除の本大会出場です。

ソ連時代の栄光を取り戻せるのか? 開催国の意地を見せられるのか? と、現地では盛り上がっているに違いありません。が、実際のところどうなのか? 現地での様子や、当のロシア人たちにいろいろ聞いて、調査してみました。

 

サッカーコートがスケートリンクに? サッカーが身近なロシアの暮らし

そもそも、ロシアで一番人気のあるスポーツはサッカーです。見るのもですが、実際にプレーすることも人気があり、アパートに隣接する公園などには小さなコートが数多く見られます。雪のない時期の男の子の遊びというくらいポピュラーなスポーツで、毎日コートでサッカーで遊ぶ様子が見られます。街中のコートの数を考えると、ロシアのほうが日本よりもサッカーが身近なのではないでしょうか。

こちらは人工芝が敷かれた本格的なコート。雪の季節も除雪され、サッカーがプレーできるようになっています。

なお、人工芝は珍しく、コンクリート製の床のバスケットゴールも設置されている多目的なコートが大多数。そのようなコートには、雪が降る時期になると水が撒かれ、そのままアイスホッケーのリンクへと変わるのがロシア、というか北国的

スケートリンクに変わったコート。

ロシアには、偉人を称える記念パネルがゆかりのある建物などに設置されている事が多いのですが、サッカーに関する人物のパネルも存在します

例えばこのパネル。「ソ連の伝説的ゴールキーパー、アレクセイ・ペトロヴィチ・ホミチが1949年から1980年の間に住んでいた家」と書かれています。

 

W杯直前のモスクワはサッカー一色になっているのか?

このように普段からサッカーが身近な存在であるロシアですが、ワールドカップ開催直前の街の様子はどうなっているのかというと、モスクワにはポスターや看板などが掲げられ、「ワールドカップを盛り上げるぞ!」という雰囲気が否応無しにも街に充満しております。

「6月14日~7月15日はワールドカップ」と書かれた看板が、街中に設置されている。

こちらはバス停の看板。

個人的に一番好きな、ソ連時代のデザインを意識したポスター看板。

このポスター看板がある場所は、赤の広場やクレムリンのお隣りにあるマネージュ広場。ここにはワールドカップの試合が行われる各都市にちなんだオブジェなどが飾られています。

これは開催都市のひとつ、タタールスタン共和国の首都・カザンのオブジェ。カザン・クレムリンがモデル。

マネージュ広場の場所。

さらに街にはスポンサーになっている各企業の看板などもあります。こちらはロシアでよく見る宣伝方式、アパートなどの壁に描かれる壁画広告。アリファ・バンクという銀行の広告。枝で隠れて見づらいところに「FIFAワールドカップ」と書かれています。

描かれている選手がメッシに似てると思ったら、本人でした。なんでロシアワールドカップのロシアにおける広告でメッシを使ってるんだ? と思ったのですが、アリファ・バンクがメッシとスポンサー契約を結んだというニュースが今年の2月にあったので、そのためでしょう。

ロシアの街にはコンビニはありませんが、いたる所にいろいろなものを売っているキオスクと呼ばれる小さな売店がいたる所にあります(日本のキヨスクと語源は同じ)。そこで売られているロシアワールドカップのマスコット、オオカミのザビバカ。ザビヴァーチ、「ゴールを決める」という動詞から作られた名前。これは日本でも有名なキャラクター、チェブラーシカと同じ名付け方。チェブラハッツァ、「ばったり倒れる」という動詞から名付けられたのです。ちなみにこのおもちゃの値段は450ルーブル、日本円で約765円。

モスクワ市内の重要な交通機関であるメトロ。現地へ行ったことのある人の中でよく話題に上がるのがこのボロさ。今は新しい車両も増えてきていますが、古い車両も数多く残っています。

この古い雰囲気を残したメトロも素敵なのですが、最近はワールドカップ仕様のラッピング車両が登場しました。

外側だけではなく、車内にもワールドカップ一色にラッピングが施されています。

「ドイツがワールドカップで優勝した回数は?」というミニクイズと解説。

車内のドア付近はペナルティエリアになっています。

ちなみに、モスクワのメトロのドアが閉じるスピードは半端なく速いので、現地に行かれる方は十分注意して下さい。無理な駆け込み乗車は日本以上にご法度です。かなり危険です。慣れていない人はけっこうな確率で挟まれます。

 

意外とW杯には否定的? ロシア国民は実際どう思っているのか

モスクワの街の様子をお伝えしてきましたが、これらは全て行政や企業がロシアでのワールドカップを盛り上げようとしている様子でした。実際のところ、現地に住むロシア人たちはどのように感じているのでしょうか? 簡単なアンケートに回答してもらいました。

回答者の年齢性別はこの通り。居住地はモスクワが多く、他は、サンクトペテルブルクやヒムキなどのロシアの西側都市、そして、クラスノヤルスク、イルクーツク、ウラン・ウデなどのシベリア地方の都市の方々です。

なお、ワールドカップが行われる都市は、モスクワを中心とした広大なロシアの西側の一部地域でのみ。シベリアや極東などの東側では大会は行われません。バイカル湖のそば、シベリア、ブリャート共和国の首都であるウラン・ウデには先ほど紹介したようなワールドカップ関係のポスターなどは全く見かけないとのことでした。

それでは最初のアンケート、サッカーに関する関心は次のとおり。

普段からサッカーを見る人は少ないですが、スタジアムへ行ったことがある人が4割います。女性の回答者の割合が多かったので、もしかしたら、普段は見ないけど男性に連れて行ってもらったりした方が多いのかも?

好きなチームは、スパルタク・モスクワが一番人気。次にディナモ・モスクワ、チェスカ・モスクワと、モスクワのチームが人気でした。ロシア各地にチームはありますが、回答者にモスクワ在住者が多かったためでしょう。スパルタクは現在横浜Fマリノスに所属している、イッペイ・シノヅカ選手(16歳でロシアに渡り、のちに帰化)が所属していたチーム。ディナモは最初の方で紹介したソ連の伝説的GK、アレクセイ・ペトロヴィチ・ホミチが所属していたチーム。チェスカは本田圭佑選手が所属していたチームです。

では、ワールドカップについてどの程度知っているのか、関心はあるのでしょうか?

41人全員が、ワールドカップが行われることを知っていました。なんとなく知っていると回答した人は、やるのは知ってるけどいつやるのかは知らない。といったレベルです。

楽しみか、楽しみではないかの割合は後者の数が若干多いです。友人や知り合いとの会話で話題になることがあるか? という質問の回答者の割合と全く同じですがこれは偶然。楽しみではない人も、ワールドカップについて話題にすることがあるとのこと。

ワールドカップ肯定派と否定派が大差のない数字。具体的にはどのように思っているのでしょうか? 自由記入欄に書かれたコメントを紹介します。

  •  ロシアでこんな世界的なイベントが行われるなんて嬉しい。テレビで観戦予定。心配事は交通規制が入ってモスクワ市内の移動が困難になりそうだということ。
  •  ユーロとワールドカップが大好きでよく見ている。でも今回はロシアで行われるので家の周りの治安がどうなるのかちょっと心配。平和で楽しく友好的であってほしい。でも、まあ楽しみだ。
  •  モスクワ市民には交通規制などで不便なことが多いけど、一方で新しい道が作られたりして、大会後も使えるから悪くないかも。
  •  興味は無いけど、道を直したり街をきれいにしてくれるのは悪くない。ワールドカップが行われなければそんなことしなかっただろうし。
  •  開催には反対。迷惑だしお金の無駄。インフラがよくなることはいいんだけどね。でも、ロシア代表はぜったいに勝てないし、グループリーグ敗退は確定。多くの人にとってロシアサッカーに対する絶望につながると思う。
  •  大勢のファンが街にあふれるのは迷惑だ。
  •  モスクワでやってほしくない。モスクワ大学のファンゾーンに絶対反対。ちょうど開催時期が卒業式シーズンだけど、ワールドカップのせいで治安が悪くなりそう。
  •  解決すべき問題がいっぱいあるのに、開催はどうかなと思う。

盛り上がりを見せる熱いコメントが書かれるのかと思いきや、そのようなコメントはほんのわずか。逆に、不満を持つ人たちや心配する人たちの否定的な意見が多く集まりました。なぜこのような不満を持つのでしょうか。次の項目で問題点の詳細を紐解いていきます。

 

ロシア人の多くがワールドカップに反対する、その理由。

過激なフーリガンによる治安悪化のおそれ

反対派の人たちが最初に心配するのが治安の問題。いわゆるフーリガン問題です。ロシアのサッカーファンは日本に比べると血の気の多い人たちが大多数をしめます。10年ほど前ですが、モスクワでの試合観戦の様子を少し紹介。

写真は今回、ワールドカップの開幕戦や決勝戦などが行われるモスクワのルジニキ・スタジアム。興奮したサポーターたちが発煙筒を炊いています。客席の外では、1人1頭のドーベルマンを連れた警官がぐるりと囲み、不測の事態に備えていました。

試合開始前、最寄りのメトロの駅に興奮したサポーターたちが続々と集まります。駅のホームから出口へ昇るエスカレーターは、上から奇声とともにコインが大量に転がってくるというカオスな状態。なぜコインを下へ投げるのだろうか。帰りはスタジアムから駅までの道の両脇にずらりと並ぶ馬。パレードかというほどの数の騎馬警官が警備。日本とは違う異様な雰囲気に緊張感はありましたが、大勢の警官が警備していたため、物々しさを感じるものの同時に安心感もありました。

普段から、サッカーが開催される日は危ないのでスタジアム周辺には近づかない。というロシア人の知人もいます。また、2002年の日韓大会でロシアが日本に負けた日にはアジア系ロシア人が街で襲われることがあり、数日の間、外に出るのが怖かったという友人もいました。このような普段のフーリガンの危険な振る舞いから、ワールドカップ開催中の治安の悪化を懸念する人が多いのだと考えられます。

 

渋滞対策としての出場チーム専用レーン設置による、さらなる渋滞。

ロシアの大都市、特にモスクワでは、普段から渋滞が都市問題として存在しており、ワールドカップ期間中はさらなる渋滞が予測されています。

これは一般市民にとっても大問題ですが、出場する選手達自身にも「試合開始までにスタジアムに入れない」といった事態が起こるのではと考えられています。この対策として、選手やその関係者のための専用レーンを設置する予定だとのことですが、これは一般市民のための車線をひとつ潰すということなので、渋滞がさらにひどくなることは明らかです。

 

モスクワ大学でのファンゾーン設置による、学生たちからの不満。

モスクワ大学の学長が突然、大学敷地内に大型スクリーンを設置して、試合を観戦できるファンゾーンを設置すると発表。写真の建物がモスクワ大学の校舎。巨大すぎて全体像が写っていませんが、この建物内に寮もあり、6500人ほどが普段からこの中で暮らしています。私も留学中はこの建物で寝泊まりしていました。

ファンゾーンのスクリーンは学生寮のすぐ側に設置される予定であり、ワールドカップが開催される一ヶ月間、寮から立ち退きを求められる学生も。このファンゾーン設置については一切の事前説明がなく突然発表されたため、学生たちから猛反対されています。

さらに、ワールドカップの影響で試験が5月に前倒しになるという問題も。ロシアの学校は9月から6月が1年。つまり学年末試験が前倒しに。これらの問題はロシアで学生を中心に大きな話題となっており、ネット上でプーチン大統領とモスクワ市長に向けた署名が集められ、ひとまず試験の前倒しについては撤回されることになりました。

 

意外と冷めている開催国のひとびと、無事に終わりますように。

友人の1人は、「行政や企業はワールドカップを盛り上げようとしているけど、個人で盛り上がっているのはサッカーファンだけ。冷静なほとんどの一般人は少なからず不満に思っている。経済的、社会的問題が山ほどあるのにワールドカップをやるって一体どういうこと?」と、今回のワールドカップについて、いちロシア人の意見として総括的なコメントを送ってくれました。

ワールドカップ開催直前のロシア。期間中にモスクワなどの開催都市へ訪れると、ワールドカップ熱を感じられるかと思いますが、その裏で様々な問題があることや、ファン以外の一般市民や開催都市以外の大多数の他の地域では、意外と冷めた目でワールドカップを見ているなどの現実があります。

しかし、これはどこの国で開催されても似たり寄ったりではないかなとも思えます。今度の東京オリンピックについてもそうですよね。何はともあれ、いろいろと問題はありますが、1人のサッカーファンであり、ロシア好きとして、無事に今回のワールドカップが終わることを祈っています。

 

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この記事を書いた人

ちば ユウタ

ちば ユウタ

多分日本で一番有名なロシア系ブログ「おそロシ庵」の中の人。日本にいながら普段遊ぶ数少ない友人もロシア人しかいないという残念な人。でも暑いところと海が好きなので骨を埋めるならロシアではなく南の島と決めている。趣味は釣り、ダイビング(水中撮影)、マリノスの応援、パイナップルの水耕栽培、その他ここに書ききれないほどで遊ぶのに忙しく、働く暇がないので現在無職の元大手造船会社の軍艦修理担当技師。
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