子どもに持たせるおやつはチョコかピザ?愛情と健康に揺れるイタリア人の親心

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※本記事は特集『海外のおやつ』、イタリアからお送りします。

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イタリア人は一日二回おやつを食べる

実は、イタリアには「おやつ」を表す単語が2つあります。ひとつは「メレンダ(merenda)」、そしてもうひとつは「スプンティーノ(spuntino)」です。

辞書を見るとどちらも「軽食」もしくは「間食」と書かれていて、イタリアでは両方とも「おやつ」の意味で使われます。ただ、あえて使い分けするならメレンダは午後に食べる甘いお菓子、それに対してスプンティーノは午前中に小腹がすいた時に食べる軽食、といったイメージでしょうか。

スプンティーノでよく食べるクラッカー。プレーンのほか塩抜きや全粒粉、トマト味、オリーブ味などバリエーションはかなり豊富

以前、朝食についての記事でも書きましたが、イタリアではあまり朝ごはんを食べません。食べたとしてもカプチーノと甘い菓子パン、もしくはビスケットをちょこっとつまむ程度。中にはエスプレッソ1杯だけなんて人もいます。

しょっぱい朝食はNG! イタリアの朝はドルチェではじまる

朝ごはん……

当然、それだけではお昼のランチまでお腹がもたないので、10〜11時頃にちょっとしたおやつ(スプンティーノ)を食べて小腹を満たすのです。

イタリアではマクドナルドの朝メニューにもカプチーノと甘い菓子パンがあります。ソーセージマフィンなどの塩気のあるメニューも一応あるけど、食べている人を見たことがない

「朝からしっかりと食べよう」と言われて育つ日本人からすると、「おなかが空くなら朝ごはんもっと食べればいいのに……」と思ってしまいそう。

でも、甘いものを少しだけ食べるというのが、イタリア流の朝ごはんなのです。そのほうが朝から食事の用意に苦労することもないし、なにより「起きてすぐたくさん食べたくない」というイタリア人の感覚に合っているのかもしれません。

 

食のトレンドは健康志向、その波はおやつにも

少し話はそれますが、「おやつ」という言葉からはなんとなく「お菓子」を想像しませんか? 例えばクッキーやチョコレート、キャンディなどの甘い物。もしくはポテトチップスやポップコーンのようなスナック菓子など。

こちらは最近発売された「わさびとりんご」味。ポテトチップスの味って国ごとに特色があって面白いですよね……

もちろんイタリアにもこういったお菓子はありますし、好きな人は好きです。ただ、最近はビーガン食の流行もあってか、イタリアの食のトレンドはなんとなく健康志向。そのため、いわゆる「お菓子」を敬遠する人も少なくありません。

その代わりによく食べるのは、タラッリ、グリッシーニなどの堅焼きパンやクラッカーです。とりたてて美味しそうには見えませんが、食べてみると噛みしめるほどに小麦の香りがする素朴な味で意外とクセになります。スナック菓子のようにお腹にたまりすぎる感じもないため、食事前の小腹を満たすのにもぴったりです。

細長いのがグリッシーニで、くるっと丸いのタラッリ。見た目は地味ですが食べてみると止まらなくなる。ワインのあてにもおすすめです

また、イタリアではリンゴやニンジンもおやつの定番。どちらもそのまま丸かじりします。特にニンジンは皮もむかずに生のままポリポリかじるので、ちょっと驚く人もいるかもしれません。

おやつ用のニーズに合わせてか、スーパーでは袋にたくさん入った小ぶりなりんごをよく見かけます

以前会社員をしていたとき、隣の席の同僚が突然ニンジンをかじり始めたことがありました。それがあまりにも自然だったので「それってボーノなの(おいしいの)?」と思わず聞いたら、「まあね、あとサーノなんだよ(健康にいい)」という返事。一口におやつと言っても、ずいぶんと感覚が違うものなんだなと思ったことがあります。

 

子どもの定番のおやつは、小さなピッツァやフォカッチャ

さて「おやつ」と言うからには、子どもが食べるものについてもご紹介しておきましょう。別におやつは子どもに限定されたものではないですが、やっぱり関係は深いと思いますので。

子どもは当然ながら、チョコレートやスナック菓子などわかりやすい味のお菓子が大好きです。イタリアならジェラートもここに含まれるでしょうか。ただ、やはり健康志向の波もあり、こうしたお菓子を積極的に食べさせる親はあまり見かけません。

イタリアで子供用チョコレートと言えばキンダー。食べさせることはあるけど「たまにはいいよね」という、ちょっと罪悪感が混じった意識にさいなまれます

じゃあ子どもはおやつに何を食べているのでしょうか。基本的には大人も食べるタラッリやクラッカー、リンゴ、ニンジンなどですが、そのほかによく見かけるのが、小さなピッツァやフォカッチャです。イタリアでは「小さい」という意味の接尾語を付けて、それぞれ「ピッツェッタ」「フォカッチーナ」と呼ばれています。

子供の手にも収まるくらいのサイズなので量の調整もしやすく、子どもの小腹が空いた時にピッタリです。学校の下校時間になると、このピッツエッタやフォカッチーナを手に持ち、親に手を引かれて歩く子どもの姿をよく見かけます。

パン屋やスーパーなどで1個から買える手軽さもいいところ

イタリアらしいという意味では、パルミジャーノなどのチーズも定番のおやつです。パスタやリゾットに入れる場合はすりおろして粉にしますが、おやつの場合は小さくブロックに切ったものをそのままかじります。

もともとチーズは牛乳を固形化したもの。消化がよく栄養価も高いため、イタリアでは離乳食や病人食にもよく使われています。子どものおやつとしては、まさにぴったりの食材といえるでしょう。最近はおやつ用に個包装されたものも発売されていて、チルド食品であるチーズを持ち歩くハードルもずいぶん下がりました。

最近はグリッシーニとパルミジャーノ、ジュースをセットにしたおやつボックスも登場。これ全部で1ユーロ(約125円)とかなり手頃な価格です

 

朝おやつの習慣が、偏食を生む原因にも?

先にも紹介しましたが、イタリアではあまり朝ごはんをしっかり食べる習慣がありません。そのため、学校によっては10〜11時頃におやつの時間があります。もう少し待てばランチの時間なのにと思わないでもないですが、やはりお腹が空くと授業にも集中できませんしね。

このおやつは学校で配られるのではなく、基本的には家から持たせます。親心としてはやはりピッツェッタやパニーノ(サンドイッチ)、グリッシーニなどが理想的だなと思いつつ。でも時には子どもの希望にあわせてクッキーやチョコレートを持たせることもあります。

子どもたちは持ってきたおやつを交換して食べたりするので、健康にいいとは言えあまり人気のないおやつばかり持たせてしまうと交換の輪に入れません。そうなるとちょっとかわいそうだなと感じるのです。

子どもたちが喜ぶのは、やっぱりこういうジャンクなお菓子

ただ、そうなると午前中にチョコレートやクッキーでお腹を満たしてしまい、昼ごはんは食べないという、ちょっと笑えない問題が生じることも……。

イタリアでは日本のように給食を全部食べないといけないという感覚がありません。「無理やり食べさせて食事が嫌いになるのはよくない」という意識が強いため、完食することをあまり重視しないのです。そのため、たとえ一口もつけなかったとしても「このメニューは好きじゃないのね」でおしまい。

そうなると、朝のおやつを食べて給食には手を付けず、次におなかが減るのは午後のおやつの時間。結果として、お菓子ばかり食べることになってしまうのです。

食事の楽しみを重視して子どもの好きにさせるのか、好き嫌いなく食べることを重視するのか。家庭の考え方もあるのでどちらが正解ということもありませんが、それが偏食を生む原因になるなら悩ましい問題です。

友人の子どもが味の濃いインスタントパスタとハムしか食べないなんて話を聞くと、必ずしも「好きに食べさせればいい」とは言いにくいのが本音だったりもします。

お菓子よりピッツァのほうがどう考えても美味しい……と思うのはやっぱり大人の考え方でしょうか

こんな感じで、健康志向の「おやつ」と子どもが大好きな「お菓子」がせめぎ合っているイタリアのおやつ事情。子どもを持つ親としてはどうしても気になるこの問題、みなさんはどう思いますか?

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

鈴木 圭

鈴木 圭

イタリア・ミラノ在住、フリーライター。広告ディレクターや海外情報誌の編集者などを経て2012年にイタリアに移住。イタリア関連情報や海外旅行、ライフスタイルなどの分野を中心に活動中。旅行先の市場でヘンな食べ物を探すのが好き。「とりあえず食べてみよう」をモットーに生きてます。HPTwitterInstagram

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