ヒラメ、フグ、テナガダコの踊り食い! 韓国の海の幸を堪能する地方旅

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※本記事は特集『ライターがオススメする裏観光』、韓国からお送りします。

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三方それぞれの海岸で、海の幸を堪能する韓国地方旅。

焼肉のイメージが強い韓国ですが、三方が海に囲まれた国であることから実は魚介類も豊富。日本同様、焼魚や刺身なども食べますが、韓国ならではの食べ方もあります。

私は韓国の旅のなかでも、海岸を旅することが最も好きです。東海岸なら日の出、西海岸に行けば夕日とともに美しい海岸線を眺めることができるとともに、活気あふれる水産市場の様子が魅力的に感じられるから。そんな場所で朝から新鮮な刺身や、魚を使った鍋料理などを味えば最高です。

そこでみなさんもぜひ、韓国に出かけたときには「刺身は日本で食べられるから」などと敬遠したりせず、港や市場の雰囲気を感じながら様々な海の幸を、韓国流の食べ方で召し上がってほしいのです。そんなことから、港町・釜山を起点として、海の幸を食べ歩く旅へといざないます。

釜山のあとは東海岸、南海岸、そして西海岸の順に、地方の美味しい海産物の世界をご堪能ください。

 

海の幸を味わうなら、まずは釜山のチャガルチ市場へ。

韓国屈指の港町・釜山(プサン)。日本の各都市から直行便が出ているほか、博多や下関などからはフェリーで訪れることもできます。海鮮料理を求めて釜山にやってきたら、まずは韓国最大級の魚市場「チャガルチ市場(자갈치시장、チャガルチシジャン)」に立ち寄ってみましょう

韓国屈指の水産市場、チャガルチ市場。

市場の建物に入ると水槽がずらりと並び、外に出るとパラソルの下で桶を並べて、鮮魚や干物が売られています。

韓国では「刺身」のことを、「膾(회、フェ)」といいます。韓国の水産市場ではそれぞれのお店で生簀から水揚げした活魚を丸ごと一匹、その場でさばいてもらい、市場内にある食堂に持ち込んで食べることができます。

日本では刺身といえば、マグロなどの赤身が人気ですが、韓国ではヒラメやタイなどの白身魚を食べることが一般的。ヒラメは1キロ当たり20,000ウォン(約2000円~)。

ヒラメの刺身

食堂では一人当たり5,000ウォン(約500円)程度のセット料を払うと、焼肉を食べるときのように、サンチュ(レタスの一種)、えごまの葉などの包み野菜やニンニクのほか、刺身につけて食べるチョジャン(酢コチュジャン)、サムジャン(合わせ味噌)、醤油とワサビ、さらにはキムチや汁物などが出てきます。

刺身の食べ方、詳しくは韓国のソウルソースの記事をご覧ください。

「発酵」が支える韓国料理、「五味五色」を彩るソウルソース・コチュジャン。

チャガルチ市場のそばには焼魚の店が何軒か並び、焼魚通りが形成されています。いちど網焼きされた魚が並べられ、お客さんが来ると再び焼いて出してくれます。大人数の場合は盛り合わせ(모듬、モドゥム)を注文してみましょう。数種類の魚がどどーんと出てきます。

一人前の焼魚定食は7,000ウォン。カレイとタチウオが出てきましたが、キムチや豆もやしの和え物など、韓国の食堂ではこのようにおかずが何品かついてきます。

韓国で焼魚を食べるときは、ワサビ醤油につけて食べます。日本でもよく食卓にのぼるサバは釜山の名物のひとつでもありますし、他にもサンマやサワラ、日本ではあまり馴染みのないタチウオやイシモチといった魚をよく食べる傾向にあります。

釜山で美味しい海鮮を味わったあとは、より美味しい海の幸を求めて地方へと出かけることにしましょう。韓国では鉄道網が発達しているとはいえ、地方都市をピンポイントで訪れるには、高速バスや市外バスでの移動が便利ということも特徴です。まずは東海岸へ。

 

ひんやりさっぱりのお刺身の冷や汁を味わう。東海岸の港町・浦項(ポハン)

釜山から北に100キロ近く離れた浦項(포항、ポハン)。釜山東部バスターミナルから市外バスで約1時間半走った先にあります。

人口は約52万人、韓国屈指の製鉄会社POSCOがある工業都市で、夜になると工場夜景が楽しめたりもします。海辺の九龍浦には、100年ほど前に日本人漁民によって形成された日本人家屋街があることでも有名です。

POSCOの工場の夕景

浦項をはじめ、東海岸の刺身の食べ方として「ムルフェ(물회、ムルェ)」というものがあり、漢字で書くと「水膾」、日本語に直訳するならば「水刺身」ということになります。ヒラメやカレイなどの白身魚に野菜や薬味を入れ、チョジャンなどを水で溶かしたものをかけて、刺身の冷や汁にして食べるのです。

刺身が盛り付けられたムルフェの容器

日本人の感覚ではそのまま刺身を食べたほうが美味しいと思うかもしれませんが、刺身が入った冷製スープといえば何となく説明がつくように思います。ムルフェを口にすると、刺身からピリッとした辛さと酸味が感じられます。

刺身と野菜が盛られた器に、チョジャンベースの冷たい水(氷水)をかけて食べる。

ムルフェという料理が生まれた由来は諸説ありますが、忙しい漁師たちが仕事の合間に刺身に水をかけて急いで食べた、というのが最もよく知られているもの。上の写真はチョジャンを水で溶かして、軽くシャーベット状に凍らせていますが、凍らせていないものもあります。ご飯とともに食べたり、この中に直接素麺を入れて食べたりもします。

 

リアス式の南海岸は海産物の宝庫、統営でフグやカキに舌鼓。

釜山西部バスターミナルからバスで約2時間。距離としては80キロ以上離れたところに位置する統営(トンヨン、통영)という港町は、その美しさから「韓国のナポリ」とも呼ばれています

市内にある海抜461mの弥勒山にはケーブルカーが設置されていますが、この山を登るとリアス式海岸の絶景を望むことができます。

弥勒山からリアス式海岸の絶景を望む

入り江になった統営の港を訪れると、たくさんの漁船が停泊していて、魚が干されており、港近くの市場を歩くと、とにかく活気に満ちたにぎやかな雰囲気が感じられます。訪れるといつもなんだか元気を与えてくれるような、そんな港町です。

統営でぜひとも味わいたいのは「ポックッ(복국)」と呼ばれるフグのスープ。別名ポゴチリ(복어지리)とも呼ばれます。この「チリ」は日本語の「ちり鍋」が由来。日本のチリ鍋はミツバや白菜などを入れますが、韓国ではフグとともにセリや豆もやしなどの野菜を入れます。

身がたっぷり入った真フグのスープ、12,000ウォン(約1200円)。

この時訪れた港近くのお店では真フグ(쫄복、チョルポク)とトラフグ(참복、チャムボク)の二種類があり、それぞれの価格は12,000ウォン、15,000ウォン。こちらは真フグですが肉厚で食べ応え十分。スープにはニンニクを入れることもありますが、この店ではフグだけで十分にダシがしっかり出て、さっぱりとした味わいです。

そして一緒についてくるおかずも贅沢。統営は韓国屈指の牡蠣の産地でもあることから、ポックッに添えられた副菜のひとつとして生牡蠣が出てくるなど、フグとともに統営の名物を贅沢に味わうことができます。

統営の名物・牡蠣。統営で獲れた韓国産の牡蠣は、日本にも輸出される。

統営にやってきたらリアス式海岸の絶景を眺めることができ、そこで獲れた豊かな海の幸が味わえるのが大きな魅力です。

では、次に西海岸へと出かけてみましょう。

 

干潟が多く、遠浅の西海岸で海の幸を堪能。

まず西海岸の名物といえばワタリガニを醤油漬けしたカンジャンケジャン(간장게장)。ワタリガニは遠浅の砂地に生息しているため、韓国では中国大陸へと続く西海岸が主産地で、 仁川沿岸の延坪島(연평도、ヨンピョンド)が最大の産地として知られます。

醤油が染み込み、ぷりぷりした生のカニの身をしゃぶるように食べ、カニ味噌のなかにご飯を入れて食べると美味しくて止まらないことから、「ごはん泥棒(밥도둑、パプトドゥ)」ともいわれます

カンジャンケジャンは、日本人にも人気がある料理のひとつ。

ワタリガニも西海岸の名物ではありますが、次に地方のなかの地方ともいえる地域を取り上げます。

木浦名物のテナガダコは踊り食いもスープも

韓国南西部に位置する木浦(목포、モッポ)という港町。釜山西部バスターミナルからは4時間ですが、首都ソウルからも約4時間かかります。ここ数年は高速鉄道が時間短縮されたことにより、ソウルからは約2時間半で行けるようになりました。

日本統治時代にはこの場所に多くの日本人が多く住んでいたことから、今もなお当時の建築や家屋が残っている場所があります。市内にある儒達山(유달산、ユダルサン)は春になるとレンギョウが咲くことでも知られますが、標高228mの山なので30~40分ほどで登ることができ、山頂付近からの眺めもなかなか良い場所です。

儒達山から見渡す木浦の街

木浦周辺の海は干潟が多く、そこで獲れるテナガダコが名物のひとつとなっています。生きたテナガダコをぶつ切りにし、塩やごま油、チョジャンなどにつけて食べる「サンナクチ(산낙지)」が有名。直訳すると「生きたテナガダコ」という意味です。

テナガダコをぶつ切りにしてもしばらくの間は動いているため、口に入れたあとも気が抜けません。のどに詰まらせて窒息死することもあるのだといいますから、ゆっくり食べないと危険です。

生簀に入ったテナガダコ

木浦にやってきたら新鮮なテナガダコを踊り食いで食べてももちろん良いですが、他にもヨンポタン(연포탕、軟泡湯)と呼ばれるタコが入ったスープを頂くのもよいでしょう。

タコの味が十分に出た、ヨンポタン(17,000ウォン)。

こちらはタコの味が出たスープで、ゆであがったタコの歯ごたえある触感がよく、ひとつひとつ噛みしめていただきます。

ぶつ切りにしてごま油やごま塩のほか薬味で和えた、ナクチタンタンイ(낙지탕탕이)もごま油の風味豊か。コリコリとした触感が楽しめます。お店によってはユッケも一緒に添えている店もあり、より贅沢に頂くことができます。

ナクチタンタンイ 15,000ウォン

 

海がつながる日韓、韓国の地方でこそ味わえる海の幸を

朝鮮半島を囲む三方の海にはそれぞれ特徴があり、地域ごとに魚介類の食べ方にも違いがあります。流通が発達した今、ソウルや釜山であらゆるものが食べられますが、それでも地方に行かなけば出会えない魚料理もあります

日本と韓国は隣接していることから、近海で獲れる魚介類はよく似ているのですが、好んで食べるものにも違いがあり、相互に輸出入されたりもしています。日本人はマグロなどの赤身の魚が好きな人が多いですが、韓国人は白身の魚を好む傾向がある、といった点も日韓で異なる点です。

この記事で紹介したものは一部にすぎませんが、実際に韓国に渡り、海沿いを歩いてみれば、様々な海の幸に出会えるはずです。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

吉村 剛史

吉村 剛史

東方神起やJYJと同年代の1986年生まれ。「韓国を知りたい」という思いを日々のエネルギー源とするも、韓国のオシャレなカフェには似合わず日々苦悩。ソウルや釜山も好きだが、地方巡りをライフワークとし、20代のうちに約100市郡を踏破。SNSでは「トム・ハングル」の名で旅の情報を発信。Profile / Twitter / Facebook / Instagram / 韓旅専科

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