2018.09.03

「発酵」が支える韓国料理、「五味五色」を彩るソウルソース・コチュジャン。

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日本のソウルソースといえば、「醤油」や「味噌」あたりではないでしょうか? そんな世界の定番ソースを集めてみました! 韓国ではコチュジャン(唐辛子味噌)があらゆる基本、あの赤さと辛さには東洋思想の「五味五色」のひとつを担っているそうです。そのほか、発酵調味料が豊富で、納豆に似た料理もあるのだとか。読んでいると口の中で唾液が溢れてくること間違いなしです。

 

韓国を代表する唐辛子味噌、コチュジャン

韓国を代表する調味料といえば、唐辛子味噌とも訳される「コチュジャン(고추장、~醤)」。辛いながらも甘みがあり、キュウリやニンジンなどの野菜につけて食べたりもするほか、他の調味料と混ぜ合わせたりして、様々な料理に用います。

そんなコチュジャンですが、韓国の人にとっては海外旅行に持っていく人もいるほどなくてはならないもの。現地食が口に合わないときにかけて使えば、「とりあえずは韓国の味に近づく」というわけです。日本人が海外に醤油を持っていく話ともよく似ています。

韓国の大手オンラインショップのGMarketが2018年7月、1119人に調査した結果によれば、海外旅行客の58%が食べ物を持っていくとし、その食べ物の1位がインスタントラーメン(28%)、2位がコチュジャンで(21%)、3位以下に海苔、キムチと続きます。(出典:「海外旅行客の半数は食べ物をもっていく、1位ラーメン、2位コチュジャン」)

実際に海外旅行によく出かける韓国の知人に尋ねてみたところ、「私の家族は持たないが、中国や東南アジアの料理が口に合わずコチュジャンをもっていく人はかなりいる」と話してくれました。

日本でも市販されているコチュジャン

コチュジャンをそのまま使える料理としての代表格は「ピビンパ(비빔밥)」。直訳すると「混ぜご飯」という意味。温かいご飯の上に数種類から十数種類のナムル類や卵、ときにはユッケなどをのせ、その上に真っ赤なコチュジャン、またはコチュジャンベースの合わせ調味料(ヤンニョム)をかけ、一粒一粒に味が均等にいきわたるようしっかりかき混ぜて食べます。

センマイや豆もやし、梅の漬物が入った色とりどりのビビンパ

韓国料理は、東洋の五行思想(陰陽五行説)に基づき、中華料理や日本食と同じく「五味五色」を用いることが基本。その「五味」とは「辛・甘・酸・鹹(塩味)・苦」、「五色」は「青・赤・黄・白・黒」です。ピビンパにコチュジャンを加えることで、辛味と赤みをとり入れることができるという訳です。

コチュジャンは、刺身を食べるときにも使います。その場合は、酢(초、チョ)を混ぜ合わせて、チョジャン(초장)というものをつくります。刺身はわさび醤油や、チョジャンにつけたあと、サンチュなどの包み野菜にくるんで食べるのです。

日本の秋の味覚はサンマだが、韓国ではコノシロ(コハダと同じ魚)。

 

コチュジャンや、そのほかの「醤(ジャン)」類ができるまで

コチュジャンはどのように作られるのでしょうか。主原料は日本の味噌や醤油と同じ大豆です。まずは大豆を釜に入れて煮たあとに潰し、それを固めて「メジュ(매주)」という味噌玉を作って下の写真のように固めます。それを軒先に吊るして乾燥させたり、オンドルという暖房がついた床に並べておくことで、表面にカビを生やさせます。

味噌玉(メジュ)をオンドルの床に置いた状態

オンドルについてはこの記事に詳しく書いてあります。

韓国の家には古今に渡り床暖房、「オンドル」がつなぐ変わらぬ温もり

これらのメジュを粉々にしたものと、唐辛子粉、塩、そして麹(最近では水あめ)を混ぜ合わせ、しばらく甕(かめ)に入れて熟成させるとコチュジャンの完成です。

ちなみに韓国にも日本と同じような味噌や醤油があり、味噌を「テンジャン(된장)」、醤油を「カンジャン(간장)」といいます。メジュを作るまではコチュジャンと同じ手順。そのメジュをそのまま大きな甕にいれて、水と塩、そして殺菌と消臭のために木炭を入れて熟成させます。

味噌玉は入っていないが、醤油だけだとこのような見た目。/©570cjk

その上澄みが韓国・朝鮮の伝統式の醤油となり、残りの味噌玉がテンジャンとなるのです。伝統式の醤油を口にすると、薄口しょうゆのような味で主に汁物に使われます。また、韓国には日本統治時代、大量生産するために日本からもたらされた製法で作られた「倭醤油(왜간장、ウェカンジャン)」というタイプも存在します。

そのような味噌を熟成させる場所は、「ジャンドクデ(장독대、醤~台)」といわれる甕置き場。現代の住居ではあまり見られませんが、伝統家屋をもつような広い家であれば、庭先に甕が置かれていることがあります。朝鮮王朝の正宮であるソウル・景福宮にも宮中で使用する味噌類を熟成させる甕置き場があります。

ソウル郊外のなかでも最も南側に位置する京畿道・安城(안성、アンソン)市。ここに伝統式の調味料を生産し、販売するソイル農園(서일농원)があります。この敷地内には大きな甕置き場があり、この甕のなかでコチュジャンやテンジャンのほか、漬物類が作られています。

ソイル農園にずらりと並べられた味噌甕

甕がきちんと整頓され、ずらりと並べられている様子は壮観。味噌甕に近づくと、醤油の香りが漂い、発酵の最中だからでしょうか、甕からはぷつぷつと音が聴こえてきました。

ソイル農園ホームページ

 

韓国版納豆はより匂いが強い!? 清麴醤(チョングッチャン)

このソイル農園には、伝統調味料で作った料理を味わえるレストランがあります。ここで味わえるのは、清麹醤(청국장、チョングッチャン)や味噌チゲ(된장찌개、テンジャンチゲ)の定食。清麹醤とはゆでた大豆を発酵させたもので、日本の納豆にも例えられるものです。日本で市販されているようなパック詰めされた納豆よりも大玉の大豆で作られているようで、さらに匂いが強いと感じることもあります。

清麴醬のチゲ、スープにしても豆粒の形が残る。

この清麹醤の豆粒を海苔などに包んで食べることもあるのですが、一般的にはペーストの状態で売られていて、最もよく食される方法は、これをチゲ(鍋)にしたもの。独特の臭みとともに、どろどろとした濃厚なスープが出来上がります。一般的に強い匂いの清麹醤ですが、このソイル農園のものは他で食べるよりもくさみがなく、コクのある味わいが強かったことを記憶しています。

ソイル農園の定食。農園内の甕で作られた漬物類が豊富。

ちなみに日本にやってきた韓国人が、納豆について口を揃えて言うことは「清麹醤と似ている」というもの。納豆のネバネバ感に抵抗感をいだく人はいますが、「納豆の匂いがだめ」という人はそれほど多くはないのです(韓国人にも清麹醤や納豆が苦手だという人はもちろんいます)。

近年、韓国のスーパーは日本からの輸入品の納豆が売られていることもあり、清麹醤よりもよく売れているという話もあるほどです。日本には旅行で訪れる人が多く、納豆に親しんでいるためでしょう。スーパーでは日本から3パック入りで3,000ウォン(約300円)と3倍近くの値段がします。

外国人に苦手と思われている納豆ですが、韓国人には例外ともいえます。「納豆にキムチに混ぜて食べると最高!」という声をよく聞きますし、キムチも納豆も同じ発酵食品であり、食べ合わせも非常によいのだとか。キムチ納豆は、お試しあれ。

 

日本の味噌は煮立たせないが、韓国味噌は煮立たせると風味が増す

韓国でも日本の味噌汁に似たものを食べます。それは具材が少なめで味も見た目も近いテンジャンクッ(된장국)のほか、豆腐やキノコ、野菜、魚介など具を多めに入れた味噌鍋、「テンジャンチゲ(된장찌게)」といったものです。

日本の味噌汁は煮立たせると風味が損なわれるため、火をとめる直前に味噌を加えますが、韓国では真逆。ぐつぐつと煮立たせることによって風味が増します。チゲが食卓に出てくるときには、沸騰した状態でアツアツです。

豆腐やしいたけなど具だくさんのテンジャンチゲ

ちなみにテンジャンはコチュジャンよりは用途が少ないともいえますが、他の調味料と混ぜ合わせて使うこともあります。それはサムジャン(쌈장)。この「サム(쌈)」には「包む」という意味もあります。日本でもおなじみの豚の三枚肉「サムギョプサル(삽겹살)」やタッカルビ(닭갈비)などを食べるとき、サンチュに包んで食べますが、その時に軽く添える味噌がこれです。

タッカルビに、サムジャンやニンニクを添えて包んで食べる様子。

サムジャンはそれ自体がパック詰めされて売られてはいますが、テンジャン(味噌)にコチュジャン(唐辛子味噌)やごま油、ニンニク、砂糖などを混ぜて作ることも可能です。私も韓国人の友人からもらったことがありますが、家庭により味が異なります。

このサムジャンはサンチュに包んで食べるだけでなく、刺身を食べるときにも使いますし、軽く生野菜につけて食べても美味しくいただけます。手軽でヘルシーに食事を済ませたいときは、ご飯をサンチュやキャベツにくるみ、サムジャンやコチュジャンをつけて食べれば、「サムパプ(쌈밥、包みご飯)」にもなります。

 

韓国料理の味を作るヤンニョム

基本のソウルソースはコチュジャンですが、さらに韓国料理の味を作るものといえば、「ヤンニョムジャン(양념장)、ヤンニョム(양념)」という合わせ調味料。この「ヤンニョム」はその料理によって入れる素材や分量が異なりますが、コチュジャンやゴマ油、アミの塩辛、ショウガや、ニンニク、ゴマなどを混ぜ合わせて作ります。

このヤンニョムはキムチを漬けるときに白菜に絡めたり、肉を焼く前にあらかじめ味付けしたりするときに使うもので、その用途は多様。「味付けする」ことそれ自体を「양념하다(ヤンニョム+ハダ=する)」といいます。

ヤンニョムで和えて味付けした豚肉を炭火焼きに

ヤンニョム(양념)は漢字で書くと、「薬念」とも表記します。これは「薬食同源」という考え方によるもの。日本でも「医食同源」といわれることがありますが、これとほぼ同じこと。「薬も食事もその源は同じ」という意味です。もともとは中医学によるものですが、韓国でもその考えが取り入れられています。

最近では各国の調味料が日本でも手に入るようになっていますが、お隣韓国の調味料で最もよく見かけるのはコチュジャン。エスニックショップに行けば、テンジャン、サムジャンなどもおいてあります。

日本で市販されている調味料は、現地と全く同じ品。

特にコチュジャンやサムジャンは、野菜につけて食べたりしてもよいですし、イカ焼きや乾きものを食べるときには、コチュジャンにマヨネーズをつけて酒の肴としてもよいでしょう。料理をあまりしない人でも常備しておくと重宝するので、日常の食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

吉村 剛史

吉村 剛史

1986年生まれ。ライター。「韓国を知りたい」という思いが日々のエネルギー源。誰も訪れない地方都市巡りをライフワークとし、20代のうちに約100市郡を踏破。国内では2月号『散歩の達人』コリアンタウン特集執筆ほか。SNSでは「トム・ハングル」の名で韓国の小ネタを日々発信中。HP / Twitter

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