2017.12.05

ローマは古代遺跡が埋まりすぎ! ぜんぜん進まない地下鉄工事

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ローマの地下鉄は大都市なのに超シンプル、その納得の理由とは?

東京や大阪など大都市に住む人にとって、身近な移動手段といえば地下鉄。朝夕の通勤ラッシュにはうんざりさせられるものの、渋滞がなく時間も正確であることを考えると、やはり日常生活に欠かせないものといえるのではないでしょうか。

ここイタリアでも地下鉄が市民の足として欠かせないのは同じ。ローマやミラノでは、通勤やちょっとした外出などに多くの人が利用しています。今回はそんなイタリアの首都・ローマの、とある地下鉄事情についてご紹介したいと思います。

まずはそのローマの地下鉄路線図をご覧ください!


出典:Metro Roma

……随分、シンプルだと思いませんか?

「本当に首都か?」という声が聞こえてきそうな路線図。あっさりとして見えるのは、路線図のデザインがシンプルだからという理由だけではないでしょう。東京の地下鉄の駅数は285であるのに対してローマの地下鉄の駅数は73と聞くと、その規模の小ささがうかがえます。

比較として、他の国も地下鉄路線図も見てみましょう。


出典:MTA

まずはアメリカ随一の大都市ニューヨークの地下鉄路線図。もはや細かすぎてわけがわからないくらい入り組んでいます。


出典:Transport for London

ロンドンの地下鉄もかなりの複雑さ。目が痛くなるので、あまり見つめすぎないことをおすすめします。


出典:The New Paris Metro Map

パリもニューヨークやロンドンに負けていません。フランス語の読みにくさが煩雑さに拍車をかけています。


出典:東京メトロ

日本からは東京の地下鉄路線図をご紹介。これも都民以外にとっては複雑怪奇なものといえるでしょう。

このように、国際的に有名な大都市の地下には必ずと言っていいほど地下鉄網が張り巡らされており、その路線図はびっくりするくらい複雑です。それぞれの都市の規模や人口を考えると仕方のないことですが、いずれも初見で目的地を探すのはかなり困難と言っていいでしょう。

それにも関わらず、ローマの地下鉄路線図がこれだけシンプルなのは、なにもローマが発展していないというわけではありません。これでもイタリアは、EU内ではドイツとフランスに次ぐ第3位の経済大国。立派な地下鉄網を持つ実力くらいあるはず。それでも路線図がこんなにシンプルであることには、ローマならではのある特殊な事情がありました。

 

理由は「ローマの地下には古代遺跡が埋まりすぎている」から

その理由はなんと……と言ってもすでにタイトルでネタバレしていますね。そう、ローマの地下鉄工事が進まない理由は、古代遺跡が埋まりすぎているからなのです。

ローマの地下鉄。こちらは1980年に開通したA線。

言うまでもありませんが、ローマはかつて古代ローマ帝国の首都として栄えるなど、紀元前から続く歴史を持つ街。土地柄、遺跡には事欠きません。街中はすでにコロッセオやフォロ・ロマーノ、パンテオンなど歴史的建造物で埋め尽くされていますが、それ以外にも、地下には発見されていない遺跡がまだまだ眠っているのだとか。そのため、地下鉄工事のため地下を掘るとすぐに遺跡が見つかり、その度に工事は中断。莫大な費用をかけて考古学者による調査が始まり……なんてことが繰り返されています。

ローマに初めて地下鉄が開通したのは1955年のことですが、それから半世紀以上経った今でも3本しか路線がないことを考えると、その困難さが想像できるのではないでしょうか。(ちなみに東京の地下鉄路線は13本あります。)

そもそも路線が少ないので、今のところローマで地下鉄の乗り換えができるのはターミナル駅であるテルミニ駅だけ。日本で例えると、近遠距離列車が発着する東京駅のような存在です。

ちなみに、ローマでは最近新しい路線(C線)を建設中(一部はすでに開通)ですが、やはり工事は思うように進んでいないようです。当初は2020年までにはコロッセオ付近まで開通する予定でしたが、現段階で2023年に延ばされるなど、すでに雲行きは怪しい状況。

コロッセオ付近の地下鉄はまだまだ建設中です。

こんな状態なので、もうすぐ新線が開通するとはいえ、ローマ市民はあまりそれをあてにしていない様子です。以前ローマの友人に「もうすぐ新しい路線ができるんでしょ?」と話を振ってみましたが、その答えは「Magari(そうだったらいいね)」というもの。まだまだ開通は先になりそうな予感です。

もしかしたらこの中から、また歴史的な発見があるかもしれません。そんなことよりもさっさと開通してくれって気持ちもありますが。

 

もはやありがたくない!? ローマの街中にころがる「古代遺跡」

遺跡をはじめとする歴史的建造物は、地下だけでなく地上にもあります。本来ならこれらの建物は、貴重な資料として博物館に収められるべきものなのかもしれませんが、ローマではあまりに大量にありすぎて、もはや日常の一部として溶け込んでいるのが現状です。その様子を少しご紹介しましょう。

まずはローマ中心街にあるトッレ・アルジェンティーナ広場(1927年に発見)。紀元前の共和制ローマ時代の神殿や劇場の一部が立ち並ぶ、歴史的にも貴重な資料……のはずですが、囲いの外はすぐ往来が激しい大通りになっており、人々もあまり気に留めることなく歩いています。あと、写真には写っていませんが野良猫がよく住み着いています。

こちらは古代ローマ時代の劇場の柱跡……がリノベーションされたもの。建物に埋まっているし電気の配線は通されているし、ぞんざいに扱われすぎ。そもそもこんな工事、誰が許可を出したのでしょうか……。

こちらはローマ観光の目玉として世界的に有名なコロッセオ。半壊しつつも、およそ2000年間に渡ってその姿を今に留めています。市内バスに乗っていると突如として現れるので驚く人も多いかもしれません。でも残念ながら、そのうち見慣れてきます。

紀元前1世紀頃に信仰が流行ったエジプトのイシス神(セラピス神という説も)の像の一部。当時エジプトはローマ帝国の属州だったため、他国の神が受け入れられることもあったようです。現在はピエ・ディ・マルモ(Pie’ Di Marmo:大理石の足)と呼ばれ多くの人に愛される存在に。

こんな調子で、地上も地下もたくさんの遺跡であふれるローマ。特に中心街は歴史的な建造物が多く、2000年以上も前から続く歴史の名残をあちこちに感じられます。

世界遺産のフォロ・ロマーノもローマの中心市街地にあります。

もっとも、そのおかげで地下鉄の工事は遅々として進まず、いつまでたっても交通渋滞が解消しないなどの問題があるのですが……こうした不便さも含めてローマの魅力といえるのかも。みなさんもイタリアを訪れることがあったら、ぜひローマの街中を歩いてみてください。街の中にあたりまえのように溶け込む遺跡は、なかなか壮観ですよ!

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この記事を書いた人

鈴木 圭

鈴木 圭

イタリア・ミラノ在住、フリーライター。広告ディレクターや海外情報誌の編集者などを経て2012年にイタリアに移住。イタリア関連情報や海外旅行、ライフスタイルなどの分野を中心に活動中。旅行先の市場でヘンな食べ物を探すのが好き。「とりあえず食べてみよう」をモットーに生きてます。HPTwitterInstagram

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