2018.06.18

ミャンマーの雨季は「ご法度」だらけ。引っ越しも結婚もダメ、できれば肉食も避けよ。

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一年の間でも億劫に感じる季節、梅雨。楽しい夏がはじまる前に、試練のように日本を襲う。気を紛らわせられるかどうかは分かりませんが、海外の梅雨(雨季)も覗いてみませんか? ミャンマーの雨季。東南アジアらしくスコールがザッと降ってパッと止むんでしょ? と思いきや、大都市・ヤンゴンでは雨の勢いはそのままに、一日中降ることもあるそうです。仏教においては雨安居(うあんご)と呼ばれる期間で、なんと引っ越しも結婚もしてはいけないのだとか!

 

世界で最も雨季と乾季の差が激しい都市

最大都市・ヤンゴンがあるミャンマー中部から南部にかけては、雨季と乾季の差が世界で最も激しい国のひとつといわれています。

東南アジアの雨季といえばみなさんは、激しい雨が短時間降り、あとはすっきり晴れるスコールをイメージされるかもしれません。傘はなくともカフェででも雨宿りしていればそのうち止むと。しかしヤンゴンの雨は1日中降り続くことも多く、スコールだけですむこともまれです。ひどい場合、スコール並みの豪雨が1日中続くことさえあります。

※スコールは正しくは「急激な風速の増加現象」を意味しますが、日本ではしばしば「熱帯特有の集中豪雨」という意味で使われることが多いため、本稿ではその用法で使用します。

ある年の月間降水量を見てみましょう。ヤンゴンでは6~8月にかけて毎月550mmを超え、もっとも雨量が多い8月が602mmなのに対し、周辺諸国は最多雨量の月でバンコク344mm(9月)、ホーチミン327mm(9月)、クアラルンプール334mm(11月)と約半分です。どれほどヤンゴンでは雨季に雨が降るか想像いただけると思います。

 

結婚や引越しが禁止となるワーゾー(雨安居)期間

雨季の雨がハンパないヤンゴンですが、そのヤンゴンの雨季を特徴付けるのが「ワーゾー」という仏教の慣習です。日本の仏教では「雨安居(うあんご)」と呼ぶ時期に相当し、仏教発祥の地インドでは雨季の間、行脚をやめて僧院に篭り座禅修行をしたことに始まったといいます。雨季には虫が多くなるのでむやみに外を歩いて踏み潰し、殺生してしまうのを避けるためだそうです

ミャンマー仏教ではさらに、このワーゾー満月の日に仏陀が直弟子5人に初めて教えを説いたとか、仏陀が天上にいる亡き母親に説法しに行ったなどと伝えられており、この日より約3ヶ月間、仏陀は天に昇って弟子たちに説法を行うとされています。そこでこの間、僧侶は行脚(旅行)を禁じられ、信者も引越しや結婚などの暮らしに大きな変化をもたらす行事が禁止となり、いつにも増して信仰深い生活を求められます。

 

ワーゾーの始まりに寄進する「仏具」が派手化

ミャンマーの雨安居の開始日はビルマ暦ワーゾー月の満月の日。ビルマ暦は月の満ち欠けに従うため西暦とは一致しておらず、2018年の今年は7月27日です。

この日やその前後に、ミャンマーの人びとは親戚や近隣住人、職場など様々な単位で僧侶に袈裟などの仏具を寄進します。これが経済発展とともに年々派手になってきているのです。写真は、あるボランティアグループがワーゾーの数日前に僧侶に寄進の儀式を行っているところです。

ミャンマーの僧侶は、日本の僧侶の生活を知る者から見れば驚くほど禁欲的。生涯にわたり私有財産を持つことなく、袈裟と草履、托鉢用の鉢、傘、ウチワといった必要最低限の日用品だけで過ごします。つまり僧侶に寄進する際も、その範囲で贈らねばなりません。

しかし少しでもお坊様に喜んでもらいたい、見栄えのするものを贈りたいと考えてしまうのが人心というもの。こうした大衆の欲望に応えるべく、大型スーパーなどではワーゾーになると特設売り場を設け、金銀のモールなどで派手に飾り付けした「仏具」の贈答セットを取り揃えます

この寄進セットをじっくり検討すると、どこまでが日用品であって私有財産ではないのか、というギリギリの境界が垣間見えてなかなか興味深いのです。

写真は時計と保温ポットです。これは日用品ラインをクリアです。決まった時間にお経を読んだり、食事をとったりせねばなりませんし、お茶を飲むには熱いお湯が必要です。

近年寄進セットに入るようになってきたものにハンドクリームもあります。そうですよね、お坊様は自ら食器や袈裟を洗われますから、手荒れもきっと深刻に違いありません。これは贅沢品じゃなくて薬ですよね!?

サプリメント。お坊様には健康的な生活を送ってもらわねばなりません。これもなんとか薬の範疇ではないでしょうか。

食料品は大概大丈夫なのでは? ということで最近は、高級寄進セットに果汁100%ジュースや高価な燕の巣ドリンクなども入るようになっています。

 

雨安居中はより敬虔な生活を

もともとミャンマー人はとても信心深く、毎朝の托鉢の僧にも多くの人たちが食事を提供していますが、ワーゾーの3ヶ月間は托鉢に加えて、近隣の人たちと協力して豪華な食事を僧院へ届けたり、いつもより多く寄進したりします。

また、早朝5時と昼前の11時の1日2回しか食事をとれない僧侶の戒律にならって、ワーゾー期間は晩ご飯を抜く人もいれば、もう少しマイルドに菜食生活を心がける人も増えます。スーパーではこの期間、動物性たんぱく質を使っていない食品に「ワーゾーシール」を貼って、菜食の消費者が商品を買いやすいように工夫しています。

写真はピーナッツ入りのポットチップスです。祈りの形に手を合わせるマークの「ワーゾーシール」が貼ってあることで、動物性油脂を使わずに揚げていることがわかるのです。

 

雨が終わり、街は祭りと結婚式のシーズンへ

こうして僧侶、信者ともに戒律をより厳格に守る3ヶ月近い日々が過ぎ、雨がやみ始めると、西暦では10月前後となるビルマ暦タディンジュ月の満月の日を迎えます。

この日、天上で過ごしていたお釈迦様が地上へ戻られるため、国民総出でパゴダや家の前、道路などにロウソクや灯明を灯します。「お釈迦様が道に迷わないため」と人びとは言いますが、「なんとか自分の家へ来てもらいたいからじゃないの?」と邪推するのは、私が不信人者だからでしょうか。

タディンジュの祭りを境に、ミャンマーは今度は乾季へ入っていきます。冒頭でミャンマーは雨季と乾季の差が激しいと書きましたが、雨季の激しい雨を耐えた人々に待っているのは、今度は一滴の雨も降らない晴天が何ヶ月も続く乾季です。3ヶ月間行えなかった引越しや結婚が一気に解禁となり、街は結婚式ラッシュ、そしてお祭りラッシュを迎えるのです。

こうしてみてみると、ミャンマーの1年のサイクルは節目節目に仏教行事がアクセントをつけつつ、雨の多寡とともに進んでいることがわかります。かつて「アジアの米びつ」と謳われた、稲作の国ならではといえるでしょう。

 

雨季のミャンマー旅行ならバガンやマンダレーがおすすめ

最後に、6月から9月にかけてミャンマーを旅行しようと考えている方へのアドバイスを。

ミャンマーは日本の1.8倍もの広大な面積があり、気候区分も熱帯、亜熱帯、温帯と様々です。

ヤンゴンでは大雨が常の雨季であっても、遺跡で有名なバガンや古都マンダレーなどの中央部の乾燥地帯では、実は晴天の日も珍しくないのです。このことはあまり知られておらず、ミャンマーでは乾季に観光客が集中し、雨季には激減します。

ヤンゴンは通り過ぎるだけにすればあまり雨の被害はこうむりませんから、中部エリアをじっくり回られてはいかがでしょうか。乾季と異なり、草や木々の緑、花々あふれる美しい風景を、観光客が少ない中で楽しめておすすめです!

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この記事を書いた人

板坂 真季

板坂 真季

ガイドブックや雑誌、書籍、現地日本語情報誌などの制作にかかわってウン十年の編集ライター&取材コーディネーター。西アフリカ、中国、ベトナムと流れ流れて、2014年1月よりヤンゴン在住。エンゲル係数は恐ろしく高いが服は破れていても平気。主な実績:『るるぶ』(ミャンマー、ベトナム)、『最強アジア暮らし』、『現地在住日本人ライターが案内するはじめてのミャンマー』など。Facebookはこちら

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