2018.01.15

夜は中世にタイムスリップ! イタリア・ミラノの夜景と夜見酒

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イタリアはEU第三位の経済大国だというのに、都市夜景はないという。なぜかというと、古代ローマ時代から残る遺跡や街並みを保存するために、規制が掛かっているのだとか。それだけに、ライトアップされた街並みを見ていると、まるで中世にタイムスリップしたようです。現地在住ライターの鈴木さんにご紹介いただきます!

イタリア在住のライター、鈴木圭さんにご紹介いただきます。

 

高層ビルのないイタリア、街の灯はあるのに夜景はない?

「夜景」という言葉を聞いて、みなさんはどんな景色を想像しますか? 高層ビルから見下ろす街の灯、きらびやかに輝くネオン……そんな光景が一般的なイメージではないでしょうか。ところが残念ながら、イタリアにはそういった光景が存在しません。

夜景ってこんなイメージでしょうか。ちなみに写真はモロッコのカサブランカ、イタリアは関係ありません。

……いや、ちょっと言い過ぎたかも。もちろん、街の灯がある以上夜景そのものが存在しないなんてことはないはず。しかしイタリアには、ローマやミラノなどの大都会でさえ高層ビルがほとんど存在せず、夜景を見られるような高い場所そのものがないのです。

イタリアはもともと、古代ローマ時代からの歴史を脈々と受け継いで発展してきた国。街の中心街には、コロッセオやパンテオンなど、千年以上も前に建てられた建物がそのまま残っていることも。友人の家にお呼ばれして「この家は800年ごろに建てられた建物なんだよ」などと言われ、びっくりした経験も一度や二度ではありません。(800年前ではなく、西暦800年のことです!)

イタリアの古い街並み。数百年前から時間が止まっているかのよう。

イタリア人自身も、歴史ある街並みを肯定的にとらえており、街の景観の保護にはとても敏感です。そのため、特に中心市街地では新しい建物を建てる際の規制が非常に厳しく、場所によっては窓枠の修理など、ちょっとした自宅の補修にも市に届け出が必要なケースもあるほど。教会よりも高い建物は建てられないという噂もあり、当然ながら街のど真ん中に高層ビルを建てるなんてもってのほか。仮に計画したとしても、よほどのことがない限り許可はおりないでしょう。

それでも近年では郊外の開発が進んでいることもあり、チェントロ・ストーリコと呼ばれる旧市街地以外の場所であれば高層ビルが建つケースも増えてきましたが、住居やオフィスとしての利用がメインで、日本のように展望台もありません。そのため、そもそも高い場所に上って夜景を見るという行為自体が浸透していないのです。

 

地上から望む、ライトアップされた街並みはまるで中世の世界

高層ビルから見下ろす夜景はないものの、イタリアの夜の街に見どころがないわけではありません。多くの街では、日が落ちると教会や歴史的な建造物、メインとなる通りなどがライトアップされ、とてもきれいに輝きます。特に、古代ローマ時代の遺跡や数百年以上も前から存在する建物がライトアップされた光景は、まるで中世の時代にタイムスリップしたかのよう

ライトアップされた古代ローマ時代の遺跡。

上記の写真はローマのトッレ・アルジェンティーナ広場のものですが、他の都市でも歴史的建造物や街並みがライトアップされる景色は変わりません。ライトの数が少ないため光量はそれほどではないものの、それがまた印象的な雰囲気を醸し出してくれます。

ヴェネツィアの運河。

フィレンツェのドゥオモ広場。

シチリアの州都・パレルモの街並み。

このように、高層ビルの少ないイタリアでは「夜景」は地上から見るもの。一般的にイメージされるものとは少し印象が異なるかもしれませんが、これはこれで美しく、見ているだけでも飽きません。特にサマータイムで日が長くなる夏の夕方には、パブに立ち寄って1杯ひっかけ、ほろ酔い気分のままライトアップされた街並みの中を散歩しているだけでも楽しい気分にさせてくれます

 

ミラノの夜に欠かせない光景、アペリティーボ(食前酒)文化

ライトアップされた歴史的建造物や街並み以外に、ミラノには定番とも言うべき夜の光景があります。それがアペリティーボと呼ばれる習慣です。アペリティーボとは日本語で「食前酒」を意味する言葉。フランス語のアペリティフという言葉のほうがイメージしやすい人も多いかもしれません。その名前の通り、夕食前に軽くアルコールを飲む習慣のことで、お腹を空かせ食欲を増進させる効果があるとされています。

アペリティーボの定番ドリンク、スプリッツ。イタリアのリキュールであるアペロールをスパークリングワインで割ったもの。ただ食前酒を飲むだけならどこにでもあるありふれた習慣ですが、ミラノでは一風変わった、独自の文化として進化を遂げています。それは、ドリンクを一杯注文すると軽食がついてくるというもの。

「軽食」と簡単に表現しましたが、その内容は実に豊かで、サンドイッチやカナッペなどのいわゆる「軽食」から、パスタ、リゾット、サラミやチーズ、ローストチキンまでなんでもあり。しかもそれがバイキング形式で好きなだけ食べていいというのだから、「そもそも軽食ってなんだっけ?」と質問したくなるレベルです。

ドゥオモ広場横のガレリア内でもアペリティーボが楽しめます。

どうしてミラノでこうした習慣が根付いていったのかは、定かではありません。ただ、ミラノはもともとモード(流行・ファッション)の街としてデザイナーや編集者、カメラマンが集まりやすい場所なので、そうした人たちの社交の場として発展していったのではないかと、個人的には思っています。もしくは、学生が多いため、安くお腹がいっぱいになるサービスが受け入れられたなんてことも考えられます。

言うまでもありませんが「軽食」のレベルは軽く越えています。

上記の写真はほんの一部で、テーブルの裏側には同じ量の大皿が並んでいたりします。中には「食前酒なのにそんなに食べるの?」と不思議に思う人もいるかもしれません。ただ、店によってはチョコレート・ファウンテン(チョコレートが滝になって流れてくるあれです)やケーキ、フルーツなどのデザートまで用意されていることを考えると、「食前」というのはただの建前で、夕食としてしっかりお腹をふくらませることが暗黙の了解のようです。

アペリティーボができるパブの前にはこんな看板が。「Aperitivo」の文字が目印です。

ちなみに、アペリティーボのお値段はドリンク込みでだいたい6~10ユーロ(約780~1,300円)。2杯目以降は5ユーロ(約650円)ほどになるので、酒飲みにとっては何ともうれしい話です。週末の夜になるとアペリティーボのできるパブには多くの人が集まり賑わいます。

パブの立ち並ぶミラノのナヴィリオ運河沿い。

教会や遺跡など、歴史的建造物がライトアップされた姿も美しいのですが、アペリティーボのように人々が集まる場所の街の灯もまたきれいなもの。特にパブの多いナヴィリオ運河沿いやコルソ・コモなどは、店舗の灯と相まって、通り全体がライトアップされたようにぼうっと浮き上がります。こうした光景もまた、ミラノには欠かせない「夜景」といえるのかも。

ミラノにお越しの際は、ぜひアペリーティーボも楽しんでみてくださいね!

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この記事を書いた人

鈴木 圭

鈴木 圭

イタリア・ミラノ在住、フリーライター。広告ディレクターや海外情報誌の編集者などを経て2012年にイタリアに移住。イタリア関連情報や海外旅行、ライフスタイルなどの分野を中心に活動中。旅行先の市場でヘンな食べ物を探すのが好き。「とりあえず食べてみよう」をモットーに生きてます。HPTwitterInstagram

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