上海の夜景は時間旅行! 40円で黄浦江を楽しむ裏技的ナイトクルーズ

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※本記事は特集『海外の夜景』、中国・上海からお送りします。

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東西の川岸で100年差の夜景が楽しめる上海ナイト

上海を東西に分ける黄浦江の川岸からは2種類の夜景が楽しめます。川を挟んで東にある浦東エリアには、急速に発展した中国を象徴する高層ビル郡が、対する西側には、租界時代に建設された古い西洋建築が建ち並びます。東西で100年もの時をタイムスリップしたような不思議な夜景を見ることができるのです。

 

「未来」の東! 「陆家嘴」エリアは大都会的な摩天楼

陆家嘴の中心に立つと、そこは子供のころに空想したような未来都市

上海、浦東エリアの中心は陆家嘴(lujiazui)駅近辺。20年あまりで急速に発展したこのエリアの中心に立つと、まるで自分が世界を手中に収めたような錯覚に陥ります(完全に錯覚です)。2017年現在、高さ世界第2位の上海中心(632m)や第11位の上海环球金融中心(492m)など(「中心」はセンターの意味)、数多の高層ビルが林立し、夜はとりわけ未来的な様相です。

 

左から上海环球金融中心(492m)、上海中心(632m)、金茂大厦(421m)の高層ビル三兄弟。これほどの超高層ビルが隣り合って集まっている場所はそうないでしょう。

20年前は、東方明珠塔(テレビタワー)が目立っているものの、あとは低いビルがぽつぽつとあるのみ。私が7年前に上海へ旅行した際でも、上海环球金融中心と上海中心(現在上海で1,2位の高さを誇る2本のビル)はありませんでした。そのたった7年間で5号線までしかなかった地下鉄は現在16号線まで完成しており(14,15号線は未だ工事中)、そのスピードの発展でこの場所の夜景も日々変わるかと思うと、カメラに収めないわけにいかない。オフィス街でありながら、いつ来てもカメラを構える人々の姿が多いのはそんな理由もあるのかもしれません。

 

「過去」の西! 「外灘」エリアは100年前に遡る租界時代の洋館群

変わって、黄浦江の西は「外灘(ワイタン)エリア」。アヘン戦争に敗れた清朝が南京条約によって英米などに土地を割譲したことから、西洋建築が続々と建ち始め、異国情緒あふれる街並を形成しました。1996年に中華人民共和国の全国重点文物保護単位に指定されたため、現在も昔の姿を保っています。この指定がなければ、発展の中で取り壊されていたかもしれません。

冬場は夜6時ごろ、夏場は夜7時ごろにライトアップされ、レトロで幻想的な上海の情景がさらに深まります。各歴史建築にはかつての名残で金融機関やホテル、レストランなどが入っており、ルーフトップバーからは浦東地区の見事な夜景を眺めることができます。

欧米人が建て、かつては中国人は入れなかったエリアもあったという場所を、現在はインスタグラマーやセレブたちがこぞって集まり、もてはやしている。その状況を当の中国人はどう思っているのか、以前から気になっていたため、地元に暮らす20代の女性に話を聞いてみました。

「歴史については学校で習うので知られていることですが、みんな今は気にしてないと思います。欧米風のおしゃれな街並みのお陰で観光客もたくさん来ていることは誇らしいし、私も外灘のレストランはおしゃれで好きです」

他にも数人に話を聞きましたが、年配の方の中にはおもしろく思わない人もいるかもしれないとした上で、「租界となったからこそ上海の繁栄や発展につながったから、別に気にしていない」という意見が多くありました。確かに、当時作られた「魔都」「モダン都市」のイメージが、現在の上海につながっていることは事実でしょう

話を聞いて思ったことは、若い人でもみんなよく勉強しているということと、私のような外国人にも歴史の質問に答えてくれること。そんなところから、中国人のまじめさと大らかさを併せ持つ気質を感じることができたように思います。

 

そんな100年分の夜景を堪能できる「裏技的ナイトクルーズ」

新旧の夜景を一度に見るなら、一般的には「黄浦江ナイトクルーズ」が有名ですが、実は裏技があるんです。それは、西岸と東岸の渡し舟。ナイトクルーズが100元(約1700円)からという価格に対し、渡し舟はたった2元(約34円)と超オトク! それでもメインの夜景は十分に楽しめますよ。

いくつかルートはありますが、今回は西岸の外灘南側の乗り場からスタート。夜10時までと遅い時間まで運行しているので、食事の後でもミニクルーズが楽しめます。窓口で2元払うとプラスチックのコインがもらえるので、乗船ゲートで箱に投げ入れ乗船します。船は2階式、乗ったらもちろん2階のデッキへ上がりましょう。

平日の18時半に乗船しましたが、なかなかの人気で、20畳ほどのデッキだけでも50人以上乗っていました。租界時代のレトロな街並みに別れを告げて、15分ほどのショート・クルーズがスタート。

美しくライトアップされた少々値が張るクルーズ船を横目に、未来へタイムスリップ。上海のビルはこのように派手にライトアップされたものが多く、正直そのセンスはどうなんだと思うものの、見ていて楽しく、元気になれることは確かです。

対岸(東岸)に到着! とっても短い時間で租界時代から未来的な浦東地区にタイムスリップしたような感覚が味わえます。船は15分間隔で出ているので、時間を合わせなくても大丈夫。観光で来た方にはぜひお勧めしたいルートです。

 

上海は派手なだけじゃない! ほっこりする「水郷古鎮」の小夜景

上海とその近郊は江南地区といわれ、かつては湿地帯が広がっていました。上海中心部ほどの派手さはありませんが、水際に栄えた街のなごりが「水郷古鎮」と呼ばれ、現代では人気観光地となっています。

このように上海の西側には河川や湖沼が多く、湿地帯が広がっていることがうかがえます。

こちらは「朱家角(zhu jia jiao)」という明の時代に栄えた水郷古鎮。のどかな雰囲気ですが、上海中心部から1時間ほどで行ける、れっきとした上海市内なのです。400年ほど前の橋なども保存されている一方で、新しいお店も建ち並び、ここも黄浦江沿いとは違った意味で、新旧が入り混じった街と言えるかもしれません。

夕暮れから夜にかけて灯りがともりはじめると、一気に雰囲気が増します。川面に映った提灯の赤い色を眺めながら食事ができるところも、水郷古鎮の醍醐味。ギラギラとエネルギッシュな上海中心部の夜景とは一線を画し、のどかなゆったりとした時間が流れる、落ち着いた夜景を見ることができます。

 

おまけ・「四角好き」にはたまらない、香港の四角い夜景!

上海から飛び出して香港へ。「高層ビルが林立しているからさぞかし夜景が美しいだろう」と思って出かけてみたところ、意外なところに萌えてしまいました。

地下鉄太古駅から徒歩10分ほどの場所にある、益昌大厦(Yick Cheong Building)。集合住宅と言えば身も蓋もないですが、中庭に立つと角ばった建物と、四角く切り取られた空が見え、四角好きにはたまりません。ええ、私、四角好きでございます。

余談ですが、普通の人が見るとなんでもないようなカクカクしたビルに萌え、上海でもこんな写真を撮っています。

昼間1時間、夜2時間、足掛け3時間写真撮影に没頭。ただ、光が弱くスマホカメラではこのように撮ることができませんので、デジタルカメラは必須。益昌大厦には普通の人が暮らしており、1階にはローカルな雰囲気が満点の商店が並びます。写真好き、インスタ好き、四角好き(?)には有名な場所なので、中庭には私以外にも写真を撮っている人がたくさんいました。

 

元気の出る極彩色の夜景、「見栄」と「明るい未来」の顕れ?

ビルのライトアップやネオン、お店の飾りに至るまできらきらと明るく派手な中国。美しいとため息が出るというよりは、元気をもらえるるような夜景を見ることができます

「明るい光や色は、明るい未来を運んでくる」「暗い色は死の色である」

風水やゲン担ぎを大切にする人が多い中国だからこそ、街中はどこまでもキラキラとしています。30代の中国人男性に話を聞いたところ、「お店の装飾やビルのネオンには財力を誇示したいという意味もある。プライドが高い人も多いので、電気代をケチっていると思われたくない。さらに少しでも元気を出したい、金運にも恵まれたい、そんな想いから派手な装飾が多いのかもしれません」とのこと。確かに日本で節電していた時は、仕方ないことながらも、明かりの少ない街で気持ちも沈んでしまったことを思い出しました。

多少無理してでもとにかく明るく、外から来た人にも楽しんでもらう。そんな中国人の思いが、とことん派手に輝く上海の夜景に表れているように感じました。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

海辺 暁子

海辺 暁子

2016年より上海在住。日本にいるときから典型的なO型と言われ続けてきましたが、こちらにきてさらにO型っぷりに磨きがかかりました。色々なことが自由なので体重も順調に増してます。中国の家庭料理「宮保鶏丁」が好きすぎて、大量に作って冷蔵庫にストックするのが幸せ。

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