2017.12.14

タイの正月は「死ぬ」ほど盛り上がる、1月は火災で3月は水難?

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タイの年末は飲めや騒げやのどんちゃん騒ぎ! とくにバンコクのイベント会場は熱狂の渦と化します。それなら家でゆっくりテレビ局の中継を楽しもうと思えば、各局でのカウントダウンがてんでバラバラ!? なお、伝統的な正月は4月13日、このときは仏教の教えが根付くミャンマーと同じく水かけ祭りが行われ、国中がまた再び熱狂の渦の中に。タイのひとびとはとにかくお祭り好きのようです。

タイ在住のライター・高田胤臣さん、同じく在住の漫画家・ずんこさんにご紹介いただきます。

 

お祭り好きの多いタイ、カウントダウンは死者も出るほど盛り上がる!

タイは新年が2回ある。新暦の1月1日と、旧正月の4月13日だ。新暦には欧米や日本と同様に、カウントダウン・イベントが各地で開催される。毎年最も盛り上がる場所はバンコクの「セントラルワールド」――伊勢丹と、ZENというデパートがふたつも入居する巨大商業施設、その前にある広場となる。

セントラルワールド前のビアガーデンは今も大人気で、毎年長蛇の列になる。

特設ステージに招待される歌手はその年の人気歌手や、国民的人気のある超有名歌手ばかり。それを見たさに来る人も少なくなく、また見物客を目当てにした屋台で埋め尽くされ、毎年万単位の人でごった返す。ショーは夕方から始まり、封鎖された大通りをぎゅうぎゅう詰めでカウントダウンを待つ人ばかりという地獄絵図。大げさではなく、トイレにも行けないし、やっと年を越しても、帰りは帰りで端から人が動き出すのを待たなければならないので、ここを訪れる際には相当な覚悟が必要だ。

普通はこれに懲りて行かなくなりそうなものだが、タイ人はカウントダウンになるとうずうずとしてしまう人が少なくない。彼らはとにかく祭りが大好きだ。各地で開催されるイベントやパーティーにたくさんの人が訪れて、一体どこにこれだけの人々が潜んでいたのかというほど、どのイベントでもイモ洗い状態に混雑する。

セントラルワールドの日常。こんなにも広い通りがびっしりと埋まってしまうほどカウントダウンは大盛況となる。

数年前には、あるクラブが盛り上がりすぎて、店内で打ち上げた花火がステージの装飾に引火して、数十人の死者と数百人の負傷者を出すという洒落にならない火災事故も起きた。それでなくても飲酒運転が増加して事故による死者も増える時期である、こういったしょうもない事件でカウントダウンと共に命を落とすとは、人生が実にもったいない話だ。

地方の小さな村では自分たちでカウントダウン・パーティーを開催することもある。

そんな不注意による事故がある一方で、物騒な事件もあるのもタイのカウントダウンである。

セントラルワールドの前にある広場では11月半ば、あるいは12月頭からビアガーデンが広がるように展開され、最終日となる大晦日に向けて盛り上がる。国内最大のビアガーデンであり、各ビール会社が競って場所取りをしたことから、各ブースの権利金がどこまで高騰しているという報道が毎年の風物詩となっていた。たったワンシーズンで数千万円にも上るのだが、それを払ってでも得られる利益の方が大きいのだ。

実はここ、2007年までは2月末まで開催だったが、同年の元旦未明に爆弾事件があり、翌年から大晦日で終わるようになった。セントラルワールドのカウントダウンは、ビール好きにはビアガーデンとの別れの秒読みにもなってしまった。

タイといえども年末年始は地方に行くと長袖が必要なほど寒くなる。

イラスト:ずんこ

 

各テレビ局で時間がバラバラ、テレビ1台で各地のカウントダウンを楽しむ

ごみごみした場所が嫌いな人には、ぜひとも自宅やホテルのテレビでカウントダウンを楽しむことをおすすめしたい。部屋でカウントダウン。響きはつまらないが、これが毎年おもしろい。僕自身は2002年からずっとタイ在住で、年末年始はバンコクで過ごしているのだが、イベント詣ではすっかり懲りたので毎年テレビでカウントダウンイベントの光景を遠くから眺めている。この過ごし方は年々、タイの成長を感じられ、確かに地味かもしれないにしても、案外楽しめる過ごし方となる。

あるチャンネルで始まった秒読み。10分も前からカウントされても困るのだが……。

テレビでのカウントダウンの楽しみ方。それは、タイの各局が放送するカウントダウンの瞬間を全部観ていくこと、である。そんなに何台もテレビがない?いや、1台で十分。それならザッピングで細切れに観る?それも違う。基本的には、全チャンネルで10秒くらい前からカウントダウンを観ていく。どうしてそんなことができるのか。それは各テレビ局のカウントダウンが統一されていないからだ。

2015-2016年年末年始の、バンコク特設ステージにおけるカウントダウン直後のテレビ映像①。

タイのテレビ局は、セントラルワールドや、チャオプラヤ河沿いに佇む三島由紀夫の小説で日本人には有名な「暁の寺」近辺の会場、パタヤビーチやチェンマイといった地方都市などの特設会場をそれぞれスポンサードして独占中継をする。だいたい新年10分前から画面に時間が表示されるので、その時点でどのチャンネルが一番早くに新年を迎えるかどうかがわかる。それを見て、順番にカウントダウンを楽しむ。

2010年以前は10分以上の差があった。ある局ではカウントダウンが終わり、打ち上げ花火で盛り上がっているにも関わらず、ほかの局ではちょっと静かめに「さあ、あと10分で新年を迎えますが、今年は……」などと振り返っていた司会者。それが徐々に縮まり始めた。

①の映像から14秒も経過しているのにまだカウントしている別のチャンネル

2017年と2016年の新年にはなかったが、2014年には一度だけあるチャンネルが「他局すべてをワイプで映す」という画期的なことをしてくれた。そのときにおそらく、各チャンネルでカウントダウンの時間が違うことをテレビ関係者も認識したのではないだろうか。だからなのか、2016年は確か3分程度ですべてのカウントダウンが終わっていたし、ついに2017年はたった1分以内で全チャンネルが新年を迎えた

①の映像から40秒後、パタヤが新年を迎えた。

とはいっても、いまだ全チャンネルで同時ではないという点はいかにもタイらしい。番組自体はゴールデンタイムくらいから深夜2時くらいまで続くので、おそらく厳密に時間を守る必要もないのかもしれない。「だいたい合っていればいいんじゃないか」というタイ人らしい適当加減なので、そこまで気が回っていないのだろう。そもそも、2017年の時間差が1分以内だったといっても、手元のスマートフォンの時計では一番最初のカウントダウンでさえすでに新年を15分も過ぎていたのだけれども。

イラスト:ずんこ

 

タイで最も大切な新年は「1月1日」ではなく「4月13日」

タイでも日本のようなゴム飛びがある。帰省ラッシュで、田舎では家族団らんを楽しむ姿が見られる。

「カウントダウン」というテーマなら盛り上がる時期は年越しであるが、テーマを「新年」とした場合、タイは事情が異なってくる。カウントダウンはないものの、タイで最も盛り上がる新年は「ソンクラーン」と呼ばれるタイ旧正月で、毎年4月13日から15日の期間がそれに当たる。

西暦と同じ新年はイベントとして人気があるというだけで、休みは大晦日と元旦だけという会社ばかりだった。この2、3年は土日などを挟むことで年始休暇が長めにはなってきて、このタイミングで帰省する人も増えたが、民族大移動並みに帰省ラッシュとなるのはソンクラーンの方である。バンコクから北東へ300キロ程度国道を走った先にあるナコンラチャシマー県は、車で3時間程度のところが帰省ラッシュでは12時間くらいの大渋滞。このときばかりは世界的に悪名高いバンコクの渋滞もウソのように消え去ってしまう。

20年前ほどではないが、近年再びバンコクの渋滞悪化の批判が他国から聞かれるようになった。

ナコンラーチャシマーの女傑タオスラナリー像。県の中心的場所であり、帰省の際はいったんここに寄ってお参りしてから実家に帰る。

ソンクラーンはバンコクに住む地方出身者にとっては実家にいる家族と過ごす唯一の連休になる。両親や田舎に預けた自分の子どもと水入らずで過ごす。しかし、水入らずという言い方とは裏腹に、この時期は水ばかりのシーズンにもなる。というのも、ソンクラーンのメインイベントは水のかけ合い、別名を「水かけ祭り」と呼ぶほどで、バンコクやチェンマイは規模と参加人数の多さで有名だ。

本来は仏像や目上の人の手などに水をかけて清める厳かな儀式だった。ちゃんとした家庭では仏壇などに清めの水などを置くなど、旧正月らしい飾りつけはするのだが、多くの家ではもうそこまでのことはせず、いつの間にか水かけという部分だけが抽出され、派手に盛り上がっている。若者だとわざわざ大量の氷を用意して冷や水をかけるし、バイクやトゥクトゥク(タイの三輪タクシー)の搭乗者がむき出しの乗り物なら30分以内に一滴も水をかけられなかったら、もうそれは奇跡だ。

近年はこのタイプの水鉄砲が人気で、100~500バーツ(300~1500円程度)の価格帯で売られている。

かつては無礼講で誰彼かまわずに容赦なく水をかけたし、やめてくださいと言ってもかけられることが普通だった。僕自身の経験では、わざわざ背負っていたリュックサックのジッパーを開けてカバンの中に水を流し込もうとした人もいた。

2000年ごろのソンクラーンに、ハリウッド俳優のマット・ディロンを当時のアパート前で見かけたことがある。雑誌取材で近くのレストランを訪れたようなのだが、周囲のタイ人は彼のことを知らず水をかけようとして、同じタイ人のカメラマンや記者に止められていた。かけるなら私に、と記者が身代わりとなったが、そのあと結局マット・ディロンも水をかけられた。しかし、最近はそのあたりのマナーが向上し、スーツなど仕事をしていそうな人にはかけないといった暗黙のルールが守られるようになった。

水かけ祭りに参加していない人にかけないのが暗黙のルールになったが、子どもたちは関係なく誰にでも水をかける。

ところで、タイの旧正月がなぜ4月13日という中途半端な日なのか。想像に難くない話からすると、旧暦の正月が今の4月13日ごろだったからである。タイは今でも一般的には仏歴を使用する。2017年は2560年となる。西暦でいう1900年に、当時のタイ国王が今の4月1日を新年に変更し、その後1941年に今のカレンダーのように1月1日を新しい年の始まりとした。

つまり、ソンクラーンは2つ前の暦が残っているのである。ちなみにパタヤは別の文化的な祭りと日程がくっついていることで、バンコクのプラプラデーン地区は居住者の多くがモン族という文化的な違いによって、例年1週間ほどソンクラーンが遅い。もしタイミングが合わなくても、1週間後であればソンクラーンに出会えるチャンスはある。

バンコクの水かけ祭りの様子。子どもから大人までみんなで楽しんでいる。

ソンクラーンはテンションが上がりすぎて、タイでは一年を通じて事故死する人が最も多い期間でもある。飲酒運転も多く、濡れた路面に滑って転倒するバイクもあるし、家路に急ぐあまりバスや人を満載にしたピックアップトラックが横転するなど、とにかく死亡事故が増える。カウントダウンがあってもなくても、やっぱりタイでは、テンションが上がる新年に死んでしまう人が多いのだ。

イラスト:ずんこ

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この記事を書いた人

高田 胤臣

高田 胤臣

1977年、東京生まれ。1998年に初訪タイ、2002年からタイ在住。タイの救急救命慈善団体「華僑報徳善堂」唯一の日本人ボランティア隊員。現地採用社員としてバンコクで日系企業数社にて就業し、2011年からライターになる。単行本数冊、AmazonKindleにて電子書籍を多数発行。執筆のジャンルは子育てネタからビジネス関連まで多岐に渡る。最近は「バンコク心霊ライター」の肩書きがほしく、心霊スポットを求めタイを彷徨う。

この記事を書いた人

ずんこ

ずんこ

タイを拠点に漫画家活動中。漫画作成、漫画の描き方指導、国内外のイベントにて似顔絵描きをするなどのフットワークの軽さが人気。以前シンガポールに住んでいたこともあり、シンガポールでの活動もしばしば目立つ。日本人向けタイの情報誌「バンコクマダム」やタイ人向けの日本紹介マガジン「WA-JAPAN」などで漫画を連載中。法人から個人まで幅広く仕事を受注してます。連絡先:zunkomanga@gmail.com Facebookはこちら

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