酒場と化すソウル、グルメが尽きない全羅道!韓国の居酒屋のおもてなし

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※本記事は特集『海外の居酒屋』、韓国からお送りします。

クリックorタップで韓国説明

 

夏はビアガーデン化、冬はテント屋台で外飲み

春から秋にかけて首都・ソウルを訪れ、夜の街を歩いていると、目にとまるのは屋外でお酒を飲む人たちの姿。夜の涼しい風にあたりながらビールを飲み干す光景を見ていると、仲間に入って一緒にお酒を飲みたいな、と考えることでしょう。

特にソウル中心部の鍾路(チョンノ、종로)周辺には屋台が多く、夏になるとお隣の乙支路(ウルチロ、을지로)あたりにかけては居酒屋や焼肉店の外にもテーブルが置かれ、誰もがみな気持ちよさそうに「外飲み」を楽しみます。コンビニや小さな商店の前にもプラスチックの椅子やテーブルが置かれ、街じゅうがビアガーデンと化すのです。

屋台は冬になるとテントで覆われますが、このような酒飲み屋台のことを「布帳馬車(포장마차、ポチャンマチャ)」といいます。これらは1950年代頃に露天商がお酒とおつまみを売ったことが始まりで、その後かなり増加したようですが、1988年のソウルオリンピックの際、違法に道路を占拠している屋台を浄化しようという流れのなか、多くの屋台や露店が撤去されました。

テント屋台の布帳馬車

韓国で屋台が多いのは、計画や段取りよりも「手っ取り早く商売を始めてしまおう」という気質がわりと強いために、こうした屋台が増えたのではないか、と思います。人々の生活に直結するような商売に関しては法律や条例の運用にゆとりが見られ、多少は黙認される傾向にあるのです。ただ現在は許可制のところが増えており、衛生基準を改善していく流れになっています。

このような酒飲み屋台のメニューは、炒め物から刺身まで多種多様。ソウルの中心街の屋台では値段のかかれたメニュー表があり、1品あたり10,000ウォン~15,000ウォン(1000円~1500円)で、一般の食堂と比べると少し割高に感じられます。また、このような屋台にはトイレがないことも利用する上ではネックです。

若者に人気のルーフトップバー

屋台をはじめ、屋外でお酒が飲める居酒屋には、若い世代から中高年まで幅広い世代がやってきてアフター5や週末を楽しみます。しかし近年、若者やソウルを訪れる観光客にはお洒落なルーフトップバーも人気があります。

Nソウルタワーがそびえる南山の麓にあるルーフトップバー

ルーフトップバーは韓国に限ったものではありませんが、ソウルの周辺には山が多く、特に街の中心には南山(262m)がそびえ、麓からは街の夜景を望むことができるため、非常に好ましいロケーションであることも人気の理由なのでしょう。また、南山の山頂にはNソウルタワーという展望台付きの電波塔が建っています。

 

どれだけ飲めるかは焼酎の瓶の数で表す

韓国では食堂で「食事とともにお酒を一杯」というのはごく普通のこと。オフィス街のランチ中心の食堂や「粉食(분식、プンシッ)」と呼ばれる軽食のお店以外には、冷蔵ケースにお酒が並べられています。食堂でお酒が飲める、というのは日本と同じ、といってもよいでしょう。

しかしお酒とともに頂く料理の感覚は日本と少々異なります。例えば焼肉はスタミナをつける食事というよりも、お酒とともに味わうおつまみという認識がありますし、鍋料理では中身の具材だけでなく、スープをお酒のつまみにしたりします。直訳すると「酒スープ」という意味になる「スルグッ(술국)」はお酒のつまみとする鍋料理。中身や味は店によりまちまちですが、主に豚の腸詰のスンデ(순대)や、ホルモンなどが入っています。

スルグッ(辛めの味付けのスープ。茶色の粉は肉の臭みを抑えるエゴマ粉)

実際に居酒屋や焼肉店は夜更けになると、それぞれのテーブルには韓国焼酎のソジュ(소주、焼酒)の小瓶や、ビールの空き瓶が競うように並べられている光景が目に入ってきます。

居酒屋の隅に集められた空の焼酎の瓶とビール瓶

日本人の感覚なら焼肉にはビールですが、韓国ではサムギョプサルやカルビなどにはソジュ(소주、焼酒)が合うとされています。焼肉だけでなく辛い味付けの料理のときも同様です。アルコール度数は16~20%ほど。アルコール特有のツーンとした香りがありますが、甘味料が含まれているためマイルドです。

またそれぞれが飲めるお酒の許容量を「酒量(주량、チュリャン)」といいます。これをソジュの小瓶(360ml)の本数で表しますが、お酒の話題になると必ず尋ねられるのがこの「酒量」。「酒量はどのくらいですか?」などという質問には、「1本です」「半分くらいです」などと答えたりします。

酒席ではソジュを互いに注ぎ交わし、お酒を飲むタイミングでその都度乾杯をします。ソジュはそのままストレートで飲むことが普通ですが、度数を薄め、清涼感を加えるために焼酎をビールで割って飲んだりもします。これを「ソメッ(소맥)」といいます。

「思い出横丁」「一寸一ぱい」などと日本語の提灯や看板も

そして韓国では居酒屋のことを「スルチプ(술집)」といいます。これは直訳すると「酒の店」となりますが、近年は日本式の居酒屋が人気を集めており、日本統治の名残もあるとは思いますが、「イジャカヤ(이자카야)」という言葉も広く知られています

 

旅人をもてなす朝鮮時代の居酒屋、酒幕とマッコリ

韓国では高麗時代以降、主要な通りには旅人をもてなす居酒屋を兼ねた宿泊施設があり、情報交換の場になっていました。日本でいうならば「木賃宿」や「旅籠(はたご)」のようなものだと考えればよいでしょう。これを「酒幕(주막、ジュマッ)」といいます。下の写真は韓国の峠道に残された、実際に使われていたものです。

韓国の峠道にある酒幕(慶尚北道・聞慶市)

このような場所で供されたのはマッコリのほか、汁かけご飯のクッパ(국밥)や、キムチ(김치)などの漬物だったといいます。韓国最後の酒幕は慶尚北道・醴泉(예천、イェチョン)郡に2005年まで営業していた三江酒幕。おばあさんが長年営業を続けていたのですが、数年後からは村の人が引き継ぎ、マッコリや軽いつまみを提供するお店となっています。

「酒幕」『檀園風俗図帖』(金弘道、キム・ホンド)1780年頃

今でも繁華街には「酒幕」を掲げた居酒屋があり、そのようなお店では伝統風の内装のなかでマッコリやチヂミの類が味わえます。

マッコリを注文すると、軽いおつまみがつく

マッコリは基本的に米で醸すお酒なので「ごはん替わり」という感覚があり、チヂミ類や豆腐キムチのような軽いおつまみとともに頂きます。上の写真はお酒だけを注文した時の一般的なマッコリのおつまみのイメージ。食堂でおかずが無料で付いてくるように、マッコリを注文するとこのようなつきだしが出てきます。

日本の韓国料理店などで見かける「焼肉や辛い料理にマッコリ」という組み合わせは通常では考えられず、韓国の人々にとっては違和感のあるものとなります。

 

チキン&ビールは最強のコンビ、韓国式ビアホール

ソウルや釜山はもちろんのこと、地方の繁華街に出かけてもどこにでも必ずあるのが、HOP(호프)という韓国式のビアホール。HOPのお店という意味で「ホプチプ(호프집)」と呼ばれます。このHOPはホップ、ビールの原料のことを指しています。

このようなお店では瓶ビールではなく、生ビールが出てくるのが普通。ジョッキやピッチャーで注文をすると、ピーナッツや韓国海苔、ポン菓子などがおつまみとして出てきます。

おつまみにはビールのつまみとして合うコルベンイ(골뱅이)と呼ばれるツブ貝の和え物のほか、トンカツのような揚げ物類などがメニューにありますが、ビールの組み合わせとして最も一般的なものがフライドチキン。鶏肉を油で揚げたフライドチキンのほか、コチュジャンをベースに作った辛い薬味ダレであるヤンニョムを絡めたヤンニョムチキンがあります。

メッチュ(맥주、麦酒)と呼ばれるビールと、チキン(치킨)の組み合わせを「チメッ(치맥)」とも呼び、サムギョプサルと並んで、仕事帰りの一杯に好まれるものがこのチメッです。値段も比較的安く、手軽に食べられるからというのも理由です。2013年~2014年にかけて韓国で高視聴率を記録し、中国でも話題となったドラマ「星から来たあなた」にはチメッが登場し、中国人観光客がチキン店に行列を作ることもあったようです。

 

豊富なおつまみに仰天! 全羅道のマッコリ酒場

韓国の地方に出かけたら、立ち寄ってみたいのはその地域にある酒場。地域ごとの料理の特色はもちろんなのですが、何よりも存分に感じていただきたいのはその場の雰囲気です。

居酒屋を切り盛りするアジュンマ(おばさん)の姿、お酒を傾けて仕事の疲れを癒す人々の姿。韓国には直訳すると「人の匂い」という意味の「サラム ネムセ(사람냄새)」という言葉があるのですが、「人間らしさ」ということでしょうか。地方の居酒屋こそ、そうしたものが感じられます。

 

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特におすすめしたいのは韓国南西部に位置する全羅道(전라도、チョルラド)という地域。南北に全羅北道と全羅南道で別れているのですが、ここは平野が広がる肥沃な土地。西には遠浅の海があり、内陸には山があり、という場所柄から食文化が発達した地域として知られています。

港町のマッコリ居酒屋のおつまみ。豊富な海産物とともに茹でた肉も

全州のマッコリタウン

全羅北道・全州(전주、ジョンジュ)には、「マッコリタウン」と呼ばれている場所があり、住宅街のなかに溶け込むような形で、同じシステムの居酒屋が何軒も並んでいます。

このシステムはマッコリをやかんで注文すると、おつまみはすべて無料でついてくる、という驚くべきものです。お店によってはビールや焼酎の場合もあります。

やかんにはマッコリのボトル3本分(約2.2リットル)のマッコリが入っており、その金額は25,000ウォン(約2500円)ほど。その後徐々におつまみが増えていき、食べきれないほどのおつまみがついてきます。お酒を追加注文すると、さらに他の種類のおつまみが追加され、ついにはテーブルには乗り切らず、お皿の上にお皿をのせるような状態になります。

韓国では人をもてなすときには「お膳の足が折れる(상다리가 부러지다(サンダリガプロジダ)」というほど、たくさんのごちそうを用意するという文化があり、一般の食堂でもおなかを満たすのには十分すぎる量のおかずが出てくるのです。

マッコリタウンのように、基本となる酒代を払うことによっておつまみがすべてついてくるシステムのお店は韓国の地方に出かけるとよくあります。韓国の南海岸の統営には日本語の「立ち飲み」に由来する「タチチプ」という形態のお店もあります。このような店はサービス精神が非常に旺盛で、実際に訪れてみれば、十分満足できるに違いありません。

 

心地よい外飲みも、豊富なおつまみも魅力の韓国の居酒屋

夏場を中心に、外の風にあたりながら、お酒が飲める韓国の屋台や居酒屋。そんな様子を外から見ていると、いちどは自分でも経験してみたくなるはずです。

ソウルだけでなく地方の居酒屋に入ってみると、その土地ならではの食材に出会えますし、なかでも食が豊かな全羅道のお店に出かけてみれば、豊富な品数のおつまみがお膳を彩り、もてなしてくれます。韓国ならではの居酒屋文化をぜひとも一度体験してみてください。

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この記事を書いた人

吉村 剛史

吉村 剛史

東方神起やJYJと同年代の1986年生まれ。「韓国を知りたい」という思いを日々のエネルギー源とするも、韓国のオシャレなカフェには似合わず日々苦悩。ソウルや釜山も好きだが、地方巡りをライフワークとし、20代のうちに約100市郡を踏破。SNSでは「トム・ハングル」の名で旅の情報を発信。Profile / Twitter / Facebook / Instagram / 韓旅専科

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