ベトナムの田舎に泊まろう! シャワーは冷たくも人はあったか【漫画レポ】

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※本記事は特集『海外の家事情』、ベトナムからお送りします。

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ベトナムの「田舎の家」を体験しよう

はじめまして、わたくし漫画家兼イラストレーターのムラケンと申します! ベトナムのホーチミン市に住んでおり、地元の人の人懐っこさ、料理の繊細さ、どこか懐かしい雰囲気に加え、新興国ならではの喧騒に導かれてやってきました!

現地ではたくさんの驚きがありますが、そのひとつが「家」。ベトナムの住宅のつくり、またそれをとりまく事情は日本とずいぶん異なります。そこで今回は実際にベトナム人の友人の家にお宅訪問! 市内中心部からバスで3時間半行った先、比較的田舎にある一軒家にお邪魔しました。

 

玄関に犬のオブジェ、家の中にも外にも犬、「幸福の犬」尽くし!

目的の家へ辿り着くまでにすぐ目についたのが、「犬」です。周りの家はどこも犬を飼っていて、番犬なのかなーなんて思っていたら、玄関の両脇にまで犬のオブジェが!!

日本と同じくベトナムではペットはもっぱら犬で、都市部であっても大きな家の敷地内では放し飼いにされていたりします。ベトナムの今年のテト(1~2月頃の旧正月)には、干支が犬ということもあったため、それらのイラストやオブジェをたくさん見かけました。

日本では犬に並ぶ人気がある猫ですが、こちらはペットとしては少数派。最近では都市部でこそ猫カフェがオープンするなど意識も変わりつつありますが、田舎ではまだまだ可愛がられるペットというよりも便利なネズミ取りとして飼われるようで、犬には洋風の名前が付けられることに対して猫は「猫」と呼ばれることも多いようです

一方で北部では今もなお根強く犬食文化があり、それこそテトのときに縁起物として食べられることが多いです(少数派だが猫食もある)。もしかしたら好んで食べられる背景には皮肉にも「幸福の象徴」であることもまた影響しているかもしれず、こうしたペットとして接し方は南部だからこそより強い傾向があると言えるのかもしれません。

裏庭にはブタも2匹いました。

何かに付けて犬が視界に入ります、ベトナムでは犬と共存して暮らしているようです。どの犬も飼い主がいるようで、野良犬もあまり見かけません。街のレストラン(とくに路上にイスやテーブルを出しているお店)ではゴミをわざと地面に落とす(あとでまとめて掃除する)習慣があるため、落ちている骨などを食べる残飯処理係として犬が活躍している場面が多いです。

吹き抜けの広間でおいしいおいしいベトナムランチ

こちら(画像右)の部屋はドアが両端に付いており、風通しを良くした部屋になっています。床はタイルになっていて、年中暑い国ならではのつくり。のちに分かるのですが、これはベトナムの伝統的な食事が床に座り込んで食べることや、バイクを盗難防止のために屋内に駐輪することから、掃除がしやすいというメリットもあるそうです

その部屋で、訪問先のお母さんが気を遣ってお昼ご飯を振舞ってくれました! 気持ちのいい場所で、お母さん手作りのミークァン(Mi Quang)は、ベトナム版お袋のお味という感じで控えめに言っても最高でした。お昼からビールも飲んでしまい、ほろ酔い気分でいい気持ち。

どこの国のお母さんも同じで、めいいっぱい食べさせてくれますね。感謝です!

 

庭にはちょっとした植物園レベルの草木や果物

敷地内では、いろんな種類の植物を庭にたくさん育てていました。日本の松の木のように、庭園でお父さんが趣味で育てているイメージ。お父さんは自分が育てた植物たちに囲まれながら、庭でご飯を食べるのが好きなようです。地域や季節にもよりますが、暑くて雨が良く降る国なので植物もよく育つらしい。日本では見かけないような植物も。

今回は庭先でしたが、農村部では家の外の敷地もめいっぱい使って、バナナ、パイナップル、ドリアン、ジャックフルーツ、などのトロピカルフルーツを栽培していることがよくあるとのこと。放っておいても勝手に育ってくれる訳ですから、フルーツ好きの人には天国ですよね。

ちなみにベトナム料理の味付けにおいては、北部はダシがあることに対して、南部は砂糖やヌクマム(魚醤)を使った後付けのものが多いです。これは、熱帯気候では果物を含めて食材に恵まれているためにダシ文化が発展しなかった、という背景があるのかもしれません。

 

キッチン広し! やはり風通しが良い作りに

ベトナムでは、キッチンは女性の聖域。スペースは広めに取られており、たくさんの食材や調理器具を使って料理するには最高な環境です。ただでさえ暑い国で、さらに火を使うということのためか、風通しを良くするための吹き抜けの構造になっています。

ここで気になったのが、炊飯ジャーがある一方で、フランスパン(現地では「バインミー」と呼ぶ)がたくさん入ったビニール袋が吊るされていたということ。ベトナムでは米食もパン食もどちらも好まれている国で、この背景には歴史上、中国とフランスの支配を受けてきたこともあり、現在のベトナム料理はそれらの影響なくしては語れません

 

ベトナムの宴会は地べたに座るスタイルが定番

その日のうちに帰るつもりが、なんと夕食まで振舞ってもらうことに! そこで不思議だったことが、お昼ご飯はテーブルの上で食べたのに、夕食はなぜか床で食べるという謎の切り替えです。

のちほど人に教えてもらったところ、ベトナムで宴会といえば床で飲み食いすることだそうです。テーブルに座って食べるスタイルも現代になってからということだそうですが、よくよく考えると日本もちゃぶ台からテーブルへと同じような変化をしていると言えるのかもしれません。

このときは理由が分からずしょうがなかったのですが、日本では見たこともない貝と冷えたビールをたらふく摂取したおかげで、考えることを放棄しました。たくさん食べ、たくさん飲み、たくさんお喋りし、とても充実した一日でした。

 

お湯は贅沢! 南国のベトナムでは水シャワーが基本的

ベトナムの住宅はほとんどがトイレとシャワールームが同じ。外国人や富裕層向けのものになると、たまーに湯船もあります。日本と違うところはズバリ、お湯が出ない点。南国だからということもありますが、お湯は贅沢品で給湯器を取り付けるかどうかで変わる。日本人からすると辛いですが、暑い国のベトナムでは少なくありません。わかっちゃいるけど落ち着かない! 東南アジアあるある。

 

ベッドに蚊帳! まるで日本の懐かしい風景

訪問先のお宅のベットは全部で3箇所。そのひとつの部屋には日本ではあまり見かけなくなった蚊帳が引いてありました。年中暑く、かつ水場も多いため、蚊も年中飛んでいます。蚊帳を見ると昔のじいちゃんの家を思い出して懐かしくなりました。

 

おまけ:ベトナムの電子機器事情と、違和感のある日本の漫画

テレビは居間に一台あり、パソコンも別室に一台ありました。日本と同じような感じですが、唯一違うところといえばカラオケマシーンがあるところです。

ベトナム人はカラオケが大好きです。「カラオケ」という単語を知らないベトナム人はいないと言ってもよく(ほかの国でもよく知られていますが)、こちらのご家庭もご多聞にも漏れずにカラオケが好きなようで、ハイスペックなカラオケセットがありました。お祝いの時なんかは人を集めてカラオケをしてワイワイやります。賑やかな国民性がこの機器で表現されていますね。

また、滞在中に目についたのが、日本の漫画。ワンピースやコナンやナルトなど、有名どころがたくさん。ほかに、ドラえもんやクレヨンしんちゃんが人気のようです。場所自体は田舎だったので、こんなところにも日本のカルチャーが浸透しているところを見て嬉しくなりました。

ちなみに、ベトナムの漫画は「左→右」に読むので、日本の漫画とは左右逆になっています。吹き出しも左右逆。なので、カカシ先生の片目も左右逆になっています(わかる人にはわかる)。キャラクター設定が変わっているということなので、公式ではないということもお察しです

 

ベトナムの「家」を知りに行ったら「家族」を知った

今回のお宅訪問を通じてやはり、もっとも感じたことはベトナム人のあたたかさ。お母さんがホーチミン市に戻る娘のためにたくさんの荷物を持たせている様子を見て、自分の母親を思い出しました。少し遠い所へ行ってしまった娘に両手いっぱいの手荷物を持たせたいと思うのは、日本でもベトナムでも同じようです。

また、お父さんは本当にお母さんのことが大好きなようで、いっしょにいる時とお酒を飲んでいる時は、とてもニコニコしていました。弟君は中学生のヤンチャざかりで、海に落とされたり寝かしてくれなかったり、こういったところも日本人と何も変わらないなーという印象です。

ベトナムの家族が揃った家はとても賑やかでした。「家」というテーマではありましたが、それ以上に触れられたものは「家族」。家に招いてくれた友人には感謝です。

また機会があれば、お父さんと熱く語らい、弟君と近くの海まで泳ぎに行き、お母さんのおふくろの味を味わいに行きたいと思います。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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  • ※記事は現地事情に精通したライターが制作しておりますが、その国・地域の、すべての文化の紹介を保証するものではありません。

この記事を書いた人

ムラケン

ムラケン

ムラケンです!ベトナム・ホーチミンシティ在住のイラストレーター。現地の魅力をお伝えするべく、生活の中での新たな発見や驚きを日常漫画にしつつ、イラスト活動をしています。市内のカフェで黙々と絵を描いている日本人がいたら、多分それはぼくです。Instagramはこちら。

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