イタリアの家掃除に学ぶ「完璧主義」、だけど入浴は意外とズボラ?

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※本記事は特集『海外の家事情』、イタリアからお送りします。

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モップがけとアイロンが日課! イタリア人は家の掃除に命をかける

今回のお題は「イタリアの住宅」。イタリアと日本の住宅の違いを聞かれれば、建物の構造や設備など挙げるべき点は無数にあります。ただ、一番大きな違いとしてまずお伝えしたいのは「家の中が常にキレイに掃除されている」ことなんです!

もちろん、日本でも家の中をキレイに保っている方はたくさんいると思います。程度もその人によるんじゃないか、そんな意見があるのも重々承知です。ただ、現地に住んで6年。イタリア人のお宅に招かれるたび、この国の人は掃除にかける情熱が桁違いなんじゃないかと思うんですよね……。

イタリアの住宅はこんな感じ

イタリアでは通常、家の中でも土足で生活します。床はタイル張りが多いので汚れはつきにくいのですが、それでも1週間もすればしだいに薄汚れ、ところどころ靴跡もつきます。

そのため、イタリアではほうきや掃除機でほこり掃除をしたあと、家中の床を漂白剤入りのぬるま湯でモップがけするという掃除方法が一般的。こうすることで靴跡はもちろん、タイルの小さなひびに入った汚れまでピカピカになります。

漂白剤はよく使われるので大容量のものが多い、こちらは3リットルサイズ

ほこり掃除だけでなく家全体のモップがけ……ズボラな私にとっては正直「めんどくさい」という感想しかないのですが、イタリア人はこれを2〜3日に1回、少ない人でも週1回程度の頻度で行います

その理由は「家はキレイな方が気持ちがいいから」。これ以上にまっとうな理由もありませんが、それにしても頻度が高すぎると思うのはきっと私だけではないはず。

キレイにするのは、当然ながら床だけではありません。例えばキッチンのコンロやシンクは食事が終わるたびにキレイに磨かれているし、ベッドのシーツは頻繁に取り替えぴしっとアイロンがかけられています。そう言えば以前、会社員をしていた頃に同僚とこんな会話をしたことがありました。

友人

私、新しいシーツに寝るの好きなのよね


鈴木

へえ、シーツ取り替えた日って気持ちいいもんね


友人

そうそう、だから毎日シーツ取り替えてアイロンもかけるのよ


鈴木

え、毎日? アイロンまで?


友人

そうよ、シーツにしわがあるの好きじゃないの


鈴木

もしかしてさ、靴下もアイロンかけてる?


友人

もちろんよ、どうせそんなに時間かからないし

「え、毎日シーツ変えてるの?」というところに度肝を抜かれましたが、当の同僚はさも当然と言わんばかりの表情。さすがにこれは極端な例ですが、それでも頻繁にシーツを取り替え、シワのないベッドに寝転がるのが好きというイタリア人は少なくありません

余談ですが、イタリアのコンロは拭き掃除がしやすいよう、ゴトクを外すとフラットになります

ゴトクを外すとこんな感じ

住宅とは少し話が逸れますが、先ほど話が出たアイロンがけもイタリア人が好きな作業のひとつ。シャツやブラウスはともかく、Tシャツやジーンズ、さらには下着、子供用の服まで毎日ピシッとアイロンをかけます。

そもそもジーンズや下着にアイロンが必要なのか……という議論はさておき、やはり服も「ピシッとしている方が気持ちがいいから」というのがその理由。イタリア人にとって掃除とアイロンがけは、もはや日課ともいえる作業なのです。

 

便器の隣にもうひとつ……これってナニ?

イタリアと日本の住宅の違い、次は設備について話をしてみましょう。日本人がイタリア人宅を訪れる際、一番困惑するのはおそらくこれではないでしょうか。

便器のようなものが2つ……?

右側の蓋が閉まっているほうは普通の便器。でも左側の便器のようなものはどう使うかわかりますか? 実はこれ、ビデなのです。住宅だけでなくホテルなどでも設置されているので、イタリア旅行の際に見かけたことがあるという人も多いかもしれません。

日本ではビデは女性が使うものというイメージですが、イタリアでは男女関係なく使います。例えばトイレのあとにお尻を洗ったり、寝る前に足や局部をさっと洗ってお風呂の代わりにしてしまうという使い方が一般的

お風呂に入らないと聞くと不潔に感じるかもしれませんが、日本に比べて乾燥しているイタリアでは、空気がさらりとしていて肌がベタつくことがあまりありません。そのため、わざわざ毎日シャワーを浴びず、ビデで必要な箇所だけをさっと洗って済ませてしまう人が多いのです。

外から帰ってきた子供の足を洗うのにも便利

 

イタリアの住宅は窓が小さい、その理由は?

もうひとつ、イタリアと日本の住宅で大きく異なる点を紹介しましょう。それは窓の大きさです。イタリアの住宅の窓は、日本に比べると小さいという特徴があります。

壁の面積に比べて、窓が小さいと思いませんか?

実はその理由は、建物自体の構造に起因します。日本はもともと木造建築が主流だったため柱を構造体とする文化があり、そのぶん窓を大きくできるという特徴があります。言葉だけだとわかりにくいので、図に表してみましょう。

日本の住宅は柱自体が構造体になる

それに比べ、イタリアを始めとするヨーロッパの住宅はもともと石造りのため、壁自体が構造体です。そのため壁がないと強度が保てず、構造的に窓が大きくできないというのが大きな違い。ただこれに関しては、日差しの強い地中海沿岸では夏の日差しを遮り、家の中を涼しく保つために窓や玄関を小さくするという理由もあるようです。

イタリアの住宅は壁が構造体

 

ルームシェアの多いイタリア、そこには切実な現状も……

部屋数の多いアパートや一軒家を複数人で借りて住むルームシェア。最近は日本でも増えてきましたが、イタリアではこのルームシェアをする人が非常に多いという特徴があります。特に20代の若い人はその傾向が顕著で、ほとんどが友人同士で住んでいるか、そうでなければ実家暮らしというのが個人的な印象です。

友人同士で住むのはいかにも楽しそうで、いい刺激にもなりそう。ですが、実はそこにはイタリアならではの切実な現状もあります。

2010年に起こった欧州経済危機により、ギリシアやスペインなどとともに深刻な状況と噂されたイタリア経済。最近は落ち着いてきたとはいえ、まだまだ安定しているとはいい難い状況にあります。イタリア人の平均月収は1,700ユーロ前後(約22万円)と言われていますが、20〜30代の若い人は月収が1,000ユーロ(約13万円)に満たない人も少なくありません

これに対して、ローマやミラノなどの大都市でアパートを借りようとすると、中心街から離れたワンルームでも600〜800ユーロ(約7.8〜11.4万円)が相場。当然ながら生活するのは難しく、ルームシェアに頼らざるを得ないという現状があるのです。

ローマのシェアハウス

かく言う私も、イタリアに引っ越して来た当初はローマでルームシェアのアパートに住んでいました。他の住人はみんなイタリア人の男だったけれど、リビングは定期的に掃除されていたり、毎日シャワーを浴びていると「ケイは日本人だね、毎日シャワー浴びてる」と言われたり……そのたびに日本との文化の違いを感じたものです。

もしもみなさんがイタリアに興味を持ち、留学してホームステイをしたり、長期滞在でルームシェアをするような機会があれば、ぜひイタリアの家の中をじっくりと眺めてみてください。思いもかけないようなところで、文化の違いを感じることがあるかもしれません。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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  • ※記事は現地事情に精通したライターが制作しておりますが、その国・地域の、すべての文化の紹介を保証するものではありません。

この記事を書いた人

鈴木 圭

鈴木 圭

イタリア・ミラノ在住、フリーライター。広告ディレクターや海外情報誌の編集者などを経て2012年にイタリアに移住。イタリア関連情報や海外旅行、ライフスタイルなどの分野を中心に活動中。旅行先の市場でヘンな食べ物を探すのが好き。「とりあえず食べてみよう」をモットーに生きてます。HPTwitterInstagram

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