アルゼンチンの家の理想は「絶対暗室」! 移民大国らしい地域色も

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移民大国アルゼンチンの家は、ドイツ系やイタリア系など、地元のルーツによって違いが出るようです。そしてシエスタ確保のための絶対遮光主義! その徹底ぶりもご紹介。

アイスショップは高級住宅街の証? アルゼンチン家あるある

こんにちは、奥川です。今月のテーマは「家」なので、実際にアルゼンチン人のお宅に突撃してみたいと思います。さっそく、ノックしてみましょう。

今回お家を紹介してくれるアントネラさん、僕の美人嫁ですね。僕自身は移住して3年目になりますが、住宅事情についてはあまり詳しくありません。そこで父親が大工である彼女から住宅事情について聞いてみました。 ※州によって、特徴や住宅事情が異なることはご了承ください。

後ろに見える箱みたいなのはカリファクトール(ヒーター)です。カリファクトールの近くに座る、もしくは立つアルゼンチン人の姿は冬の風物詩。

嫁

都市を除けば、多くの人は一軒家に住んでいるわ。私たちのように普通の一軒家に住む人がほとんどだけど、お金持ちの人たちは『カントリー』という集合住宅街に住んでいる

奥川

カントリーは、セキュリティ付きの住宅街だから部外者は入れないんだよね

嫁

そうよ。ネウケン州だと石油会社に勤めている人や政府の役人が住んでいるわね。ちょっとしたあるあるだけど、カントリー周辺は高級アイスクリームショップがありがち

アルゼンチン人なら、誰もが知っているアイスクリーム店『Grido』。アルゼンチンのアイスクリームはとっても濃厚で美味しいです。

アルゼンチンは老若男女に渡ってアイスクリームが大好き。町の至る所にアイスクリーム店があります。数あるアイスクリーム店の中でも、最も有名なのが庶民の味方『Grido』。Gridoはどこにでもありますが、少し高めのアイスクリーム店はカントリー周辺にありがち。確かに言われてみれば、その通りかも。

アルゼンチンの住宅事情の知識がついたところで、さっそく家の中を紹介しましょう。まずはキッチン。アルゼンチン料理といえばお肉が有名ですが、ピザやパイ、ケーキも日常的に調理されます。そのため、キッチンには大きなオーブンがついているのです

嫁

あなたの実家に行ったとき、オーブンがとても小さくてビックリしたわ


奥川

えっ? オーブンなんてないはずだけど


嫁

ついてたわよ。コンロのすぐ下にオーブンがついていたじゃない


奥川

あー! たぶんグリルだね。あれは主に魚を料理するんだよ


嫁

魚専用のオーブンなんだ! 面白いわね

また、お肉や野菜は切れ味抜群のナイフで切るため、あまり包丁を使わないのも特徴。もちろんあるにはありますが、普通の家庭料理で使われることは少ないです。

アルゼンチン人の家に訪れたら、ぜひ冷蔵庫をチェックしてみてください。高確率で、子どもの写真がプリントされたマグネットを発見できますよ。

マグネットは、子どもの誕生日パーティーの定番的お土産。子どもが主役の誕生日パーティーでは、参加者にお土産を渡すのが普通です。マグネットが人気の理由は、手ごろな価格でたくさん作れるから。お金がかかるイベントなんですよ……。

こちらはバーニョ(バスルーム)。州にもよりますが、基本的にトイレに紙を流すことは可能。ただ、シャワーの水圧は少々物足りないです。もちろん浴槽はついていません。

トイレの隣にある第2の便器みたいなもの気になりませんか? これはビデです。多くの家庭やホテルについていますが、使用率はそれほど高くないようです。友人に聞いてみました。

ビデを使う人はいるの?


友人

家にはあるけど、僕もふくめて誰も使ってないみたいだよ。なんか怖いじゃん


アミーゴ、僕もウォシュレットを一度も使ったことがない


友人

日本人はみんなウォシュレットに慣れているかと思っていたよ! お尻に水圧を当てがう恐怖は万国共通だな

※奥川さんは日本人でも少数派だと思います(編集部より)。

アルゼンチンの家あるある。左上から時計回りに、トイレットペーパーの中についてる携帯ティッシュ、袋の中に入った大量の袋、壁掛けフック。

奥川

読者の方はさ、家賃が気になると思うんだ


嫁

私たちは親戚の家を借りてるから、5,500アルゼンチンペソ(約2万円)と格安よ。ネウケン州だと9,000~10,000アルゼンチンペソ(約3.5万~4万円)が相場だと思う


奥川

リビング2つ+寝室2つの一軒家が約2万円で借りられるのは本当に助かる。家賃を抑えるために、親や親戚の持つ家を格安で借りる人が多いよね

僕たちは大人2人+幼児1人の計3人で生活しています。格安家賃+ほぼ自炊ということもあり、月25,000~30,000ペソ(約12万円)で過ごせているので、一人暮らしだと、もう少し安くで生活できるはずです。

 

日光の侵入を許すな! シエスタを守る「絶対暗室」

2階は嫁のサンクチュアリこと寝室です。アルゼンチンには、シエスタと呼ばれる長い昼休憩があります。シエスタ中は昼寝をする方が多いので、寝室は日光が入らない場所に設計されがち。さらに、シエスタガチ勢の嫁は窓に黒の画用紙を貼り、完全に日光を遮断しています

アルゼンチンの昼寝は4時間!? シエスタで回るラテンの夜型生活

シエスタの時間帯に撮影した写真。反対側には窓がついていないので、日光に邪魔されず思う存分昼寝できます。

嫁

実家はパパが建てたんだけど、やっぱりシエスタ中は日光が入らないように寝室設計しているのよ


奥川

建築士の友人もそう頼まれることが多いと言ってたもんな~

おもむろに横になり始める嫁。

また、親戚がいつでも泊まりに来れるよう、マットレスやベッドを余分に持っている家庭が多いです。僕の家は寝室が2つあるのですが、もともと1室は客室用で作られたそう。親戚や家族が泊まれるように準備しているのは、家族第一主義のアルゼンチンならでは。

義父母の家にあるオレンジとサクランボの木。乾燥したパタゴニア地方では、ブドウやレモンの木も人気です。

都市部を除けば、多くの住宅には庭があり、家庭栽培をしていることが多いです。庭で育てたハーブは料理に使い、果物でケーキ作りしたりと、まるで「どうぶつの森」(というゲーム)を思い出させる生活を送っています。

そして、忘れてはいけない存在がセキュリティ。基本的には、門とドアの2重構造。僕の家の場合は、門のカギ2個+ドアのカギ2個の計4個に加え、窓には格子がついています

アルゼンチンのドアは安全対策として、訪問者が引っ張ることができないように内開き、一方で日本は外開きのドアが多く、嫁が驚いたことがありました。

しかし、これだけ安全対策をしていても、泥棒が入るときは入っちゃいます。以前、同じ敷地内におばあちゃんが住んでいたのですが、電気修理屋を名乗る人物を家にあげてしまったところ大金を盗られてしまったのです。「知らない人は敷地内に入れない」、これは鉄の掟ですね。

伝統料理アサード(BBQ)を作るための釜「パリーシャ」です。アルゼンチンでは毎週日曜日にアサードをするので、パリーシャは一家に一台の必需品。肉のほか、ピザやハンバーグを焼いたりもしますよ。

 

一人暮らし経験者が少ない理由は、家族第一主義だから!?

毎週末に家族が集まる義父母の家の大テーブル、10人以上でテーブルを囲めます。

アルゼンチンでは、家族のつながりをとても大事にします。毎週日曜日に家族で行うアサードはもちろん、家族がランチと昼寝をともにできるシエスタも家族の絆作りに貢献していますよね。でも、何よりも重要なのが「家」。集まる場所があるからこそ、家族はひとつになれるのです。

誕生日会でのワンシーン。食事の後はリビングでダンスパーティー。

誕生日会でのワンシーン。食事の後はリビングでダンスパーティー。

家族・友人が同じ時間を共有するリビングはゆったりとしています。また、家の内側に玄関や、廊下がなく、ほかの部屋とリビングが直結しているのも特徴的。友人のフランコの家は、大勢でダンスができるほどリビングが広々としています。

家族を何よりも重要視する国民性のためなのか、一人暮らしをするアルゼンチン人は珍しいです。Universidad Argentina de la Empresaが行った調査により、18~35歳のアルゼンチン人の74.5%が両親と同居しているということが判明しました。

日本だと進学や就職を機に一人暮らしを始める方が多いですが、アルゼンチンでは同棲もしくは結婚を機に両親のもとを離れるのが一般的。実際に、一人暮らしを経験せずに新たな家庭を持つ方はたくさんいますし、また自身が家庭を持っても常に家族や親戚とは密接な関係にあるのです。

アルゼンチン宅では、家族の写真がたくさん飾られています。

家族を大切にする文化は家のなかにも見受けられます。アルゼンチン人にとって、家は単なる住まいではなく、家族や友人との距離をグッと近づける大切な場所なのです。

 

移民大国アルゼンチン、各州の家に見える『ルーツ』の特徴

©Hiroki Ogawa

最後に、嫁から聞いた面白い話を紹介しましょう。アルゼンチンでは、州によって家の特徴が異なるそうです。例えば、観光地のバリローチェはドイツの影響を色濃く受けた家が数多くあります。その理由は、ドイツ系とスイス系の移民が作り上げた町だから

色とりどりの住宅が並ぶブエノスアイレス州ラ・ボカ地区。/©Rod Waddington

ブエノスアイレス州ラ・ボカ地区はカラフルな住宅が並ぶことで有名。SNS映え確実なラ・ボカは、イタリア系移民の影響を受けています

移民で構成された国だからこそ、各国の特徴を備えた住宅が見られ、また同時に家族や血縁関係を大切にするのでしょう。アルゼンチンに訪れたら、ぜひ住宅にも注目してみてください。

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この記事を書いた人

奥川 駿平

奥川 駿平

1992年生まれ、福岡県古賀市育ち。アルゼンチン在住歴3年。美人アルゼンチン人嫁と結婚するために、新卒という大きすぎるブランドを捨ててアルゼンチンに移住。毎日マテ茶を飲むほどのマテ茶好きで、同世代で最もマテ茶を消費していると自称。今さらながら、Twitterにドはまりしています。

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