2018.03.12

ルワンダでコーヒーの花探し! 青年海外協力隊・弓田さんと行くフイエマウンテン

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ご存知でしたか? コーヒーの花って一年でたった2日しか咲かないそうです。そんな幻の花を探しに、ルワンダのフイエ・マウンテン・コーヒーへ。出会った人物は、地元のコーヒー農家を支援する、コーヒー愛が高じて海を渡った日本人男性でした。

ルワンダ在住のライター、タケダノリヒロさんにご紹介いただきます。

 

日本でも密かにブーム! ルワンダのシンボルはコーヒー

この記事が出る頃、日本はそろそろ桜の季節。でもルワンダでは「花を愛でる」という習慣はほとんどありません。「国花はなに?」と聞かれても、パッと思い浮かばないのが正直なところ。

しかし、一年間365日中で、たった2日間だけ咲く「幻の花」があるんです。それはルワンダの特産品でもあるコーヒーの花。そもそもコーヒーに花が咲くってことがびっくりですよね! 私も今回調べて、初めて知りました。そこで、まず、ルワンダの国章をご覧ください。

ルワンダの国章と国旗。

国章とは国家を象徴する紋章や徽章のこと。一般的に国旗よりもデザインが複雑で、生活様式や伝統などさまざまな情報を読み取ることができます。日本では慣例的に、皇室の菊の紋章が国章とされています。

そんな国章の左には主食の「モロコシ」、中央は結婚式で花嫁に贈られる伝統的なバスケット「アガセチェ」、そして右には「コーヒー」が描かれており、ルワンダにとってコーヒーがいかに重要な存在かが分かります。なお、紋章の下に書かれている「Ubumwe, Umurimo, Gukunda Igihugu」は 「団結、勤労、愛国心」という意味。色んな国の国章を見比べてみると、それぞれの違いが分かって面白いかもしれませんね。

アフリカ・ルワンダの朝食を調べたら節約して食べていなかった

粉末状のモロコシはお湯で溶いて、「イギコーマ」と呼ばれるおかゆとして食べられます。詳しくは上記のルワンダの朝食についての記事をご覧ください。

さて、実はルワンダのコーヒー(ルワンダコーヒー)はコーヒー愛好家の間では有名で、日本でも取り扱うお店が増えてきています。Twitterで「ルワンダ」と検索すると、ヒットするツイートの多くがそのコーヒーに関するもの。

国章にも描かれているし、日本をはじめ海外でも評価の高いコーヒー。その花であればこれはもうルワンダの「準国花」と言ってもいいかもしれませんね。そんな花を探すため、「フイエ・マウンテン・コーヒーツアー」に参加してきました。こちら、南部のフイエという都市で参加できるツアーで、コーヒーの栽培から精選処理、焙煎・製品化までの行程を学べます。料金は1人30USドル。

何しろ、一年間でたった2日間しか咲かない「幻の花」です。果たして見つかるのでしょうか……?

 

幻の花を探せ! コーヒーツアーに参加してみた

フイエは首都のキガリに次いで「ルワンダ第二の都市」と言われている街。

キガリからバスで3時間ほど南下したところにあります。

バス会社の客引きがせわしなく行き交うフイエのバスターミナル。

今回のツアーを案内してくれた方は、現地で青年海外協力隊としてコーヒー農家を支援している、弓田(ゆみた)淳也さん。31歳、静岡県出身。

私も協力隊だったので1年前からお世話になっており、こう見えて博識で頼りになるアニキです。写真はおちゃらけた感じですが、農業系の大学を卒業後、アメリカ・ハワイ島のコーヒー農園で農業研修を受け、静岡県牧之原市のカフェでの勤務経験もあります。生産から抽出までコーヒーを知り尽くしたスペシャリストという訳ですね!

そんな弓田さんにお願いして案内してもらった場所が、「フイエ・マウンテン・コーヒー」。旅行ガイドブックの定番『地球の歩き方』の東アフリカ版にも載っている、人気の観光スポットです。彼は近隣のコーヒー農家の支援をしているので、こちらのスタッフとも親交が深いのです。

フイエ・マウンテン・コーヒーの受付。

受付では、フイエの豆を使ったウェルカム・コーヒーをいただけます。

本場のコーヒーをいただけることもツアーの魅力。

タケダ

……うん、美味しい! (違いの分からない男)

 

弓田さんによると、ルワンダコーヒーの特徴は「ネーブルオレンジのような明るく柔らかな酸味」「青リンゴやマスカットのようなみずみずしい甘さ」と表現できるそうです。なんてお洒落な……。と、危ない危ない! すっかりコーヒーに夢中になっていて本来の目的を忘れるところでした! コーヒーの花について聞かなければ。

 

タケダ

農園に行ったら、コーヒーの花って見れますか?


弓田さん

いまは開花の時期ではないから、たぶん見れないですね

タケダ

ええぇ……!? じゃあ、わざわざフイエまで来たのに無駄足だったってこと……ですか……?


弓田さん

今年は9~10月中旬によく見られたんですが……でも、運が良ければまだ残ってるかも! いっしょに探してみましょう!

 

リサーチ不足を悔やむタケダ。

弓田さんの温かい励ましに背中を押され、ガイドさんとともにコーヒー農園に出発。

果たして花は見つかるのか……!?

 

幻の花探しに出発! 意外とすんなり…!?

さっそくツアースタート!

ガイドのアロイスさん(31歳)がコーヒーの起源などを丁寧に解説してくれます。

このボードに描かれている絵は、コーヒーの起源の一説。昔々、エチオピアに住んでいたヤギ飼いの青年は、ヤギたちが赤い実を食べて妙に興奮していることに気づきます。彼がその実を食べてみると頭がスッキリしたので、お寺の夜の修行などでも使われるようになり、その赤い実こそがコーヒーだった、というお話です。

なお、ヤギ飼いの名前は「カルディ」で、コーヒーショップ「KALDI」の由来になっています。

登山なみの坂道。トレッキングシューズを履いてきて良かった。

「ツアー」と聞いて楽観的に考えていましたが、想像以上にハード……!

これだけ名産品として知られるルワンダコーヒーですが、当のルワンダ人の多くは、あまり好んで飲みません。では、コーヒー農園で働くアロイスさんはどうなんだろう? 山道で息を切らしながらも聞いてみました。

 

タケダ

アロイスさんはコーヒー好きですか?


アロイスさん

私は大好きですよ!


タケダ

珍しいですね! 値段が高いし苦いからか、ルワンダの人はあまり飲まないって聞きますが


アロイスさん

私の場合は父の影響ですね。彼は神父で、比較的裕福な家庭だったのでコーヒーを飲む習慣がありました。幼い頃は『飲んだらダメだ』と言われていたんですが、父のいないスキを見計らってこっそり飲んだりしていましたね


タケダ

『ダメ』って言われると逆にやりたくなっちゃうものですよね。私も兄のゲームでこっそり遊んだりしていましたから

 

絶景! 自然が好きな人なら、この眺めだけでも十分楽しめます。

その後もさきほどのような坂道を20分ほど登り続けて、振り返るとこの見晴らしの良さ! ようやくコーヒーが栽培されているエリアに入ってきました。

完熟前の、緑色の実が付いたコーヒーの木。

その下に……

可憐な白い花!

弓田さん

あ、花あった

タケダ

あーほんとだ! かわいらしい花ですねー……って、これがコーヒーの花!?

弓田さん

はい

タケダ

ええぇ……!『幻の花』だと思ってたのにこんなにすぐ見つかるとは……

弓田さん

咲いているのは二日程度でも、いろんな木がバラバラに花を咲かせますからね。だから時期外れでもこうやって残ってることがあるんです

タケダ

なるほど……。でも一輪だけかぁ

弓田さん

写真持ってるのであとで送りますよ

 

弓田さん提供の写真。ルワンダでは9~10月中旬が開花シーズン。

花を見つけるという目的を無事に果たしたので、あとは楽しくツアー続行(もはやただの観光)。

不器用なタケダを心配そうに見守るアロイスさん。

ツアーでは、伝統的な方法を模した木の棒と土鍋を使った焙煎を体験できます。

いわゆる「コーヒー」のイメージとは程遠い緑色の生豆。

そしてこちらが、焙煎して茶色くなったもの。

コーヒーって、こうやってできてるのか! 焙煎したら香ばしくていい匂いが! コーヒーの香りって落ち着くし、それだけでハッピーな気分になりますよね。

 

弓田さんのルワンダ人とコーヒーへの想い

もともとはコーヒーにさほど関心がなかった私も、ツアーで学ぶにつれてだんだん興味が湧いてきました! ところで、弓田さんが仕事にしてしまうほどコーヒーにのめりこんだきっかけは何だったんだろう? 気になって聞いてみました。

タケダ

弓田さんは昔からコーヒーが好きだったんですか?

弓田さん

いえ、実はブラックコーヒーが飲めないくらい苦手だったんです

タケダ

ええ!?

弓田さん

でも、大学を卒業してハワイのコナコーヒー農園で働いたときに、初めて砂糖なしでも飲めたことに驚いて、コーヒーは産地の環境と生産者の努力次第で品質が大きく変わるということを知りました。それから日本に戻ってカフェで働く中で、気づいたんです

タケダ

……何に?

弓田さん

コーヒー豆がなければ、コーヒーはつくれない』ということに

 

コーヒーの花についた害虫を駆除する弓田さん。(写真は弓田さん提供)

タケダ

おお……当たり前ですが、改めて言われたらものすごく名言っぽい……。 だから『良いコーヒー豆』をつくることが大事なんですね。でも、ルワンダに来たきっかけは?

弓田さん

もともと国際協力には関心があったんですが、発展途上国で生産されることが多いコーヒーであれば、自分の経験を活かして現地のひとびとに貢献できると考えたためですね

 

ツアーコース周辺には羊やヤギの姿が。ルワンダもまだまだ自然が残るのどかな国です。

タケダ

それで青年海外協力隊に参加されたんですね。活動はコーヒー農家の支援ということですが、具体的にはどのような内容なんですか?

弓田さん

コーヒー農家をまわって、収量と品質を上げるサポートをしています。指導というより協働ですね。一緒に作業を行い、その中で改善してほしいところを伝えていく、という感じです。現地の農家は、きちんと生産を管理できれば収量がほぼ2倍になる可能性があるんです

タケダ

2倍! それはすごいですね

 

鮮やかに熟した収穫期のコーヒーチェリー。(写真は弓田さん提供)

弓田さん

でも、それもそのはずで、肥料やハサミなど器具が足りていないという充実しているとはいえない環境や、栽培や加工について情報が不足しています。だから、フイエでトップクラスの農家でも、中南米や南米の平均的な農家の収量に届くかどうかというところなんですよ

タケダ

環境の分だけ、伸びしろがあるんですね。何軒くらいの農家と活動しているんですか?

弓田さん

いま見ているのは4軒です。ただ、一番近いところでもバスと徒歩(登山)で1時間半かかるので、各農家をまわるのはなかなか大変ですね

タケダ

1時間半! それは遠い……! ルワンダのバスは日本ほど快適じゃないですし、この山道だとそれだけで疲れてしまいそうですね

弓田さん

確かに遠いですが、それを望んでルワンダに来たのでどんなに大変でも行くようにしています。産地の様子は、カフェで働いているだけでは分からなかったことですから

 

ツアーのゴール地点に到着! 道のりがハードだっただけに、達成感もひとしおです。

タケダ

協力隊の任期は残り1年ということですが、今後の目標はありますか?

弓田さん

目標ではないかもしれませんが、少しでも多くの現地の人たちと交流することです。任期は合計で2年間ですが、終わった後も長くお付き合いをつづけたい。ここでしかできない経験は、将来絶対に大きな何かにつながるはず。たとえルワンダを離れたとしても、彼らに恩返しをしたいという気持ちを生涯持ち続けることができれば、倒れそうになっても踏ん張る理由になると思うので

 

コーヒー農家の方と弓田さん。

タケダ

日本とルワンダ、遠く離れた国同士でも、顔と名前が思い浮かぶ誰かがいればその人のために頑張れますよね。ルワンダコーヒーが世界中でもっと愛されるよう、弓田さんとコーヒー農家のみなさんに期待しています! ありがとうございました!

 

ということで、無事に「幻の花」を拝むことができた今回のコーヒーツアー。ただツアーを満喫しただけだけでなく、思いがけず、現地の人々との交流を何よりも大切にする、弓田さんのライフストーリーまで伺うことができました。ふだん私たちがカフェや家庭で何気なく飲んでいる一杯のコーヒーにも、世界中でたくさんの人たちがかかわっていて、色んな想いが詰まっているんですね。

ルワンダのスーパーなどで手に入るフイエ・マウンテン・コーヒー(100g)。

みなさんも店頭でコーヒーを見つけたら、「このコーヒーはどこから来たんだろう?」と、海の向こうに想いを馳せてみてはいかがでしょうか。ルワンダ産だったら、もしかしたら弓田さんの手によるものかもしれませんよ!

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この記事を書いた人

タケダ ノリヒロ

タケダ ノリヒロ

日本の大手食品メーカーで3年勤務した後、退職して青年海外協力隊としてルワンダの農村で2年間活動。18年夏から当国でスタディツアーを運営。身長と体重と生まれた年がテイラー・スウィフトと同じです。個人ブログ『タケダノリヒロ.com』(月間PV12万)/ルワンダ情報専門サイト『ルワンダノオト』編集長/Twitterはこちら

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