マルゲリータの由来って? ピザとデイジーとイタリア国民に愛された王妃の関係

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※本記事は特集『海外の国花』、イタリアからお送りします。

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イタリアの国花に選ばれた小さな花、実はピザとも関係あり!?

イタリアの国花はデージー。日本ではヒナギク(雛菊)やチョウメイギク(長命菊)とも呼ばれ、日本でも花壇や芝生などでよく見かける小さな可愛らしい花です。植物に詳しくない人でも、写真を見れば「ああ、見たことがある」となるのではないでしょうか。

デージーはこんな花。ああ、見たことあるやつだ。

ちなみにイタリア語では「マルゲリータ(Margherita)」。似た花であるマーガレットも同じ単語ですが、国花の場合はデージーを指すのが一般的です。ちなみに、日本の国花であるサクラやキクと同じように、法律などで条文化されたものではなく、「事実上」国花として扱われています

デージーがイタリアの国花とされた由来にはさまざまな説がありますが、そのひとつが19世紀のイタリア王国の王妃にちなんだというもの。彼女の名前はマルゲリータ・マリア・テレーザ・ジョヴァンナ(Margherita Maria Teresa Giovanna)といい、芸術文化の普及や慈善活動に熱心に取り組み、当時の国民からも非常に人気の高かった人物なのだとか。そのため、彼女と同じ名前の花であるデージー(くどいようですが、イタリア語でマルゲリータです)を、敬愛の意味を込めて国花としたようです。

マルゲリータ・マリア・テレーザ・ジョヴァンナ王妃(1851-1926)。

さて、マルゲリータと聞くとほとんどの人は、別のものを想像するのではないでしょうか

そうそうこれ。イタリア人に聞いてもだいたいこれを想像すると思います。

言わずと知れた、ピッツァ・マルゲリータです。イタリア料理でも定番中の定番ですが、実はこれもマルゲリータ王妃に由来するもの。諸説ありますが、ナポリのピッツァ職人が国王ウンベルト1世とマルゲリータ王妃の夫妻をもてなすため、イタリアの国旗の色である赤・白・緑を模して作ったピッツァを王妃が気に入ったというのが有力な説のようです。

このほか、イタリアの老舗自転車メーカーである「ビアンキ(Bianchi)」が歴史上初の女性用自転車を王妃に献上したとか、同社のブランドカラーである空色は王妃の目の色をモチーフにしているとか、なにかとトピックの多いマルゲリータ王妃。こうしたエピソードの多さからも、国民から慕われていたことがうかがえます。

 

イタリア人に聞いてみました、国花知っていますか?

さて、意外といい話が込められていたイタリアの国花デージー。イタリア人にとってはどのような意味を持つ花なのでしょうか。ちょっと友人に聞いてみました。

 

鈴木

チャオ、元気? イタリアの国花って知ってる?

友人

なにそれ、知らない

鈴木

え……デージーって聞いたけど、違うの?

友人

うーん、聞いたことない。イタリアに国花なんてないんじゃないの?

 

というわけで、残念ながら撃沈しました。

このあと6人の友人に聞いてみたのですが、だいたい答えは「知らない」「そんなものはない」のどちらか。一応、「多分デージーだと思う」「西洋ヤマモモでしょ?」という答えがそれぞれ1人ずつあったことを記しておきます(ちなみに西洋ヤマモモは国木)。日本人にとってのサクラやキクのような存在をイメージしていましたが、イタリア人には残念ながら、あんまり認知度は高くないようです。

 

イタリアにはデージーが生えている? 探しに行ってきました

イタリア人からの認知度も低く、そもそも国花としても認識されていないデージー。あまりに影が薄くて不憫になってきたので、ちょっと近くの公園に探しに行ってみました。

この公園でデージーを探してみます。ヒゲが見苦しくご迷惑をおかけします。

出かけたのはミラノ北部にあるパルコ・ノルド・ミラノ(直訳するとミラノ北公園……そのまんまですね)。公園といっても、その大きさは代々木公園のだいたい12倍くらい。ミラノを含め近郊の5つの市にまたがっている巨大な公園で、敷地内には森まであります。植物を探すにはうってつけの場所といっていいでしょう。ここならすぐに見つかるに違いない……。

場所を変えながら、かなり地道に探してみます。

と思っていたのですが、実はこれが意外と難しい作業でした。公園内をうろうろとさまよってみるも、まったく見つかる気配がない。スマホで「デージー 花」と画像検索をかけて確認するも、やっぱり辺りにそれらしい花がありません。

タンポポ(多分)はよく見かけるのですが……。

白い花を見つけて近寄ってみるも、これはシロツメクサ(多分)。違う、君じゃない。

正直なところ、デージーなんて世界中どこでも生えている雑草くらいに思っていたので、まったく見かけないなんてこと自体が驚きでした。やばい、このままじゃ帰れない。あと記事にならない。

そんなことを考えながら1時間ほど歩いたある時……。

あっ……!

あった!

ようやく見つけました。1時間歩いてたったの3株しかも同じ場所。あんまり記事映えしないしょぼい結果になりましたが、なんとなく「あんまりない」ってことはお分かりいただけたのではないでしょうか。

自宅に帰って調べてみたところ、一応公園内にデージーは存在するらしいということが分かりました(公園のホームページの「敷地内で見られる植物」のページに書いてあった)。なので、もしかしたら探す場所や季節によってはもっと見つけることができたのかも。

©Quercus acuta

ただ、デージーばかりを集めた場所というのは特になく、サクラの木で並木道がつくられる日本とは国花に対してかなり温度差がある感じ。木として存在感のあるサクラや仏花として日常的に目にすることの多いキクと、道端に生えているだけのデージーでは、そもそも目にする(認識する)頻度が違うという理由もあるのかもしれません。

というわけで、イタリアではいまいち認知度の低いデージー。あまりの扱いの悪さに、最初は「本当に国花なのか?」と思ったこともありましたが、調べていくとイタリアの歴史にまつわる素敵なエピソードを持った花であることも分かりました。こうやって人々にその国の歴史や文化を伝えてくれる、そういう意味では「国を象徴する花」にふさわしいのかもしれません。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

鈴木 圭

鈴木 圭

イタリア・ミラノ在住、フリーライター。広告ディレクターや海外情報誌の編集者などを経て2012年にイタリアに移住。イタリア関連情報や海外旅行、ライフスタイルなどの分野を中心に活動中。旅行先の市場でヘンな食べ物を探すのが好き。「とりあえず食べてみよう」をモットーに生きてます。HPTwitterInstagram

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