2018.05.30

ファーストフードが二極化? コカコーラ発祥地で見るアメリカの食文化の変革

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コカコーラ発祥の地、アトランタ

ニューヨークやロサンゼルスには行ったことがあるけど、アトランタってピンと来ない、という方が多いのでは? アメリカ南部最大の都市であるアトランタは、数年前にハリウッド映画のプロダクションの一部が移されたこともあり、さらに開発が進んでいます。他州からの移住者や観光客が増え、週末には、何かしら大きなフェスティバルあり、賑わいをみせています。

ただ、アメリカの奴隷制度史上、この街は最も暗く長い歴史を歩んできており、未だ人種差別が根深く残っているのが現実。1865年、奴隷制度撤廃などを巡る南北戦争で、兵士として徴兵され戦っていた、ジョン・ペンバートンという人物。その際に負った傷が深く、モルヒネを常用するようになります。薬剤師である彼は、自らの中毒症状を緩和させるため、新たに薬の開発に乗り出しました。

そして、誕生したのが「コカワイン」。当時、コカワインは薬として、薬局でしか販売されていませんでしたが、彼の死後、時を経て清涼飲料水に改良され、全世界へ進出。コカ・コーラとして、その後、100年以上も人々に愛され続けています。しかし、そのレシピの全容を知るものは、世界にたった2人だけなんだとか。そんなトップシークレットのレシピが、とある場所の金庫で厳重に保管されています

その場所というのが、こちら。ジョン・ペンバートンの活動拠点でもあり、コカコーラ発祥の地となったアトランタにある、『World of Coca-Cola』という博物館。現地観光には外せないアクティビティのひとつとなっています。1990年、アンダーグラウンドと呼ばれる地域にオープンしたのち、2007年に現在の位置に移ってリニューアル。コカコーラの歴史、そして、アメリカをはじめとした各国のボトルや広告のデザインなどが展示されています。

プロモーション用として使用されてきた、歴代のアート作品もズラリ。これらのセンセーショナルなアート作品がコカコーラの市場拡大に、重要な役割を果たしてきたことは、いうまでもありません。

そして、この博物館の最大の魅力が、各国のコカコーラやファンタを試飲できるドリンクバー。レモン味やライム味のさっぱりコーラや、パッションフルーツ系のファンタなど、日本にはない味がズラリ。

さらに、館内にはお土産ブースもあり、ショッピングも楽しめます。周辺の施設も、観光用に整備されていて、世界最大の水族館である『ジョージア水族館』、そして1996年アトランタ五輪の際に近代オリンピック100周年を記念してつくられた『オリンピックパーク』、そのほか、CNNセンターや観覧車などが徒歩圏内にあるので、一日のんびりと散策できます。

さて、世界中の人々に愛され続けているコカコーラ。実際、アメリカ人の食事は、ハンバーガー片手にコーラが基本中の基本。ハンバーガーは、もちろんホームメイドでも、レストランのものでもなく、ファーストフード店のもの。驚くことにアメリカでは、毎日の食事をファーストフード店で済ませる人が多いのです。その数、推定5000万人(参照:Fast Food Industry Analysis 2018 – Cost & Trends)。ファーストフード店は、現在、アメリカ全土で20万件以上あるといわれています。このようにファーストフードが一大産業であるアメリカでは、地域色やこだわりのメニューを前面に出すなどして、他店との差別化をはかった多種多様なお店が存在しています。

 

アメリカ広し、ファーストフード店にも「地域色」がある

アメリカでは、マクドナルドの隣にバーガーキング、さらにその隣にウエンディーズ、KFC、タコベル……と軒を連ねる光景なんてザラ。そんな世界クラスのチェーン店はさておき、ここでは、アメリカ南部発祥の人気店を紹介していきたいと思います。

 

四角形の安いハンバーガーがウリ!『Krystal』

テネシー州発祥の『Krystal』。ちなみにニューヨークなど北のほうに行くと、Krystalは姿を消し、この手の四角系のハンバーガーを提供する店は『White Castle』に取って代わります。White Castleは、1921年にオープンしたアメリカ最初のファーストフード店。この2つのファーストフード店は、安くて、小さいハンバーガーがウリ。店写真の窓に張り出されているポスターの通り、$2 (約220円)でハンバーガ2つとポテトのコンボがゲットできてしまいます。

Krystalのハンバーガー、縁が取られ正方形になっているバンが特徴的。

White Castleのスライダーと呼ばれるハンバーガー、その小ささがよく分かる。(©ben britten)

 

40種類以上あるミルクシェイクが自慢! 『Cook Out』

そして、ここ3年ほどで頭角を現してきたのが、ノースキャロライナ州発の『Cook Out』。アトランタにも、新店舗がどんどんオープンしています。

Cook Outは、冷凍保存しない新鮮な肉を使ったハンバーガー、そして40種類以上もあるミルクシェイクが自慢。ちなみに、冷凍保存か否か、そんなこだわりをもっているアメリカ人には会ったことがないのですが、新鮮さを全面に出すことで他店との差別化を図っています。

 

打倒KFCのケイジャンチキン! 『Popeyes』

KFCに対抗し、あえて同じ土俵に独自のレシピで挑んだ、ルイジアナ州はニューオリンズ発の『Popeyes』。

ケイジャン料理を彷彿させるスパイシーなフライドチキンと、ビスケット。ビスケットは、フライドチキンにはマストなサイドメニュー(©Mike Mozart)

ニューオリンズ発祥らしく、フライドシュリンプ、ケイジャン風フレンチフライ、ジャンバラヤも扱っています。

辛いスパイスを活かしたケイジャン料理の例(©Quinn Dombrowski)

ケイジャン料理とは、18世紀半ばにカナダ南東部の旧フランス領アカディアから、ミシシッピ川河口に移住してきたフランス系住民による郷土料理。地元の食材に、香辛料をふんだんに使っているのが特徴。なお、Popeyesの創業者は、ケイジャンレストラン 『Copeland’s』もオープンさせ、アメリカ南部でチェーン展開しています。ガンボなど代表的なメニューの他に、ケイジャン料理ならではの、ワニやカエルの肉を扱っている店舗もあります

 

アトランタ生まれの鶏肉オンリーのユニーク・チェーン!『Chick Fil-A』

アトランタ発祥の、チックフィルA。鶏肉のみを使ったハンバーガーと、厚切りのワッフルカットのフライドポテト、そして、牛肉を風刺したコマーシャルで確立したポジションは、他店の追随を許しません。しかも、大半のお店が毎日営業という中で、日曜は定休日というユニークなファーストフード店。

メニューはすべてチキン。

ユーモラスな牛が出てくる、20年以上つづくチックフィルAの牛肉風刺CM。

 

アトランタが誇る、世界最大のドライブインファーストフード『The Varsity』

1928年にオープンした老舗、『The Varsity』。ダウンタウンにあるこの店舗は、第一号店にして、店内には800席、駐車場には600台の車が収容可能な世界最大のドライブイン。

ドライブインは、ドライブスルーと違って、所定の位置に車を止めると、外で待機していた店員が
駆けよってきて注文をとってくれます。その注文表を店内へ届け、しばらくするとトレイに注文した品を乗せて戻ってくるという、徹底したアナログシステム。

トレイには、ケチャップやマスタードものっていて、車の窓に装着できるようになっています。トレイをテーブル代わりにし、食べ終わったら店員を呼んで、トレイを回収してもらうため、車の外に出る必要はありません。

もちろん、店内で注文、食事も可能です。店員は「いらっしゃいませ」がわりに「What’ll ya have? 」「What’ll ya have? 」(何を注文する?)と南部訛りの英語で、出迎えてくれます。

人気メニューはホットドッグ、オニオンリング。ホットドッグは、プレーンそしてチリドッグのほか、写真のようにコールスローがのった3種類があります。お好みで、チーズを足すこともできます。

アトランタ観光の名所でもある『The Varsity』。広い店内には、アイスクリームとお土産ブースもあります。

 

番外編、ファーストフードではないけどランドマーク的存在『Waffle House』

最後に、ファーストフード店ではないのですが、同じくアトランタ発祥で、ランドマーク的な存在のお店が、24時間365日オープンの『Waffle House』。アトランタをドライブしていると、この黄色いサインがあちこちに出てきます。

なんせ、アトランタは、南部最大の都市といってもまだまだ田舎。24時間オープンのレストランは、少なく、値段も高いのが現状。庶民派のWaffle Houseは、日曜の朝は教会に行く人達で、週末の深夜はクラブ帰りの人達でごった返しています。地元の人なら誰でも一度は訪れたことがあるはず。お店の中にはジュークボックスが置いてあるなど、古き良き南部の雰囲気を味わえます。

アメリカは広く、ファーストフード店といえど地域毎に特色があるので、ローカルならではのお店をリサーチして行ってみるのもいいかもしれません。

 

高まる需要に増えるオーガニック専門店、従来のスーパーにも特設コーナーが

南部のファーストフード店を紹介してきましたが、近年ではその真逆の食文化が、徐々にマーケットを拡大させています。有機栽培野菜や、ホルモン剤なしで育てられた肉や魚、添加物や化学調味料を使っていない加工食品のヘルシーフードです。『Whole Foods』や『Trader Joe’s』など、こういった健康志向食品を専門に取り扱うスーパーが増え、また特化している訳ではない従来のスーパーでも、有機栽培野菜コーナーなどが設けられてきています。

代表的な健康志向のオーガニック専門スーパー。

こういったスーパーは、食材だけでなく、化学薬品や保存料を使っていない自然化粧品、洗剤やコットンなどの日用品も充実。オーガニックや健康志向に徹した商品が並んでいます。

アトランタ発の、ヘルシーフード店も誕生しています。スムージー店『Arden Garden』。

不要な添加物を加えないスムージーで、果物や野菜を多く摂って健康になろうという趣旨のブランドです。1995年に創業以来、ここ2~3年で人気が高まり、店舗や取り扱い店が急速に増えています。Arden Garden店内では、注文毎に、目の前のジューサーでスムージーをつくってくれます。自分の好きな果物や、野菜を選ぶこともできます。

しかし、こういったオーガニックや健康志向に力を入れているお店は単価が高く、低所得者層にとっては敷居が高いのが現状。よって、アメリカの食文化が健康被害をもたらすことに気づいた、裕福層が主な客層なのですが、最近ではヒッピーカルチャーの若者の間でも、ヘルシーフード志向が強くなっています。それも、肉や魚を食べないベジタリアンや、卵や乳製品も口にしないビーガンと枝別れしており、その証拠に、それぞれの専門レストランやArden Gardenの店舗もヒッピーカルチャーがベースにあるエリアで展開しています。

ビーガン&ベジタリアン向け専門レストラン、イメージカラーはグリーン。

 

ついにファーストフード店も健康志向に

Chipotleの店内。

このヘルシーブームを受けて、健康志向のファーストフード店も増えてきました。日本にもフランチャイズ展開しているハンバーガーチェーン店『Shake Shack』、メキシカン料理のファーストフード店『Chipotle』などでは、有機栽培野菜、ホルモン剤を使用せず育てられた牛、豚、鶏肉のみを使っています。もちろん、他のファーストフード店よりも単価が高いのですが、連日行列ができるほど人気ぶりです。

現在、アメリカのファーストフード業界が劇的な変化を遂げようとしています。従来の「安さ」「速さ」よりも、単価が多少高くても、メニューの「クオリティー」がもとめられるようになったからです。さらには、ベジタリアン、ビーガン向けのメニューオプションも必要です。とはいえ、貧富の差が大きいアメリカ社会では、低所得者層のため、「安さ」を無視したファーストフード店もありえません。よって、「安さ」または「クオリティー」を追求した2極化が、さらに進むでしょう。

 

健康志向に目覚めたアメリカ人の間で囁かれる都市伝説とは

若い世代の健康志向は、本当に喜ばしいこと。とにかく、砂糖をドカドカ使い、塩をふんだんにふりかけ、コカコーラなどのソーダー類をガブ飲みし、ファーストフードを毎食食べる。これで健康を害さないわけがありません。ついに倒れて、病院へ運ばれるも、医療保険がなく、支払い能力もないと見なされれば、処置してもらえず、ただ死を待つだけ。

先のオバマ元大統領が、従来の保険制度を見直し、国民全員を強制的に保険に加入させる「オバマケア」なるものを制定しましたが、低所得者階級、フリーターや自営業の人にとっては保険料が高く、未だに保険を持たない人が多いのです。そもそも、保険に加入していてもアメリカの医療費はとんでもなく高く、自己負担額も大きい上に、年度毎に50万円は、自腹。倒れて、救急病院に運ばれ、10~20万円を支払ったところで、医者の役割は、患者の症状を軽くすることであり、処方箋を出されて終わり。こういった、頼ることのできない医療制度が背景にあるからこそ、健康を意識する人が多くなってきたのでしょう

先日、日本でのガンに関する学会において、アメリカ産の牛肉から、日本が使っている600倍のホルモン剤が検出された」という結果が出ました(参照:ビジネスジャーナル)。600倍。恐ろしい数字です。また、アメリカには、「卵からかえったひなをホルモン剤で成長させて、1週間後には市場に出す」というものや、「砂糖業界は砂糖が人体へ及ぼす悪影響の調査を打ち切った上、調査結果を闇に葬った」という通説があります。健康に害を与える食品の調査や教育をせず、これらをどんどん流通させ、健康被害が出ても保険制度でカバーすることもなし。これらは「増え続けるアメリカの人口を調整するための政府の陰謀だ」と、まことしやかに囁かれています。

今回、アトランタを中心とする南部発祥のファーストフードから、現在のアメリカの食文化までふれてきましたが、いかがだったでしょうか。最後に、もう一つ都市伝説を。とある飲料メーカー社の社長は、自分の子供には、決して自社飲料を飲ませなかったのだとか。もちろん、都市伝説で、真実のほどはわかりませんが。

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この記事を書いた人

池尻 安希

池尻 安希

米国アトランタ在住ストリートカルチャージャーナリスト&コーディネーター。龍谷大学を卒業後、某横乗り系雑誌出版社を経て、渡米。 日本のストリート系雑誌や音楽雑誌から、アメリカのヒップホップ雑誌「XXL」まで、そして地域密着型PHOTO/VIDEOGRAPHERとして、幅広く活躍。アトランタツアーも行なっています!Instagramはこちら

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