2018.02.19

イタリアの通勤電車はゆったり快適、しかし多すぎるストライキにはご用心

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イタリアの通勤は日本に似て、電車(地下鉄)が中心。しかし、出社時間や職場が分散されているためか、日本のような通勤ラッシュはまず見られないそうです。しかも在住者なら定期券で市内ならどこでも行けちゃう。が、イタリアならではのリスク、「ストライキ」にはご用心……!

イタリア在住のライター、鈴木圭さんにご紹介いただきます。

 

ラッシュ時も電車の中はゆったり、イタリアの通勤事情

イタリアの通勤事情で日本と大きく違うのは、何といっても通勤ラッシュが存在しないこと

いや、実際にはあるんですが、日本と比べるとマイルドすぎて「ラッシュ」なんて感覚はどこにもありません。

朝のミラノ中央駅の風景。それなりに人はいますが、実際に地下鉄に乗ってみるとかなりゆとりがあります。

感覚的には日本の通勤ラッシュの6〜7割くらいの混雑量がイタリアの朝の通勤ラッシュくらい。東京や大阪の通勤ラッシュのように身動きができないなんてことはなく、もちろん押し屋と呼ばれる駅員の存在もありません。交通手段は地下鉄のほか、バスやトラム(路面電車)などもありますが、だいたい混雑の度合いはだいたい同じような感じ。

ミラノ市内を走るトラム。バスと違って交通渋滞もなく便利です。

中にはベビーカーを押して乗ってくる人もいるほどです。イタリアはそもそも子どもの存在に対して寛容で、地下鉄やバスが混んでいるからといって折りたたむという発想はありません。先に乗っている人たちも「あ、ベビーカー来たぞ」という感じで少しずつ詰めてスペースを開けてくれます。朝の通勤時間帯でもそうした余裕があると考えると、その混雑具合がお分かりいただけるのではないでしょうか。

こちらも朝のミラノ中央駅。人が多い時間帯ではあるものの、やはり日本のラッシュと比べると人の姿は少なめ。

 

通勤ラッシュが「ゆるい」のは通勤時間と場所がバラけているから?

私が住んでいるミラノの人口はおよそ130万人。周囲には衛星都市も多いので、近郊を含む都市圏人口はおよそ520万人とイタリアの中では最大ですが、それでも朝夕の電車がそれほど混んでいる印象はありません(もちろん、東京や大阪と比べてということですが)。

個人的な意見ですが、勤務地が、23区に集中する東京と、市内のほかに郊外や周辺の衛星都市などに分散しているミラノとの違いが出ているのかなという印象。もちろん、人口差もあると思いますが。

ホームを見ても、やっぱり人の数は東京などに比べると少なめ。

ほかに通勤ラッシュがゆるい理由としては、通勤時間帯がバラけていることもあげられます。一般的に、オフィスで働いている人は8〜9時頃の始業、ショップで働いている人は9〜10時頃の始業が多いため、自然と通勤時間帯はバラけることになります。「始業30分前に出社して準備を」みたいなプレッシャーもないため、みんなだいたい出社するのは始業直前。結果として、うまく通勤時間の分散ができているのかもしれません

ちなみに、イタリアでは残業する人があまりいないせいか、夕方のラッシュも8時ごろにはすっかり落ち着きます。まったく残業がないわけではないのですが、仕事するくらいならさっさと帰って美味しいものでも食べたいと考えるのがイタリア人のメンタリティ。このあたりも、比較的遅い時間でも混み合う日本の通勤事情とは、かなり違うといえるのではないでしょうか。

夜10時ともなると、地下鉄ホームはこのくらいがらがら。とはいえ終電は0時すぎまで運行しています。

というわけで、日本の大都市に比べるとイタリアの通勤はかなり楽という印象。特に東京や大阪に住んだ経験のある人なら「これがラッシュなの?」と拍子抜けしてしまうかもしれません。

 

どこまで乗っても同一料金! イタリアの定期は休日にも便利

もうひとつ、日本とイタリアで大きく違うものが定期券です。

こちらがミラノの定期券。都市によってカードが異なり、直接1ヶ月分の定期を直接チャージできる方式です。

日本では通常、乗車する区間や路線を指定して購入しますが、イタリアでは市内であれば同一料金で地下鉄、バス、トラムの全てが乗り放題になります。1ヶ月の定期であれば1日の乗車回数の制限もなく土日も使えるため、休日の外出や仕事帰りにどこかに立ち寄りたいときも便利。さらに、料金はミラノの場合で1ヶ月35ユーロ(およそ4,500円)と、とてもリーズナブルです(残念ながら在住者でないと購入できないため、観光用には使えません)。

【出典】ATM(https://www.atm.it/it/Pagine/default.aspx)

これがミラノの地下鉄と近郊列車の路線図。グレーの枠内が市内扱いのエリアです。

ただ、イタリアでは日本のように交通費が出る企業はごくまれ。そのため、仕事に使うとはいえ自分で購入しなければいけないという点はあります。35ユーロなら文句もないんですけどね。

余談になりますが、イタリアの企業では交通費が出ない代わりに、レストランチケットという券が支給されます。これはレストランなどで外食する際に金券として使えるチケットで、ランチ代が支給されているようなものと考えると分かりやすいかもしれません。1日出勤するごとに1枚支給され、1枚あたりの額面は企業の待遇や立地によって異なりますが、およそ5〜10ユーロ(約650〜1300円)程度のことが多いようです。

レストランの支払いだけでなく、スーパーの買い物にも使えるので便利。

 

大都市の交通網は大混乱! 頻繁に行われるストライキ

通勤ラッシュはほとんどなく、さらに定期も使い放題。いいところばかりを書いてきましたが、イタリアの通勤にも厄介なことはあります。それがストライキの存在です。

日本ではまれなのであまり馴染みがないかもしれませんが、イタリアの交通機関はホントによくストライキを行います。頻度は都市によっても異なりますが、だいたい2〜3ヶ月に1度くらいでしょうか(なので、非常に頻繁という印象です)。

ストライキの日は地下鉄、バス、トラム全てに影響が出ます。

ストライキの期間は基本的に1日だけで、通常は1週間前くらいまでにニュースや駅のアナウンスなどで告知されます。時間帯も1日中やるわけではなく、9〜16時、18時〜終電までなどのように、通勤時間を外して行われることがほとんど。イメージ的には、震災後の日本の計画停電の感覚に近いでしょうか。

一応、通勤する人に配慮しているようにも聞こえますが、結局のところ運行車両が間引きされたり、ダイヤが大幅に乱れたりするため、通勤する人たちにとって迷惑な話であることには変わりません。ストライキがあるからといって遅刻するわけにもいかないので、早めに家を出ないといけないし、遅くなると家に帰れなくなってしまうので、残業せず定時にきっちりと会社を出る必要があるなど、やっぱり面倒。

ちなみに、ショップやレストランなどで働く人は始業時間が遅いため、電車が運行している間に職場の近くまで行き、始業までどこかで時間をつぶすなんてことになります。

バスやトラムの待ち時間を示す電光掲示場。ストライキの日はこの時間表示が消えます……。

さらに、ストライキの日は公共の交通機関を嫌って車通勤の人が増えるため、さらに交通網は混乱するという悪循環も。そんなに頻繁にストライキをして、交通機関の職員の待遇が改善されているのかは不明ですが(そもそもそんなに待遇が悪そうにも見えませんが……)、それでも定期的に行われるのです。

こんな感じで、イタリアの通勤はおおむね快適なものの、ストライキだけはほんとうに厄介。ただ、これも労働者の権利ではあるので、人々は文句をいいながらもしぶしぶ受け入れている感があります。

©Mailander00

ちなみに、市内の交通機関以外にも、長距離列車や飛行機がストライキを行うこともあります。そのため、イタリア旅行を計画している場合、特に日程の余裕がない時は、出発前に旅行代理店や各都市のホームページなどでストライキがないか、念のため確認しておいたほうがいいかもしれません。

そしてもし、不運にもストライキと重なってしまったら……きっぱり気分を切り替えて、できる範囲で楽しむ方法を見つけることをおすすめします。イタリアは日本に比べると何事もスムーズにはいかない国なので、この「きっぱり気分を切り替える」はとても大切なこと。「イタリアらしい体験ができた」くらいに考えておくと、きっと楽しい旅になりますよ。

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この記事を書いた人

鈴木 圭

鈴木 圭

イタリア・ミラノ在住、フリーライター。広告ディレクターや海外情報誌の編集者などを経て2012年にイタリアに移住。イタリア関連情報や海外旅行、ライフスタイルなどの分野を中心に活動中。旅行先の市場でヘンな食べ物を探すのが好き。「とりあえず食べてみよう」をモットーに生きてます。HPTwitterInstagram

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