タイ人なら誰でも自分の”色”を知っている!黄色好きに見る王室への敬愛

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

※本記事は特集『海外の色』、タイからお送りします。

クリックorタップでタイ説明

 

タイのナショナルカラー、しいて挙げればは国旗の赤色?

タイを代表するカラーは何色かというと、タイ人の間でも論議になりそうな気がする。政府が決めた「タイの色」が存在していないので、人によって意見が変わるのではないか。実際にはいくつかこれかなという色はある。だからこそ、タイ国民の間でも見解が割れるのかなと思うのだ。

そんなタイの「ナショナルカラー」に「なり得る色」を検証してみよう。

2014年の反政府デモ会場で売られていた「愛国心グッズ」。

タイ王国、あるいはタイ政府としてナショナルカラーを挙げるとしたら、イメージとしては「赤」なのでは? と思う。

僕個人としては、最も足を運ぶ政府関連施設は運転免許証や車検を管轄する、日本でいうところの陸運局になる。ここは看板などが紫だし、タイの主要航空会社「タイ航空」も客室乗務員の制服が紫色であることから、紫のイメージが僕にはある。

ただ、政府としては「赤」を挙げそうな気がする。タイの国旗が赤・白・青(紺色)の3色になっていることはご存知の方も多いだろう。赤は国家、白は仏教、青は王室を表している。これが最も代表的な色合いになり、政府としては「国家を意味する赤」を推すかなと感じるわけだ。

赤一色に予想を定めるのにはもうひとつ理由がある。

僧侶が着る袈裟のオレンジ色もタイっぽい色ではある。

実は、タイの三色旗が正式採用されたのは1917年からで、それ以前のタイの国旗は赤一色だった。最初の国旗とされる、1700年前後に登場した旗は赤の無地だったそうだ。その後、円盤や白象の図柄が入り、1916年に今の旗と同じ柄になった。ただ、この年から今の国旗の色になるまで、中央の紺色部分が赤のまま、つまり赤白の2色の旗だった。

日本代表レプリカ・ユニフォームを着る子どもはいるのに、タイ代表を着る子がいない。

それから、タイでも国民的スポーツになっているサッカーも、タイ代表のユニフォームは赤を使っている。ちなみにタイ代表ユニフォームはホームとアウェイで使い分けていて、もう一色は紺色だ(厳密にはサード用に黄色もある)。

 

数年前までなら国民は前国王の「黄色」を支持

前項はあくまでも僕自身の推測でしかないが、タイ人に聞いた場合、一般の人の大半がナショナルカラーとしてイメージする色はおそらく「黄色」になると思う。市街地でも黄色をよく目にするからだ。

祝賀などでは街中に黄色の旗などがあふれる。

これはラマ9世王(前国王)が使う色が黄色だったため。だから、街中にある肖像画や祭壇、祝賀関係の装飾には黄色が多く見られた。特に前国王の誕生日は12月5日だったこともあり、いろいろと印象に残る時期に黄色の装飾が増えることから、よりそのイメージが強くなる。

2009年ごろの僕自身も、右手に国王陛下を応援する黄色のシリコンバンドをしている。

崩御する前の数年間、前国王は体調不良で入退院を繰り返していた。そのころには前国王の回復を祈り、また応援する人たちがたくさんいたことから、黄色のポロシャツやリストバンドが爆発的に流行した。

2016年10月に前国王が崩御し、今年5月になってようやく現国王であるラマ10世王の戴冠式が行われた。そうなると、これからは現国王の王室カラーがタイを代表する色になるだろうという予想は当然起こることである。だが、その現国王が使う色も黄色だ。そうなれば、これからも黄色がタイのナショナルカラーのひとつになると見る。

 

タイ人はみんな「生まれた曜日と色」を知っている

なぜ前国王、現国王の王室カラーが黄色なのか? という疑問が出てくるかと思う。理由は非常に単純で、ラマ9世王、ラマ10世王は共に月曜日生まれだからだ。

チャオプラヤに飾られた前国王の肖像画にも黄色が使われていた。

日本人は自分が生まれた曜日までは憶えている人は少ない。しかし、タイ人はみな、自分が生まれた曜日までちゃんと知っている。これは、仏教寺院などに参拝する際、寺によっては曜日ごとの仏像があり、そして同時に曜日には色があるのだ。

寺院によって仏像は7体のところと、バラモン教の影響が強いところだと曜日とは関係のない毎日の仏像(一応金色が割り当てられている)、水曜は昼と夜それぞれの仏像の全9体の場合がある。

日曜日は菩提樹を見つめている「プラ・プッタループ・パーンタワーイネート」(右)。左の座っている仏像は曜日に関係ない毎日の仏像。

たとえば、日曜日の色は赤だ。

月曜日は飢餓と日照りを制止する「プラ・プッタループ・ハーム・サムトーン」

月曜日は黄色だ。これが国王陛下の生まれた曜日の色であり、仏像だ。

火曜日は寝釈迦「プラ・プッタループ・パーンサイヤート」

火曜日はピンク。唯一の寝釈迦像だ。

水曜日午前生まれ、お布施の鉢を前に抱え、足を揃えた立ち姿の「プラ・プッタループ・パーンウムバート」。

こちらは水曜日午後生まれの「プラ・プッタループ・パーンパレーライ」。

水曜日は寺院によっては2体ある。午前中の立像と午後の座った仏像だ。全体としては緑のようだが、午前が緑、午後は黒に分けていることもある。

木曜日は胡坐で瞑想している「プラ・プッタループ・パーンサマーティ」

木曜日の色はオレンジ。ちょうど僧侶の袈裟の色に合った色だ。

金曜日は仏法と伝道について瞑想する「プラ・プッタループ・パーンラムプン」

金曜日は青、あるいは水色になる。前国王の王妃であるシリキット王太后が1932年8月12日生まれで、金曜日だった。このため、前国王時代の母の日である8月12日前後はタイ中に水色があふれた

土曜日はナーガ(ヘビの神)に保護されて瞑想する「プラ・プッタループ・パンナークプロット」

土曜日は紫だ。週末なので、タイ人にとってはリラックスの色になるのだろうか。昔は王室に仕える人たちの制服が曜日の色に合わせていたようで、カレンダーがなかった時代、一般市民はそれを見て曜日を把握したのだとか。

タイ人はこれらの曜日の色をちゃんと憶えていて、これをラッキーカラーとして生涯で利用することも多い。女性の場合、ファッションや宝石の色合いにこのカラーを使う人も少なくないそうだ。

北部の少数民族などは派手な色合いの雑貨を作るし、色の感覚は人それぞれだ。

 

タイのナショナルカラーは仏教に集約されるかも

結局のところ、タイにおけるナショナルカラーは「人それぞれ」というところか

国がこれだと指定したカラーがなく、どちらかと言えば王室に関係した色が主流となるだろう。国王の誕生日が近いと黄色が増えたり、王妃の誕生日にはその曜日の色が増える傾向にある。前国王が崩御されてからの1年間はみんな黒を着ていたが、服飾市場なども黒ばかりで、最早流行色といった雰囲気すらあった。

タイのナショナルカラーは国(政府)としての色よりも、タイ人が敬愛する王室の色が強く関係してくる。とはいえ、この色は仏教の曜日の色なので、要するに、タイはいろいろなことが仏教に集約されるということなのかもしれない

 

 

編集:ネルソン水嶋

  • ※当サイトのコンテンツ(テキスト、画像、その他のデータ)の無断転載・無断使用を固く禁じます。また、まとめサイトなどへの引用も厳禁です。
  • ※記事は現地事情に精通したライターが制作しておりますが、その国・地域の、すべての文化の紹介を保証するものではありません。

この記事を書いた人

高田 胤臣

高田 胤臣

1977年、東京生まれ。1998年に初訪タイ、2002年からタイ在住。タイの救急救命慈善団体「華僑報徳善堂」唯一の日本人ボランティア隊員。現地採用社員としてバンコクで日系企業数社にて就業し、2011年からライターになる。単行本数冊、AmazonKindleにて電子書籍を多数発行。執筆のジャンルは子育てネタからビジネス関連まで多岐に渡る。最近は「バンコク心霊ライター」の肩書きがほしく、心霊スポットを求めタイを彷徨う。

この記事を書いた人

ずんこ

ずんこ

タイを拠点に漫画家活動中。漫画作成、漫画の描き方指導、国内外のイベントにて似顔絵描きをするなどのフットワークの軽さが人気。以前シンガポールに住んでいたこともあり、シンガポールでの活動もしばしば目立つ。日本人向けタイの情報誌「バンコクマダム」などで漫画を連載中。法人から個人まで幅広く仕事を受注してます。連絡先:zunkomanga@gmail.com Facebookはこちら

  • このエントリーをはてなブックマークに追加