タイの朝食は屋台天国! 甘い、辛い、揚げる、『一日5食』で精がつく

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※本記事は特集『海外の朝食』、タイ・バンコクからお送りします。

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タイの朝は屋台天国! 街中には甘く芳ばしい香りが漂う

首都・バンコクの朝では、駅へと向かう通勤中の人が往来する一方で、立ち止まる人もよくいます。彼らの目的は朝ごはん、街中の至るところに屋台や露店があり、一歩外に出ると鼻先までさまざまな香りが漂ってくる。甘いもの辛いもの揚げもの、それでいて10バーツ(およそ34円)から買えるという懐への気遣い(?)! まさに「屋台&露店天国」であると言っていいでしょう。

よく見る露店風景。ビニール袋に料理を入れてぷっくりと膨らませたら輪ゴムで口を器用に閉じる、プラスチック製のパックに入れて提供するお店もあります。水分の少ないタイ米は、辛い味付けのおかずと相性バッチリ! 40バーツ(およそ136円)からと、お安い価格で売られています。

なお、屋台の営業時間は早いところなら朝4時から、そして深夜まで、一日中出ていることも珍しくありません。基本的には「売り切れ御免(終了)」ですが、そうなったらそうなったで夜になると別のお店にバトンタッチ! まるでシフト制のように屋台は同じ場所で入れ替わる。この通り、タイ人にとって外でご飯を買って食べるということは、あまりに当たり前の習慣なのです。

これは都市部に限った話ではなく、地方でも同じこと。ただし、大きな違いは、都市が街中に点在している傾向と比べると、地方は写真の通り屋根付きのスペースに収まっている場合が多いところ。雨季が半年間に及ぶこともあるタイでも安心、さまざまなジャンルのごはんが集結かつ都市部より断然安いので、食欲の赴くままに舌鼓を打つことができます!

近年は都市部を中心に規制される傾向ですが、それでも警察や裏社会の方々によって仕切られているという話もあったりと切っても切り離せないようです。この背景には、タイ人自身が「一日5食」と言われるほど軽食文化が根付いていることもありますが、少しの初期投資でも大繁盛する可能性があり、フェラーリを買えるほど金持ちになったという夢物語も聞かれるからでしょう。その観点では、タイ、とりわけバンコクの朝食市場は常に金脈が埋まっていると言ってもよいでしょう。

では、そんな屋台ではどのような食べ物が人気なのでしょうか? それは……ずばり、揚げ物です!

 

タイ人は揚げ物好き? しょっぱいものも甘いものも油にぶち込め

漂ってくる香りが甘かったり辛かったりと書きましたが、最も主張する存在が揚げ物の香りです。

「なぜこれほどまでに?」と思うほどタイ人は揚げ物が大好き! フライドチキンは定番で、豚肉を揚げれば、パンだって揚げるし、なんならバナナだって揚げてしまう! ガパオライスの最強パートナー、目玉焼きですらカリカリになるくらい揚げたおされるので、半熟トロトロの黄身など望めません。常夏の国においては衛生上の理由が一番なのででしょうが、一部ではパーム油が豊富だから? とか、かつて飲料水が少なかったから油を使ったから? とか、いろいろと言われています。

とくに女性を中心に人気のある揚げパン、パートンコー。棒状だったりツイスト状だったり、見た目にもおもろいものですが、味は……ジュワッ! と染み出した油とトロ〜リとした練乳が絡まって、これでやみつきにならない訳がない! ただ、言うまでもなく高カロリーを感じさせる食べ物ですが、セットで注文できるヘルシーな豆乳を飲めば、背徳感も幾分は減らせるかもしれません!?

が、このパートンコー、基本的に屋台で移動しているので、見つけたらすぐに買いに走らなければ手(口?)に入りません。まるで現代の、かつタイの、石焼き芋屋のようなものですね。むしろ追いかけて少しでもカロリーを消費しておけば、背徳感も幾分は……(略)。

パートンコーに限らず甘いものが愛されがちなタイ。コーヒーを注文して砂糖の量を聞かれる状況では、「同じ値段ならたくさん入れた方がお得感がある」という意見もあり、もしかしたら、(良く言えば)モッタイナイ精神が甘さや辛さがエスカレートしている背景としてあるのかも??

 

おかゆに焼きバナナ……揚げ物以外のバリエーション

もちろん、揚げ物以外にも豊富にあるタイの朝食(屋台に露店)! 地域ごとの食文化もあり、また華人のコミュニティも巨大なので中華由来の食文化も根付いているため(一説によると「タイ人で華人の血が流れていない人を探す方が難しい」と言われる)、さまざまな味を楽しめます。

こちらはムーピンと呼ばれる、甘じょっぱいタレに漬け込まれた焼豚串。店によって味付けや肉質が違うので、一本10バーツ(およそ34円)ほどと格安であり、どこのお店でも楽しめます。前述の「フェラーリを買えるほど金持ちになった」という主人こそが、実はこのムーピンによって財を成した「ムーピン長者」であり、日本のラーメンのような人気料理と言えるのかもしれませんね。

そして、ムーピンのおともがこのカオニャオ! いわゆるもち米で、ムーピンが甘辛くても、お気に入りの味に調整できます。口の中で料理を合わせて味付けする「口内調味」は日本人ならではの特徴だと聞きますが、この食べ方から想像すると、意外とタイ人にもその傾向があるのかも。

こちらはジョークと呼ばれる重湯(おもゆ)。おかゆと似ていますが、さらに米をドロドロになるまで煮込みます。タイではお酒を飲んだあとに食べることもありますが、食欲がなかったり胃腸の弱い人にもうってつけ。それほど熱くないところは猫舌の人にとってもうれしい。

玉子、ネギ、生姜が入って30バーツ(およそ102円)、ミンチボールは5バーツで追加できる。

カノムコンラッカンは一見するとたこ焼き、外カリカリ中とろとろと特徴まで似ていますが、実はココナッツミルクの焼き菓子。タイ語で、カノムは「お菓子」、コンラッカンは「愛し合う二人」、なんともロマンティックなネーミングですね。こちらは5個で10バーツ(およそ34円)。

ほか、サンドウィッチやパンケーキなど! タイの朝食は本当にバラエティに富んでいるのです!

 

コンビニやファーストフードなどでシティライフな朝食も

伝統的な朝食としてはやはり屋台に露店に多いのですが、発展目覚ましいバンコクなどの都市部では現代的な選択肢も増えています。そのひとつがコンビニ、現地ではセブンイレブンが牙城を築いており、品揃えはもはや日本並みだと言ってよく、こちらで朝食を買う人も増えています。

イートインできる店舗も多く、対応するようにパンの品揃えは専門店並で、日系コンビニらしくおでん(ただし甘く辛い、という声も)があり、さらに! 現地で多店舗展開中のスイスの名カフェチェーン、セガフレード・ザノッティ・エスプレッソのブースが店内に設置されているものも。

マクドナルドも豊富で、ハンバーガー……も食べられますが、ローカライズが進んでいるため、なんと、ここでもジョークが食べられる! トッピングも目玉焼きやベーコンといくつかあって、屋台のローカル感に腰が引けても、チェーン店という慣れ親しんだ環境で十分に楽しめますよ。

 

在住日本人御用達? オシャレカフェでハイソな気分

なにかと甘いタイ料理に飽きたら、そんなときの選択肢もタイ(都市部)にはあります。

現地ではコーヒー屋台を多く見かけますが、これが……どれもこれも甘い! ブラックでほしいと注文したら、砂糖は入れられなかったけど練乳は入れられた、逆に、練乳は入れられなかったけど砂糖は入れられた、という被害報告(?)もちらほらと耳に届いております。甘くするということが当たり前なので、その意識を変えてほしいと言ってもそれは無理のある話です。

だが! ここ近年ではタイにカフェブームが到来! アフリカ産や南米産などのコーヒー豆を仕入れるこだわりのカフェや、海外の有名カフェの現地への進出も増えてきており、美味しいコーヒーを気軽に味わえるようになりました。観光立国かつ外国人在住者も多く、現地のタイ人のみならず、彼らの存在もまたこういった需要を生み出すのでしょう。

D’ARK」はフランス人オーナーのカフェで、数ある中でも頭ひとつ抜き出ており、高級感あふれる店内で落ち着く雰囲気。淹れ方も多種多様で、コーヒー豆の説明も丁寧。お菓子三点とのセットは306バーツ(およそ1050円)と、これまでの朝食に比べるとお高めですが、幅広い需要に支えられた、こういった嗜好の幅広さもタイ(バンコク)ならではの特徴です。

IWANE Goes Nature」はタイ在住日本人奥さまに愛用されており、毎日焼かれるホームメイドタイプのパンとパンケーキが人気。が……!

在住日本人の多いバンコク、ウッカリと聞いちゃいけない話を聞いちゃうことも!?

 

タイは都市部の中心地に行くほど家賃が高く、郊外から1〜2時間も掛けて出勤している人も少なくありません。朝早くから行動しなければいけないこともあって、朝食は不可欠です(だから屋台が多いのかも)。さらに一日5食の軽食文化があり、北部や南部の地域性がありながらも都会のタイ人仕様に辛さを抑えて郷土料理を提供しているお店もあります。あらゆるタイ料理を味わい尽くすということは難しい。だからこそ、朝から食べ歩いてタイ料理を堪能してもらいたいと思います。

 

取材&漫画:ずんこ
執筆:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

ずんこ

ずんこ

タイを拠点に漫画家活動中。漫画作成、漫画の描き方指導、国内外のイベントにて似顔絵描きをするなどのフットワークの軽さが人気。以前シンガポールに住んでいたこともあり、シンガポールでの活動もしばしば目立つ。日本人向けタイの情報誌「バンコクマダム」などで漫画を連載中。法人から個人まで幅広く仕事を受注してます。連絡先:zunkomanga@gmail.com Facebookはこちら

この記事を書いた人

ネルソン水嶋

ネルソン水嶋

ブロガー、ライター、編集者。2011年のベトナム移住をきっかけにはじめた現地生活を綴るブログ『べとまる』から『ライブドアブログ奨学金』『デイリーポータルZ新人賞』などを受賞を契機に、ライターに。2017年11月の立ち上げから2019年12月末まで、海外ZINEの編集長を務める。/べとまるTwitterFacebooknote

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