2017.11.20

韓国の朝食は菜食主義? お酒好きも酔い覚ましスープで健康的に

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韓国は日本に似て、ごはんとスープ、そしてナムルといった副菜が多いとのこと。が、忙しいビジネスパーソンも増える中、外では韓国式のり巻きのキムパッも買え、日本では見慣れない「鉄板の上で焼くトースト」がよく食べられるのだとか。ほかに酔い覚ましスープが朝食に挙げられるあたり、酒好きな国民性を感じさせます。

韓国に精通するライター、吉村剛史さんにご紹介いただきます。

 

「鉄板焼きスタイル」のあつあつ韓国式トースト!

日本のお隣の韓国とは時差がゼロ。とはいえ、東京とソウルの日の出時刻の差は約1時間に及びます。夏場は19時を過ぎても明るく、冬場は朝7時でも真っ暗。とくに東日本からソウルを訪れると、「まだこの時間なの!?」と、その違いにはっきりと気づくはず。夏場は夕日が差し込むなかで宴が始まり、冬の朝は日の出前に朝食を済ませることもあります。

朝のソウルの街並み。

韓国は朝ごはんを外食する文化ではありませんが、家で朝ごはんを食べそびれても、町中では、手軽に食べられるトーストや海苔巻きが売られていますし、二日酔いにも効果があるとされる、酔い覚ましスープなるものもあります。そんな韓国の朝食事情をみていきましょう。

忙しいソウルの朝、家で朝ごはんを食べる余裕がないときは、通勤の途中で食べ物を買い、職場のデスクでおなかを満たします。

通勤途中に買える朝食としておなじみなのは、韓国式トースト。韓国では「トーストゥ(토스트)」といい、街中の移動式屋台や露店、トーストチェーン店で売られています。鉄板の上に薄くバターを塗り、そのうえで食パン二枚の両面を焼き、その上に具材を乗せて挟みこむホットサンドです。屋台で別の品物を売っていた人が、そこでパンを焼き始めたのではないか、と思います。

サンドする具材は、野菜をまぜこんだ薄焼きの卵がスタンダード。ハムやチーズ、野菜を追加でトッピング。甘さが好まれる傾向にある韓国ではケチャップのほかに、砂糖をかけてくれます。大手トーストチェーンでは、ケチャップの代わりにフルーティーなソースをかけたり、チキンやベーコンなどをはさむことも。

トーストの価格は、屋台であれば1,300~2,500ウォン(約130円~250円)。チェーン店なら2,300~3,500ウォン(約230~350円)ほどで、具材によって値段が異なります。

ホットサンドメーカーで作るときほどに強く挟みこむわけではなく、軽くパンを乗せる程度。屋台で買うと、出来上がりをくるっと巻いて、紙コップに差し込んでくれます。韓国式トーストのポイントは砂糖の甘さと、ケチャップのほどよい酸味! 日本にいても、この味が忘れられず、私は家で作ることもあります。

 

ごま油の香りただよう韓国海苔巻き、キムパッ

そしてもうひとつ、外で食べられる朝食の定番といえば、韓国風海苔巻きの「キムパッ(김밥)」。「キム(김)」は海苔、「パッ(밥)」はご飯を意味します。

キムパッのもとは日本の海苔巻き。日本統治時代の頃に流入し、韓国人の口に合うように作られたもの。ご飯は酢飯ではなく、ゴマ油や塩で味付けされます。具材は卵焼きやハム、ほうれん草やニンジンなど様々。

なんといっても韓国海苔巻きのおいしさは、ゴマ油の香ばしさが広がること! 巻かれた海苔巻きの表面にゴマ油を軽く塗ると、その風味もよりいっそう感じられます。

キムパッは定番のお弁当メニューとして家庭でもよく作られますが、日本に牛丼チェーンがあるように、韓国には24時間営業の海苔巻きチェーンがあり、テイクアウトも可能。お店で食べると、スープとともにキムチやたくあんが添えられます。

値段は具材によっても異なりますが、一巻きが1,500~3,000ウォン(約150~300円)ほど。最近では玄米を使った健康志向や、素材にこだわった高級志向のキムパッ店も登場しており、キムパッの地位も向上しています。駅前の露店やコンビニでも購入できます。最近は駅構内にベーカリーも増えており、朝食の種類も多様化しているようです。

 

家庭では豊富な野菜の朝食! 食堂ではおかずのおかわりも

韓国では日本と同じように、朝食を外食で済ます文化が根付いているわけではないので、家庭で朝ごはんを食べる人がほとんどです。私が韓国に留学で滞在していたころは、食事付きの下宿をしており、毎朝家庭料理を食べていました。

韓国では「パッ(밥)」というご飯とともに、「クッ(국)」とよばれる汁物が主食。そしてキムチや、ナムルを中心として季節に応じた「パンチャン(반찬)」とよばれる副菜が数品並びます。いちどの食事で様々な野菜がとれるのが嬉しいところ! さらに食堂では、キムチや副菜などのおかわりは無料なのです。

上の写真は韓国のとあるゲストハウスでの朝食。ご飯をナムルと混ぜて食べるビビンパ(비빔밥)のため、大きな器の上にナムルがきれいに盛り付けられていますが、このビビンパの器を除けば、ごくごく一般的な食事のスタイルです。

スープはキムチや豆もやしが入ったキムチクッ(김치국)。そのほかにダイコンやえごまの葉、ニラなどで作った副菜のナムルが並び、おかずの中央にはピビンパのためのコチュジャン(고추장)が置かれています。ピビンパにする場合は大きな器にご飯とコチュジャンを入れて、まんべんなく混ぜることがポイント!

ちなみに副菜の多くは常備菜。したがって、メインとなるスープを除き、昼食や夕食でも必然的に同じ副菜を食べることが多くなるのです。日本で和食を食べるよりも、韓国では韓食の頻度が高いので、食に対してわりと保守的といえます。

そんなわけで、私としては毎日似たような食べものに飽きてしまった覚えがあるのです。とはいえ、これも韓国の食卓を表していると思うので、書き記しておくことにします。(最近の若い家庭では、いくらか多様になっているようですが……。)

 

二日酔いにも効果アリ!? 酔い覚ましスープ、ヘジャンクッ

朝食がテーマなのにお酒の話が出てくることは、意外に思われるかもしれませんが、「酔い覚ましスープ」の話を抜きにして朝食は語れません。韓国では「ヘジャンクッ(해장국)」とよばれる酔い覚ましスープが発達しており、お酒を飲んだあとや二日酔いの朝に食べます。

かつては「飲酒大国」といわれるほどアルコール消費量が多く、今でも20度ほどの強い焼酎をストレートで飲むほどですから、お酒でいたんだ胃腸を回復させるためのスープでもあるのです。(最近ではお酒を飲まない人も増えてきましたが……)

ヘジャンクッの店は24時間営業の店も多く、もちろん昼食や夕食にしてもOK。朝、食堂に出かけると、酒好きの中高年の男性が、焼酎の小さなグラスを手にしながら、ヘジャンククをすする光景を目にすることもあるほど。

ヘジャンクッの種類は様々。肉料理が発達した韓国では、あらゆる部位を食材に使いますが、なかでも特徴的なのは牛の血をゼリー状に固めた「ソンジ(선지)」が入った、ソンジ・ヘジャンクッ。器のなかにはソンジのほかに、牛の内臓(ホルモン)などが入っています。

「牛の血」と聞いてギョッとするかもしれませんが、鉄分が豊富で栄養たっぷり。食感は豆腐にも近い感じがしますが、「血」だと思わなければきっと大丈夫。地方にはシジミが入ったものや、スケトウダラの干し物が入ったものなど、それぞれの地域に川の幸、海の幸を使った特色ある酔い覚ましスープがあります。

私は韓国の全国各地を旅をした経験があり、訪れた土地のヘジャンクッにも出会ってきました。「ヘジャンクッ」の名ではなくても、「酔い覚ましスープ」として認識されているものもあります。そこで印象に残っているヘジャンクッを紹介したいと思います。

 

豆もやしクッパに迎え酒・母酒(モジュ)

ソウルから高速鉄道KTXに乗り、南に約2時間のところに位置する全州(チョンジュ、전주)。韓国の伝統家屋、韓屋が立ち並ぶこの街には、朝食にふさわしいヘジャンクッがあります。

その名を「コンナムル・クッパ(콩나물국밥)」といいますが、「コンナムル(콩나물)」は豆もやし、「クッパ(국밥)」はスープご飯を意味します。

グツグツと煮立った状態で運ばれてくる豆もやしクッパ。スープにはたっぷりの豆もやしとご飯が入っています。これに薬味や辛味を加えて食べるのですが、小さな器には生卵が添えられて出てくるのです。

卵はスープの中にいれてもよいのですが、あまりにもアツアツなので、クッパの器に入れると余熱で固まります。卵のもうひとつの食べ方としては、卵が入った容器に、スプーンで熱い汁をうつし、海苔をまぶして卵スープのように食べたりもします。卵がついてくるのは、タンパク質を補うためであり、食欲を高める効果もあるのだとか。

そしてこの豆もやしクッパの店には、「母酒(モジュ、모주)」と呼ばれるお酒があり、1杯1000ウォン(約100円)で飲むことができます。クッパとともに飲むお酒で、迎え酒にもなります。一口飲んでみても、お酒という感じはせず、シナモンの味と甘さが口のなかに広がります。

母酒はマッコリにナツメや甘草、生姜などの数種類の漢方薬を入れて熱したあと、桂皮(シナモン)の粉を入れて作るので、いかにも体に良さそう! 二日酔いにも効果があるのだとか。

マッコリはアルコールが6度ほどですが、母酒はいちど加熱しているので、1.5度にまで下がります。全くお酒が飲めない人でなければ、デザート感覚でも楽しめるはず。全州に出かけたら、ぜひ二日酔いの状態で(?)召し上がってみてください。

 

外では手軽に済ますこともでき、家庭では野菜もたっぷりでバランスのよい食事がとれる韓国の朝食。そしてもし韓国を訪れ、夜にお酒を飲みすぎてしまっても、朝ごはんに酔い覚ましスープを召し上がってみれば、心なしか疲れた胃腸を回復できることでしょう。韓国らしい朝食、ぜひ一度お試しあれ。

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この記事を書いた人

吉村 剛史

吉村 剛史

1986年生まれ。ライター。「韓国を知りたい」という思いが日々のエネルギー源。誰も訪れない地方都市巡りをライフワークとし、20代のうちに約100市郡を踏破。国内では2月号『散歩の達人』コリアンタウン特集執筆ほか。SNSでは「トム・ハングル」の名で韓国の小ネタを日々発信中。HP / Twitter

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