しょっぱい朝食はNG! イタリアの朝はドルチェではじまる

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※本記事は特集『海外の朝食』、イタリアからお送りします。

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イタリアの朝ごはんは、ドルチェで始まる

パスタやピッツァ、リゾットなど、日本でもごくごく一般的なものとして浸透しているイタリア食。でも、イタリアの朝ごはんがどんなものかご存知の方は意外と少ないのではないでしょうか? 実際にどんなものを食べているのか、さっそく見てみましょう!

イタリア定番の朝ごはん、日本との違いがわかりますか?

朝ごはんとして食べていそうなものをひととおり並べているので、量はちょっと多めですが、だいたい品目としてはこんな感じでしょうか。ヨーグルトにビスケット、ジュース、ジャム、フルーツ、それからカフェラテなど。このほか、ティラミスやトルテなどのケーキ類を食べる場合もあります。

実際に食べる量はこのくらい(あと、普段は皿に盛ったりもしません)

さて、このイタリアの朝ごはんには日本や他の国にはない特徴があることにお気づきでしょうか?

それは「しょっぱいもの」が存在しないこと。バターを塗ったトーストや目玉焼き、カリカリに焼いたベーコンなどは、日本では朝ごはんの定番メニューですが、イタリアの家庭で見かけることはまずありません。ビスケットやスイーツなどを中心としたドルチェ(甘いもの)を食べるスタイルが、イタリア流なのです

余談ですが、イタリア人は朝ごはんのビスケットをカフェラテにじゃばじゃば浸して食べるのが大好き。写真のような、口の広いじゃばじゃば専用カップを使います

個人的には……サクサクしていたほうが好み

正直、日本人の僕としてはトーストとか目玉焼きとか、しょっぱいもののほうが食べた気がするんですが、どうして甘いものだけなんでしょうか。ちょっと友達に聞いてみました。

 

聞けば聞くほどわからなくなる? イタリア朝食のルール

鈴木

チャオ、ファビオ。ちょっと聞いていい?

友人

いいよ、どしたの?

鈴木

朝ごはんにしょっぱいものって食べる? パニーノ(サンドイッチ)とか、そういうの。

友人

いや、食べない(即答)

鈴木

それってなんでなの、何か理由とかあるの?

友人

うーん、よくわからない。文化的なもの……としか言いようがないかも。でも友達は小さい頃トースト食べてたって言ってたよ

鈴木

あ、そうなの? じゃあしょっぱいものを全く食べないってわけでもないの?

友人

家庭によっては食べることもあるみたいだけど……でも奇妙な習慣って感じがする。個人的にはカフェラテとビスケットとかのほうが好きかな

鈴木

例えばだけど、外国に行ったらどうしてるの? イギリスとか、朝からしょっぱいもの食べるじゃん。

友人

うーん、状況によるけど食べなくはない……かも。でもできれば朝ごはんは甘いほうがいいな

 

というわけで、朝ごはんに甘いものを食べる理由は、イタリア人に聞いても「分からない」とのことでした。しょっぱいものも食べようと思えばできるけど、できれば甘いほうが好ましいという感じ。

余談ですが、以前イタリア人の友人とルームシェアをしていたとき、朝にわかめの味噌汁とご飯を食べていたらぎょっとされたことを思い出しました。そもそも朝にしょっぱいものを食べないうえに、海藻を食べる習慣もないというダブルパンチ。「よく朝からそんなもの食べられるね」と言われたけれど、好きでやってんだよと言いたい。

こういう好みって説明が難しいのですが「朝からカツ丼食べられるかどうか」みたいな感覚に近いのかもしれません。食べられなくはないし食べる人もいるんだろうけど、でもちょっと変な感じがする、みたいな。……あれ、たとえ変じゃないですよね、あってますよね?

ちなみにイタリアでは、朝はエスプレッソだけ飲んで、朝ごはんと昼ごはんの間に軽く食べるという人も少なくありません。そして、この時の「軽く食べるもの」に関してはサンドイッチなどしょっぱいものでもいいのだとか。

うーん、聞けば聞くほどわからなくなってきました。「それ朝ごはんと何が違うの?」って声も聞こえてきそうですが、そのあたりの感覚の違いも含めて「文化的なもの」なのかもしれません。

 

イタリアはビスケットのバリエーションが細かい

このように、朝ごはんには甘いものを食べるのがイタリアの流儀。スーパーに行けば「朝ごはんに食べるもの」コーナーがあり、当然ながら甘いものばかり並んでいます。その充実っぷりがすごいので、ちょっと紹介したいと思います。

どどーん、これ奥まで全部朝ごはんコーナーです

売り場はこんな感じ。スーパーの陳列棚1本をほぼ占領する勢いです。これまで、イタリアのスーパーで売り場面積が一番大きいのはパスタコーナーだと思っていましたが、違いました。朝ごはんコーナーです!

並んでいるものを見てみると、まず手前にあるのが個包装のチョコレートケーキやカップケーキ、それからチョコクロワッサンやクリームパン。そしてその奥にビスケット類がずらりと並ぶという構成。特にこのビスケット類のバリエーションはすごくて、ちょっと売り場を見ていくと……

左上からアーモンド粉クッキー、あんずジャム入り、ハチミツ入り、米粉クッキー、砂糖をまぶしたもの、そば粉クッキー、生クリーム入り、全粒粉クッキー、カカオ入りなどなど……ものによって価格は異なりますが、だいたい1袋1.5〜2.5ユーロ(200〜320円)くらい

たくさん

えーと、紹介している自分も少しわけがわからなくなっていますが、伝わりますでしょうか。

とにかくビスケットの中に入っているものや粉の違いにより、無数のバリエーションがあるってことを言おうとしていました。珍しいところではとうもろこし粉のクッキーやカフェラテに浸す専用ビスケットなんてものまであります。

最近登場したじゃばじゃば専用ビスケット、少し肉厚でカフェラテが染み込みやすくなっています

イタリア定番のチョコレートスプレッド、ヌテッラも朝ごはんコーナーの一員。ビスケットに塗るほか、そのままスプーンですくって食べるという人も……。ヘーゼルナッツの風味が香ばしくて美味しい

 

外で食べるのもやっぱり「甘いもの」

忙しい朝は朝食を外で食べるという選択肢もあります。定番はバールと呼ばれるコーヒーやちょっとした軽食が食べられるお店で、朝の早い時間(7:00〜9:00ごろ)はどこも多くの人で賑わっています。

この日は朝の遅い時間(11:00ごろ)だったのでがらがら

旅行ガイドブックなどではよく「喫茶店のようなもの」と紹介されているバール。ただ、座ってゆっくりとくつろぐというよりは、カウンターに立ったままさっとコーヒーを飲んで出ていくという使われ方が一般的。

一応テーブル席もありますが、座るとサービス料として価格が1.5倍程度になります。1杯1ユーロのエスプレッソならだいたい1.5ユーロ(200円)くらい。よほどゆったりしたい時はともかく、財布の紐がしっかりとかたいイタリア人は、カウンターでさっと飲む人が多いようです。

バールの朝ごはんも基本はやっぱり甘いもの。チョコレートやクリームの入ったクロワッサンやドーナツ、マフィンなどをエスプレッソやカプチーノと一緒にいただきます。

カプチーノとチョコクロワッサン、カウンター価格でだいたい2.5ユーロ(320円)くらい

エスプレッソだけ飲むという人も……朝ごはんって言っていいのか?

パン1個とコーヒー1杯。これも日本人の感覚からすると少し物足りないようにも感じますが、イタリアではごくごく一般的な量。昼や夜にはたくさんの量を食べるので、その分朝は少なめの量……というのが一般的な感覚なのかもしれません。

余談ですが、イタリアといえど外国人観光客の多いホテルでは、トーストや目玉焼き、イタリアのチーズなどしょっぱい朝ごはんを提供するのが一般的です。もちろんこれも美味しいのですが、イタリアらしいディープ雰囲気を味わいたいのであれば、ぜひ朝は近くのバールに出かけてみてください。甘いものばかりの朝ごはんも、何度か続けて食べてみると意外とハマりますよ!

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この記事を書いた人

鈴木 圭

鈴木 圭

イタリア・ミラノ在住、フリーライター。広告ディレクターや海外情報誌の編集者などを経て2012年にイタリアに移住。イタリア関連情報や海外旅行、ライフスタイルなどの分野を中心に活動中。旅行先の市場でヘンな食べ物を探すのが好き。「とりあえず食べてみよう」をモットーに生きてます。HPTwitterInstagram

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