2017.11.06

ドイツの朝食はパンに具材を盛ってご「地層」に、実は夕食もほぼ同じ

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ドイツ料理といえばソーセージにじゃがいもという印象、でも実は「パン大国」でもあります。北はライ麦、南は小麦、地域の多様性からたくさんの種類があり……その数なんと300以上! しかも朝も夜もほぼ同じというから驚きです。また、地域によってはときどきビールも飲むとのこと。

ドイツ在住のライター、久保田由希さんにご紹介いただきます。

 

作るのではなく「並べる」! ドイツパンのカンタン朝食

「ドイツの朝食って、作るものではなく、並べるものなんだなぁ」と思ったのは、以前ドイツ人家庭にホームステイをしたときのことです。

冷蔵庫からハムやチーズ、バター、ジャムなどを取り出し、食卓に並べる。そして保存ケースから取り出したパンに塗ったり載せたりすれば、ドイツの朝食のできあがり。なんて簡単なんでしょう。

並べて塗るだけ。

ドイツの家庭でよく見られるパン保存ケース。

私の母は毎朝ご飯を炊いて、お味噌汁やおかずを作っていたので大変そうでしたが、ドイツの朝食なら誰でも準備できそうです。でも、「それで栄養バランスは大丈夫?」って思われるかもしれませんよね。じつはドイツのパンは、日本のふわふわした真っ白い食パンとはずいぶん違うんです。

ドイツパンの呼び方は、250g以上の大型パンの「ブロート」(Brot)小型パンの「ブレートヒェン」(Brötchen)に大きく分かれます。ブロートには小麦がメインに使われているもの、ライ麦メインのもの、小麦とライ麦のミックス、ナッツや雑穀、種子入り、全粒粉……などなど、300〜400種類もあり、ブレートヒェンはなんと1200種類にも上るそうです。ドイツのユネスコ委員会は、「ドイツパン文化」を無形文化財に登録していることからも、ドイツにおけるパンの重要性がわかると思います。全粒粉や雑穀パンは、真っ白い小麦だけのパンに比べて栄養もありますし、オレンジジュースやフルーツ、野菜スライスを一緒にとれば、さらにバランスがよくなります。

一般的に、北へ行くほどライ麦パンまたはライ麦ミックスのパンが増えていきます。これは、ライ麦が北ドイツの寒くて痩せた土地でも育てやすかったから。ドイツは北海道よりもさらに北に位置しているので、寒さは厳しく、年によってはマイナス10℃より低くなることも。ですから、ハウス栽培などの技術が発達していなかった時代は、穫れる野菜なども根菜やキャベツなど限られていたんです。

ベルリンの典型的なライ麦パン。この塊で1kg。

ブロートは250g以上と書きましたが、パン屋さんで売っているのは500g、750g、1kgという単位が普通です。大きな塊を一つ買ったら、1kgだったりするわけです。

これは小さめサイズ。それでもパンと2ショットを撮れば誰でも小顔に。

でも、半分だけ買うことも可能。その場合は1個のパンを半分に切って渡してくれます。残り半分は誰か別の人が買うので、問題ないんですね。スーパーなら、250g入りなどの少量サイズで売られています。そういう商品は既にスライスされているので便利です。

 

塗って、載っけて、まるで地層!? おいしいドイツパンの食べ方

ドイツパンは生地が密に詰まっていて、どっしりしています。ライ麦パンなら、独特のほんのりとした酸味も感じます。「ドイツパンって、なんかボソボソしておいしくない」という方もいらっしゃるかもしれませんが、じつは食べ方が重要なんです! ここ、ポイントですよ!

このままかぶりついてはダメ! もっとも、かぶりつくには硬すぎますが……。大型パンのブロートなら、まずは薄くスライスしてください。ドイツには家庭用パンスライサーもあるんです。

中央にある、円形の刃が付いているのがパンスライサーです。

こんな道具があるなんて、いかにみんなパンをよく食べるかがわかりますよね。お値段は30〜200ユーロ(約4000円〜26600円)程度と幅広いですが、有名ブランドの製品は安くありません。スーパーのパン売り場には、セルフサービスのスライスコーナーが設置されていることもあります。

薄くスライスしたら、その上に好みのものを塗ったり載せたりします。基本はバターにチーズ、ハムまたはサラミでしょうか。その上にトマトやキュウリのスライスを載せたりもします。ペースト状のソーセージを塗るのも人気です。甘いタイプもあります。ヘーゼルナッツ入りチョコレートペーストは、ドイツの家庭に欠かせない一品。または、バターの上にジャム、クリームチーズを塗り重ねたりなど、何層も重ねていきます。

私がドイツ人からよく言われたのは「ユキ、バターをそんなに薄く塗ったんじゃ、おいしくないよ」ということ。「もっとたっぷりと、ほら」と、私が使う数倍の量のバターをパンに塗り、その上にチーズ、ハム、キュウリ……と積み重ねていくのを見て、「地層か?」と思わず突っ込みたくなりました。ドイツでも健康志向は高まっているので、低脂肪食品は増えていますが、多くのスプレッドや食品と一緒にパンを食べることで、栄養もとれ、おいしくいただけるのだと思います。

ブレートヒェンは、ナイフを水平に入れて、上下2つに切り分け、それぞれの面に塗って、載せていきます。

こんなふうに水平にナイフを入れます。

地層のできあがり。好みでいろいろ塗り重ねてください。

 

自分好みにブレンドできるミューズリも定番

パン以外の定番朝食といえば、ミューズリ(Müsli)。これはフルーツグラノーラとほぼ同じもので、オーツ麦をベースにドライフルーツやナッツなどが入ったもの。それにミルクやヨーグルトをかけるだけです。

オーガニックのミューズリ。左はマンゴー・パイナップルで、500g入り3.45ユーロ(約500円)、右がスペルト小麦で500g入り2.65ユーロ(約350円)。市販のミューズリはチョコレートやドライフルーツがミックスされているものが普通ですが、「それでは甘すぎる」と、数種類のミューズリを自分好みにブレンドしている人もいます。

パンと同様、これにフルーツを加えるとさらにおいしいですし、栄養バランスもよくなります。私は最近ミューズリに凝っていて、その時の気分でいろいろなフルーツをカットしては、ミューズリとヨーグルトと一緒に食べています。

この日は洋ナシと桃を加えてみました。

フルーツも混ぜて食べるとおいしいです。

ドイツは食品が安く、パンも乳製品もハムも、どれも本当においしいです。朝食の内容はシンプルかもしれませんが、食材そのものの味のよさを感じられます。

ドイツ人は、どちらかというと美食よりも、健康や食の安全に気を遣います。狂牛病や口蹄疫などがきっかけと言う人もいますが、もともとドイツ人は環境などにも敏感なので、これはもう国民性なのだと思っています。土地が痩せていて食材のバリエーションが乏しかったことも、大きいと思います。オーガニック食品は、一般のものと較べてもそれほど高くはないので、ほとんどオーガニックを選んでいる人もいます。ベルリン各地にある広場では週に1〜2回市場が開かれますが、そこにオーガニック農家が来たり、チェーン展開しているオーガニック専門スーパーもたくさんあるんですよ。

市場に立つ、オーガニックの農家。

 

夕方でもカフェで朝食? 朝からビール?

カフェやレストランでも、朝食を食べられます。ベルリンのカフェの朝食は、ワンプレートにチーズやハム、フルーツなどを彩りよく盛り合わせたもので、カゴに盛られたブレートヒェンが付いてきます。

スクランブルエッグ入りの朝食。きれいに盛り合わせれば、とってもゴージャス。パン付きで7ユーロ(約900円)ぐらい。コーヒーは別料金。

なぜかベルリンでは、朝食が夕方頃まで注文できることが普通です。その理由をお店の人に聞いたことがあるのですが、「ベルリン人は宵っ張りが多いからかな?」という答え。真意のほどはわかりませんが、午後もおいしい朝食をいただけるのは、ちょっとうれしいです。

朝からアルコールを飲むことだってあるんです。特別な日や週末は、ドイツのスパークリングワインであるゼクト(Sekt)を朝食に添えることもあります。高級ホテルの朝食ブッフェには、ゼクトのボトルが並んでいることもあります。

ミュンヘンがある南ドイツ・バイエルン地方のビアホールでは、名物をいっぺんに味わえる朝食セットがあります。出てくるのは、ブレーツェル(Brezel)というパンに白ソーセージ、そして小麦ビール(白ビール)。

夕食じゃないですよ。朝食ですよ。

……え、ビール? そう、ビールです。断っておきますが、あくまでも朝食セットです。私は半信半疑でビアホールのスタッフさんに「南ドイツでは本当にビールを朝食に飲むんですか?」と聞いたことがありますが、「ときどき、特別なときに」ということでした。朝からビール。さすがドイツです。

ところで、朝食セットメニューから、南ドイツは小麦文化だということがわかりますよね。今ではブレーツェルも小麦ビールもドイツ全国で手に入りますが、もともとは南ドイツのもの。ちなみに、小麦は本来パンに使うべきもので、ビールに使うのは贅沢なことだったんです。

 

じつは夕食も朝食とほぼ同じ

冒頭で「ドイツの朝食は並べるだけで簡単」と書きましたが、じつは夕食もとっても簡単なんです。なぜなら朝食とほとんど同じだから。

ドイツでは、昼間に1日のメインとなる温かい料理を食べ、夕食は火を使わない食事をとるのが伝統的。つまり、パンにチーズ、ハムなどです。朝食との違いを強いて挙げれば、甘いスプレッドは塗らないぐらいでしょうか。

だから夕食の準備も、とっても簡単。物足りないと思われそうですが、寝る前に胃もたれしないので、理にかなっているのかもしれません。でも私はパンだけだと寂しいので、温かいものも作っていますが……日本人ですね。

朝も夜も、ドイツの食事はとってもシンプル。ですが、食材そのものがおいしいので、なんだかとってもうれしい気分になります。もしドイツにいらっしゃったら、ホテルやカフェで朝食を存分に味わってみてください。きっと、しあわせ〜な気持ちになりますよ。

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この記事を書いた人

久保田 由希

久保田 由希

東京都出身。ただ単に住んでみたいと2002年にドイツ・ベルリンにやって来て、あまりの住み心地のよさにそのまま在住。「しあわせの形は人それぞれ=しあわせ自分軸」をキーワードに、自分にとってのしあわせを追求しているところ。散歩をしながらスナップ写真を撮ることと、ビールが大好き。著書に『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』(大和書房)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)ほか多数。HPTwitterFacebookInstagram

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