お粥、肉まん、揚げパンに豆乳! 中国・上海の朝食は通勤グルメ

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※本記事は特集『海外の朝食』、中国・上海からお送りします。

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中国のイメージそのもの? 路面店の軒先で朝食

突き出した物干し竿に洗濯物がはためく、昔ながらのレトロな街並みと、高層ビルが林立する近代的な風景が共存する中国・上海。そんな街の朝食は、全体的に価格が低く、色々なものをちょこっとずつつまめるのがいいところ。これは中国全体の特徴と言えるのかもしれません。上海に移住して1年半の私は、食べ損ねないように毎日早起きしているほどここの朝食に魅了されています。

中国らしい朝食といえば、露店などでの軒先での食事。都心部では空き地が少ないため減りつつありますが、地下鉄に3~40分ほど乗って少し郊外へ足を運ぶと、まだまだありました。注文を取る大きな声揚げ物のパチパチとした音散歩中に出くわした犬同士の鳴き声など、ここでは様々な「音」が飛び交っています。日本人の私もなんとなく懐かしく感じてしまう光景です。

油条(ヨウテャオ=揚げパン)は中国では朝食の定番。このお店のものは揚げたてアツアツ、しかし油はしっかりと切られており、サクサクとした食感が何とも言えず心地良い。30cmほどの長さで1.5元(約24円)とは、ありがたい限りです。

油条だけだと少々物足りないので、豆腐花(ドウフーフア)も一緒にどうぞ。とろとろの豆腐に薬味と醤油をかけて食べる、日本の湯豆腐にも似た料理ですが、パクチーを抜いてもらったのでさらに和風の味付けに。給食のようなアルミの碗でレトロ感が際立ちます。2元(約32円)。

この界隈には行列ができているお店がたくさんあり、朝7時とは思えないほど賑わっていました。

三輪トラックの荷台をテーブルにして食事をしているさまは、日本ではなかなか見られない光景。

 

揚げパンが脇役に? 惣菜クレープ(煎餅果子)

「南京東路」にやって来ました。ここは上海の中心である外灘にもほど近く、オフィス街でもあるので、通勤途中の会社員が立ち寄りやすいお店が軒を連ねています。

こちらの食べ物は、もともと中国東北地方の郷土料理だった煎餅果子(シェンピングオズ)。最近では上海でも気軽に食べられるようになり、ボリュームとその安さで人気があります。このように、上海をはじめとして、北京や広州、重慶といった大都市には広大な中国各地の美味しいものが集まってくれる。

半年ほど前に来た時は15人くらい並んでいたはずなのに、この日は4人と少ない……雨だから?

煎餅果子はまず、直径40cmはある円盤状の鉄板を熱し、小麦粉の生地を広げて卵を落とし、その上に特製の味噌ダレをたっぷりと塗り広げます。その中に挟むメインの具材は、先ほども紹介した揚げパン・油条(ヨウテャオ)。なんと、揚げパンがクレープの中身になってしまった! いつもは堂々と主役を張る揚げパンが、まさかクレープの一員として働く日が来るとは……。これは、お好み焼きをおかずにごはんを食べる的なことではなかろうか、炭水化物方面の採り過ぎが心配になる。

他の具材は、茎ワカメと細長く切って炒めたじゃがいもに、ネギ、パクチー。

オプションに魚肉ソーセージもありますが、今回は追加せず。

直径40cmもあろうかというクレープに揚げパンを包んでいるので、それはもうすごいボリュームです。魚肉ソーセージを追加しなくてよかった。やわらかいクレープと揚げパン、炒めたジャガイモのサクサクとしたハーモニーが最高、味噌も主張しすぎずピリリとした風味があと引くおいしさで、やめられない。炭水化物の採りすぎ? そんなの知らん。

お値段は、7元(約110円)でした。うん、安い……あれ? でもちょっと待てよ??

前回は確か4元だったはず。一瞬安いと思ったが、たった半年で180%近くも値上がりしているではないか。なるほど、それで並んでいる人の数が減っていた訳で、雨のせいだけではなかったのだ。価格にシビアな人が多い中国(上海)。原価が高騰する中で据え置き価格は大変だが、さじ加減次第ではこのような事態になってしまうのだ。朝食をとりながら、図らずも中国の経済情勢に思いを巡らせることとなってしまったのでした。

 

朝の定番! 肉まん&茶葉卵&豆乳はコスパが最高

定番中の定番。肉まん、茶葉卵、豆乳の最強セット。中国ではどこでも売っている定番といえば「包(バオ=まんじゅう)」、様々な種類がある中でもやっぱり人気メニューは肉包(ロウバオ=肉まん)と菜包(ツァイバオ=野菜まん)です。さて、行きつけのお店へ。

おぉ、結構な行列ができている! しかし店員さんも手馴れたもので、何がほしいか聞き、品を詰め、会計をちゃっちゃとこなすので、これくらい並んでいても自分の番まで5分とかかりません。何も具が入っていない饅頭(マントウ)も意外と人気。改めて観察してみると、肉包&饅頭、菜包&饅頭という組み合わせにしている人も多い。カレーパンと塩パンを食べるような感覚だろうか?

左が菜包(野菜まん)で、右が具なしの饅頭。いかにも何も入っていない感じが伝わる形状だ。

そしてこちらが茶葉卵。中国のコンビニに入ると、独特な匂いを感じることがよくあります。その発生源こそがこの茶葉卵で、お茶とさまざまな調味料でつくったタレに漬け込まれたゆで卵であり、中国ではメジャーな香辛料である「八角」が使われている点が特徴。八角は、鼻をつく漢方薬のような独特の香りで個人的には好きではありませんが、これがないと物足りないと思う中国人はかなり多く、豚の角煮をはじめとする様々な料理に使われているのです。

最後に、豆乳。中国語では豆漿(トウジャン)といい、ほとんどのものに甘い味付けがされています。「原味豆漿(ユアンウェイドウジャン)」と注文すれば、大豆の味が生きた甘くないものが出てくるはずですが……今日は「没有(メイヨウ=『ない』の意味)」と言われてしまいました。残念ですが、仕方なく甘いものを購入します。

定番3点セットはこんなにも無造作に詰め込まれる。さっそくオフィスに持っていって食べますよ。

やっぱり、肉まんは間違いない! じゅわっとした肉汁が時折こぼれそうになる、実際こぼれることもある。これで1.8元(約30円)とは。

茶葉卵もウマイ! 食べてみるとそれほど八角が主張しておらず、意外と普通の固ゆで卵でした。では漬け込んだ意味は一体……まぁいいか。こちらは1.5元(約24円)。豆乳はやはり甘いが、しょっぱいものに甘いものというのもたまには悪くない。こちらは1.2元(約19円)。

これだけ食べて、しめて4.5元(約72円)コスパ、最高です

 

週末には10倍価格のリッチな朝食を楽しめる

週末はのんびりと朝食を楽しむこともあります。

ほら、なんかちゃんとしてるでしょう! そしておしゃれ! 漠然とした説明ですみません。とにかく小綺麗な店構えなのです。

こちらは早朝から深夜まで1日中、台湾風の朝ごはんが食べられるというコンセプトのチェーン系カフェ。ちなみに、台湾がおしゃれなイメージという訳ではなく、このカフェが特別なようです。朝から晩まで営業しているとはいえ、やっぱり朝食は朝に食べたい! ということで日曜日の朝に行ってみました。注文したものは3点。

「鹹豆漿(シェントウジャン)」、最初に紹介した豆腐花と湯条を合わせたような料理です。

とろとろの豆乳に、スライスした油条、海苔、ネギが入っています。ほんのりあたたかい豆乳、とろっとふやけた油条、アクセントのラー油。すべてがうまく混ざり合いコクのあるうまみが出ています。

先ほどの豆腐花もおいしかったけど、油条が入るとボリューム感が出てなお良し。1杯12元(約200円)。

「培根葱蛋飯団(ペイゲンゾンダンファントゥアン=ベーコン、葱、卵のおにぎり)」。

こちらは台湾式のおにぎりで、ベーコン、ネギ、卵、かんぴょう、天かすが入っています。ごはんも具もぎっしりで、22元(約350円)という強気の価格も納得のボリューム。1本全部は食べきれず、半分は袋をもらって持ち帰りしましたが、時間とともに天かすの油がどんどん染み出してくるので注意が必要! 家で食べようとした時にはなかなかのしっとり具合になっておりました。

かなりカロリーが高そうで(全部食べるな、食べたら太るぞ)と天からの声がちょいちょい聞こえるものの、「あと一口、もう一口だけ」と結局全部食べてしまう、やみつき系のおにぎりです。

「鮮肉包子(シェンロウパオズ=肉まん)」。肉まんで13元(約200円強)。路面店では1.5元~2元が相場ですから、かなり高額と言えます、さすがはおしゃれ食堂。何しろ、まんじゅうの形が美しい。そもそも、せいろに入っているんだもの。

しかも、そのせいろにはオリジナルの刻印までしてあるんだもの!

お味は……どちらかというと肉汁少なめであっさり。個人的には肉汁じゅわー系より好きです。とろとろの鹹豆漿と一緒に注文するとちょうどいい塩梅。3点でしめて47元(約750円)。肉まん、豆乳、茶葉卵の定番3点セットは4.5元だったので10倍以上の価格ということになります。とはいえ、時間と空間も一緒に買うと考えれば、そう高くはないのかも?

 

暑がり男子はコンビニおにぎりがお好き?

最後はちょっと番外編。

身近な中国人は何を食べているのか、友人である20代男性・ウ―くんに話を聞きました。

 

海辺

家で朝ごはん食べることはありますか?

友人

ほとんどないですね。中国は外で食べたほうが安いし、歩きながら食べれば時間の節約にもなります。家で作って食べるのはよっぽど時間とお金に余裕のある人だと思いますよ

海辺

では、外で何を買って食べるんですか?

友人

肉まんも食べますけど、暑い日はコンビニおにぎりですね

海辺

え? どうして?

友人

暑いからホカホカなものは食べたくないんですよ

 

中国人の多くは胃の冷えを嫌うため、コンビニのお弁当やおにぎりはたいてい温める。さらにジュースやビールまでも常温で飲むことが多い。そんな中で、「暑い」という理由でウ―くんはあえて冷たいおにぎりを食べるという。最近の若い中国人の傾向か? と思ってよくよく話を聞くと、彼が特別暑がりだっただけ、ということでした。なんだよ。

まぁ、乗りかかった船だ。日ごろあまり食べないおにぎりをチェックしてみようと、日系のコンビニを覗いてみることに。

日本と同じく、三角、丸、海苔巻き式いろいろあります。しかし、どれもこれもこってり系

チキンステーキや魚のフライ、朝から胃がもたれそう。しゃけだけでいいのに、マヨネーズとしょうゆを絡めちゃう。まぐろだけでいいのに、これまたマヨネーズとしょうゆを絡めちゃう。揚げた魚や照り焼きチキン……個人的には朝食にはちょっと厳しいかなぁ。このようなコンビニおにぎりは10年以上前からあるとのことですが、ただでさえ脂っこいものを好む中国人、さらに客層が若いコンビニがこのようなラインナップになることはやむをえないのかもしれません。

 

朝食をしっかりと食べる中国人

暗いうちから街が動き始める中国。住宅街では活気のある朝市の様子を見ることができ、その隅っこには必ず朝食を売っているお店があります。カロリーが高くボリューム満点の朝食を食べてから1日が本格的にスタート。朝食を抜くという話はあまり聞きません

時間がない時でも手軽に食べることができる数元の「小吃(シャオチ―)=手軽に食べられる様々な軽食」は中国人の大きな声と元気の源。中国にお越しの際は、ぜひ地元の人に混ざって朝食の食べ歩きをしてみてください。通常の観光では味わえない、中国人の生活を垣間見ることができるでしょう。

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この記事を書いた人

海辺 暁子

海辺 暁子

2016年より上海在住。日本にいるときから典型的なO型と言われ続けてきましたが、こちらにきてさらにO型っぷりに磨きがかかりました。色々なことが自由なので体重も順調に増してます。中国の家庭料理「宮保鶏丁」が好きすぎて、大量に作って冷蔵庫にストックするのが幸せ。

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