2017.11.13

アルゼンチンの朝食は壺を家族や仲間と回し飲み、絆を深めるマテ茶とは?

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アルゼンチンの朝食は、パンと、「マテ茶」というお茶。一見するとふつうですが、そのお茶の飲み方がとっても独特! 小さな壺に茶葉とお湯を入れて、家族や仲間と「回し飲み」。マテ茶は、朝食はもちろん一日中飲まれる、アルゼンチンのまさしく「ソウルドリンク」で、回し飲みすることで絆を深めるという役割があるようです。

アルゼンチン在住のライター、奥川駿平さんにご紹介いただきます。

 

アルゼンチン人の朝は「飲むサラダ」マテ茶で始まる

読者のみなさま、アルゼンチンのソウルドリンク・マテ茶を飲みながら失礼します。

はじめまして、日本から約1万8千キロ離れた国・アルゼンチンに住んでいる奥川です。僕がここに移住した理由、それはアルゼンチン人の彼女(嫁)と結婚するため。今回はアルゼンチンの生活にどっぷりとつかった僕が現地の朝食を紹介します。

さっそく朝食を紹介したいところですが、まずはアルゼンチン人の主食についてご紹介。彼らは野菜をほとんど食べません。では、何を食べるのか? アルゼンチン人の主食、それは肉です!

全くインスタ映えしない茶色の食事……奥に見える浅黒い食べ物は肉の塊です。

アルゼンチンに暮らし、アルゼンチン人を嫁に持つ僕の家庭に出る食事は毎日、肉・肉・肉ときどきポテト、ばかり。だから、アルゼンチン人の朝食も肉である! と言いたいところですが、残念ながら朝食はパンが多いです。

牛肉のカツレツことミラネッサ。トマトソースはぎりぎり野菜に入るかな……。

朝食時に食べるパンの種類は人によって違いますが、朝に飲むものはほとんど同じ。多くのアルゼンチン人は朝食時に、コーヒーでも、紅茶でもなく、冒頭で僕が飲んでいたマテ茶を飲みます。この飲み物は「飲むサラダ」と呼ばれ、肉が主食のアルゼンチン人には欠かせません。アルゼンチン人の一日はマテ茶にはじまり、マテ茶に終わるのです。老若男女に愛されるマテ茶は、まさにアルゼンチンのソウルドリンク!

行きつけのパン屋さん。ここのファクトゥーラ(菓子パン)は大きくて絶品!

そんなマテ茶とファクトゥーラが、アルゼンチン人の基本的な朝食スタイル。ファクトゥーラの種類はたくさんあり、12個で80アルゼンチンペソ(およそ510円)です。年々物価が上昇しているとはいえ、まだまだ安いですよね。

かつて、僕がアルゼンチン人と働いていた頃に、ボスから「職場にマテ茶とファクトゥーラがあるから、家で朝食を食べてくる必要はない」と言われたことがあります。それくらい、現地のひとびとにとっては日常にあるものなのです。

マテ茶とファクトゥーラ。手前に映るクロワッサンみたいなものは「メディアルーナ」です。ファクトゥーラは朝食ではもちろん、おやつのときも食べます。

栄養面から見ても、マテ茶はアルゼンチン人には欠かせません。肉ばかりで野菜不足の生活では、どうしても栄養が偏ってしまいます。正直なところ、僕もアルゼンチンの食生活には不安を感じていました。マテ茶は、そんなアルゼンチン人の健康を支えているものでもあります。マテ茶にはビタミンやミネラルはもちろん、ポリフェノールまで豊富に含まれています。「飲むサラダ」と呼ばれている理由は、この豊かな栄養成分ゆえなのです。

牛肉のステーキとマッシュドポテト。アルゼンチンは牛肉が安くておいしいけど、肉ばかりの食生活で大丈夫?

僕はアルゼンチン人の友人に「こんな食生活ばかり続けていたら、すぐに死んでしまうよ。日本人の平均寿命は80歳くらいだし、85歳くらいまでは生きたい!」と相談したことがあります。

彼は「まあアルゼンチン人は好きなもんを好きなだけ食べて、早く派手に死んでいくからな」と言いながら、スマホでアルゼンチンの平均寿命を調べるのです。そして「シュン、アルゼンチンの平均寿命はおよそ76歳らしいぞ! 俺たち80歳近くまで生きれるな!」と喜びながら言いました。なんとアルゼンチンの平均寿命はおよそ76歳ということが判明。捉え方は人それぞれでしょうが、僕は意外と長いと驚きました。もしかしたら、マテ茶が大きく貢献しているかもしれません。

 

仕事内容よりも先に教えられたアルゼンチン人直伝マテ茶の淹れ方

マテ茶の味は基本的に苦いです。また淹れ方によって、微妙に味が変わる奥の深い飲み物でもあります。実はおいしいマテ茶を作るルールがあり、それに従うと苦みや渋みも少ないさっぱりとしたマテ茶を作ることができます。アルゼンチン人と働いたとき、最初に教えられたことがおいしいマテ茶の作り方でした。仕事内容じゃなくて、マテ茶の淹れ方を最初に教えるのもどうかなと思ったのですが……それはさておき、ここからはアルゼンチン人直伝のマテ茶の淹れ方を紹介します。

写真は、黒い「マテ壺」と呼ばれるマテ茶専用の壺と「ボンビージャ」と呼ばれる鉄製のストローです。マテ壺はコップのようなもので木製のものが多いですが、プラスチック製のものもありデザインもさまざま。マテ壺の中に入ったマテ茶を、ボンビージャを使って飲むことになります。

マテ壺とボンビージャをセットしたら、「シェルバ」と呼ばれるお茶っ葉を入れます。目安としては、6~7分目まで。そして、1つ目のポイント! シェルバを入れたら、手でふたをしてマテ壺を少し振ります。これでシェルバについている余計な粉を落とすことができるのです。

アルゼンチンのスーパーには、たくさんのメーカーのシェルバが販売されています。僕が愛用しているのは、赤いパッケージのPipore。1㎏で59アルゼンチンペソ(およそ380円)ですね。緑のPiporeは味が少しマイルドです。

CBSEはフルーツの香りがついているシェルバです。梨の香り、オレンジの香り、そしてベリー類の香り(僕の一押し!FRUTOSDELBOSQUEという名称で販売されています)など。他にもミントが混ざったシェルバなど、本当に種類もメーカーもたくさん。

マテ茶はブラジル・パラグアイ・ウルグアイ・チリでも飲まれていますが、アルゼンチンのマテ茶は少しユニークです。砂糖をたっぷりとマテ茶に入れるスタイルが、アルゼンチン流。「お茶に砂糖って合うの?」と疑問に思いますが、合うんです。砂糖を入れることで、マテ茶独特の渋みと苦みがマイルドになり、飲みやすくなります。

ここで2つ目のポイント! お湯の温度は75~80℃くらいがベスト! あまりにも熱すぎるお湯だと、味がかなり渋くなりおいしくないです。また熱いお湯で淹れたマテ茶はお腹にも悪いそうなので、お湯の温度には注意します。

それでもやはり熱いので、マテ茶をストローで飲むといつも妙に真剣な顔つきになってしまう。

僕もお湯の温度に関しては、徹底的にアルゼンチン人の指導を受けました。今ではお湯を沸かしている間に電気ポットが奏でる「コー」という音で、お湯の温度を判断できます。マテ茶は一回飲んでシェルバを変えるのではなく、味が薄くなるまで何回も繰り返し飲みます。

 

一人で飲んだら叱られる!? 回し飲みがマテ茶のマナー

基本的にマテ茶は数人で回し飲みします。例えば、あなたが友人2~3人と一緒にいて、1人でマテ茶を飲むことはほとんどありえません。マテ茶を用意する前に、「いっしょに飲まないか」と誘うことが大切であり、マナーでもあります。以前、嫁の友人が自宅に来ているときに僕が1人でマテ茶を飲んで、こっぴどく叱られた経験も良い思い出です。

そのほか、家族や親しい友人たちとマテ茶を飲むときには守っておきたいマナーがあります。ここからは、マテ茶を飲む前に覚えておきたい3つを紹介します。

  1. 渡されたマテ茶は飲み干す
    数人とマテ茶を飲むときには、ホスト役であるマテ茶を作る人が自然と決まります。ホスト役から渡されたマテ茶は飲み干さなければいけません。一口だけ飲んでおしまい、これはありえません。マテ茶を飲み干すと、ズズッという音が出ます。それがマテ茶を飲み切ったという合図なので、ホスト役にマテ壺を返しましょう。
  2. 「ありがとう」は「ごちそうさま」の意味
    マテ茶は基本的に何度も渡されます。でも、「もういらないや」と思うときもあるはずです。そんな時は、マテ茶を飲み終わった後に「グラシアス(スペイン語でありがとうの意味)」と言いながらマテ壺を返しましょう。これが、ごちそうさまの意味です。
  3. ボンビージャは動かさない
    ボンビージャを動かしてしまうと、シェルバが詰まって飲みにくくなります。飲み終わった後に、口がついた部分を拭くように軽く触るのは問題ありませんが、大きく動かさないようにしましょう。また一から作り直す羽目になってしまいます。

 

アルゼンチン人はマテ茶セットで外でもマテ茶を楽しむ

アルゼンチン人はいつでもどこでもマテ茶を飲んでいます。道を歩いているとき、公園にいるとき、そして空港でもマテ茶を飲んでいます(アルゼンチンが誇るサッカー選手メッシが空港でマテ茶を飲んでいる写真を見たことはありませんか?)。

外でマテ茶を楽しむときに必要なのが、写真のマテ茶セット。左側の赤い箱の中に、マテ壺とボンビージャ・お湯が入った水筒・シェルバと砂糖が入ったプラスチック容器を入れます。この赤い箱はマテ茶を持ち歩く専用のバッグですが、普通のリュックサックにマテ茶セットを入れるアルゼンチン人も多いです。

僕の住む町には、ネウケン川という大きな川があり、近くの公園では多くの人がここでゆったりとした時間を過ごします。平日の16時という少し早い時間(アルゼンチンでは13時~16時30分・17時までシエスタ)に来たので人は少ないですが、土日になると多くの人でにぎわいます。

ネウケン川周辺では、友人同士や家族でマテ茶を楽しむ人もいれば、

恋人とマテ茶を楽しむ人も(僕の嫁です)! アルゼンチン人はマテ茶を飲みながら、外でのんびりと過ごすことが大好き。

なお、写真の撮影日は春の中でも暑い日で、ひとびとは少し早めの「テレレ」を飲んでいました。これは冷たいマテ茶で、お湯の代わりにジュースを入れる夏の定番ドリンクです。

マテ壺でテレレを作るのもいいですが、ガラス製のコップにボンビージャ・シェルバ・氷を入れてテレレを作るのも見た目が涼しくておすすめです。ジュースの代わりに水を注いでもいいですし、アレンジとしてレモンやミントを入れてもさっぱりとして暑い夏にはピッタリです。ただ、鉄のボンビージャはガラスのコップを壊す可能性もあるので要注意。

 

人と人の絆を深めるマテ茶

アルゼンチン人にとってマテ茶はただの飲み物ではなく、人と人をつなげるためのものだと思います。「同じ釜の飯を食う」ではありませんが「同じマテ壺でマテ茶を飲む」と、自然とその人との距離が縮まり、良い関係性を築くことができます。

マテ茶は、フレンドリーで人懐っこい、そして大切な人との関係をとても大事にするアルゼンチン人の性格に影響を少し与えているのかもしれません。アルゼンチン文化のシンボルであると僕は感じています。

アルゼンチンに来たら、ぜひ公園などでマテ茶を飲んでください。マテ壺にはさまざまなデザインがあり、お土産にもピッタリですよ。日本でもシェルバは購入できるようなので、マテ壺とボンビージャをアルゼンチンで購入しておけば、日本でもアルゼンチン流のマテ茶を楽しむことができます。

 

最後に、これは撮影した公園で見かけたアルゼンチンの警察です。もちろんパトカーでパトロールもします。でもネウケン川周辺では、馬に乗ってパトロールする警察官をよく見ます。格好いいですよね。

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この記事を書いた人

奥川 駿平

奥川 駿平

1992年生まれ、福岡県古賀市育ち。アルゼンチン在住歴3年。美人アルゼンチン人嫁と結婚するために、新卒という大きすぎるブランドを捨ててアルゼンチンに移住。毎日マテ茶を飲むほどのマテ茶好きで、同世代で最もマテ茶を消費していると自称。今さらながら、Twitterにドはまりしています。

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