アフリカ最高のビーチリゾート・ザンジバル、観光客と住人が織り成すふしぎな空間

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※本記事は特集『海外のビーチリゾート』、ザンジバルからお送りします。

クリックorタップでタンザニア説明

 

アフリカのハワイ! こと、ビーチリゾート・ザンジバル

あなたは「アフリカのハワイ」と呼ばれる美しい島をご存知ですか?

アフリカ大陸の南東部にあるタンザニア。その東に浮かぶ島がザンジバル(Zanzibar)です。透き通った海や、歴史と文化に彩られた石畳の街並みが魅力的な、東アフリカ随一の観光地。おそらくほとんどの日本人には縁がないであろうこの島について、まずは歴史からご説明します。

ザンジバルは11~13世紀にかけて、イスラーム系スワヒリ文明の周縁部として栄えました。

1900年代初頭。大量の象牙とともに写る男たち。(© CARL E. AKELY/NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE) 出典:National Geographic

それからポルトガルやオマーンによって征服されながら、象牙、クローヴ(香辛料)、奴隷などの貿易で繁栄します。その後19世紀末からはイギリスの直接統治を経て、1963年にザンジバル王国として独立。翌年には革命によって君主制が廃止されるとともに、大陸部のタンガニーカと合併して、現在につながるタンザニア連合共和国が形成されます。

タンザニアの国旗

ザンジバルの国旗

ザンジバルは独立国ではないものの、ザンジバル革命政府が強い自治権をもって統治する地域なのです。

浜辺で出会ったマサイ族の警備員とThe Rock外観。

そんなザンジバル、いまではすっかり人気の観光地となっています。特に有名な場所と言えば、インターネットや雑誌の「世界の絶景レストラン」特集でもよく紹介されている、海に囲まれたレストラン「ザ・ロック(The Rock)」

「このボートは日本製なんだよ」という船頭さん。

私が訪れたときには干潮時で歩いて店内に入れたのに、食事をしている間に潮が満ちて、帰りはボートで岸まで渡してもらいました。なお、有名なマサイ族はタンザニア北部に住む先住民。お店の周辺では、青い海とのコントラストが見事な赤い布をまとったマサイ族の男性が警備をしていましたが、彼らはその視力や反射神経を活かして、警備の仕事に就くことが多いのだそうです。さすが猛獣退治や放牧をなりわいにしてきた民族。

シュノーケリング中のタケダ(生きてます)

ザンジバルではこの透き通った海を生かして、シュノーケリングやダイビングなどマリンスポーツも楽しめます。手ぶらで行っても道具を貸し出してくれる場所も多いのでご安心を。

 

歴史を感じる石畳とドアの街、ストーンタウン

カラフルなアートと石畳が美しいストーンタウンの街並み

ザンジバルの中心地・ストーンタウンは、奴隷貿易で栄えた歴史と、文字通り石畳が美しい風情のある港街です。19世紀前半に、オマーンのサイイド・サイード王による王宮として建設され、2000年にはユネスコの世界遺産に登録されました。

ちなみに、イギリスの伝説的ロックバンド「クイーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーもこのストーンタウンの出身で、生家は「マーキュリー・ハウス(Mercury House)」として観光スポットになっています(当時ザンジバルはイギリス領、両親はペルシャ系インド人。1964年のザンジバル革命時にイングランドに移住)。

数え切れないほどのお土産屋さんやブティックが並ぶストーンタウン

ストーンタウンには、観光客向けのお土産屋さんが所狭しとひしめき合っています。「コンニチワ」「ミルノタダ~(買わなくてもいいから寄って行ってよ、の意)」と声をかけてくる店員たちとのコミュニケーション(と値引き交渉)も楽しみ方のひとつ。

シティツアーでインド式ドアについてガイドの説明を受ける

この街で特に目を引く風景は、ドアに施された精緻な装飾。このドアにはインド式、アラブ式、スワヒリ式の3種類があります。上の写真はインド式で、真鍮製のトゲのようなものはなんと象の突進を防ぐためにつけられたのだとか。装飾の豪華さはそこに住む人の豊かさも表しています。

アラブ式のドア

長方形でまわりに装飾がついているドアはアラブ式。上部にはアラビア語の碑文があるものも多く、コーランからの引用が一般的だそうです。

シンプルなスワヒリ式の青いドア

スワヒリ式は飾り気のないシンプルなもの。交易で栄えていただけあって、インド、アラブ、スワヒリなどさまざまな文化が入り混じった独特の空気を感じることができる点がザンジバル最大の魅力ですね。

 

ザンジバルならではの海の楽しみ方とプロポーズ

ここからはいよいよ主役であるビーチの紹介。ザンジバルの海で過ごしていてもっとも驚いたことは、日本とは海を楽しむ方法がまったく異なるということ。個人的な日本の海のイメージと言えば、海の家にかき氷や焼きそばなどの食べ物、スイカ割りや砂遊びに、サザンやTUBEなどのJ-POP。とにかく雑多で人も多くガヤガヤとした印象です。

波打ち際でカクテルを楽しむ女性たち

ところが、ザンジバルのビーチはとにかく洗練されています。夕方まではカクテルがお得になるバーカウンターもビーチに多く設置されているので、DJが流すクラブミュージックを聴きながら波打ち際でグラスを傾けている人もよく目にします。

パラソルやビーチチェアー、ビーチベッドも置かれていて、潮風を浴びながらお昼寝をしたり読書をしたりする人の姿も。こんな休暇の過ごし方も素敵ですね。

両側から波が打ち寄せる砂の島「サンドバンク」

この他に海を堪能する方法としてオススメなアクティビティが、「サンドバンクツアー」。干潮時にだけ現れる砂の島までボートで遊びに行くツアーです。海藻や石すらないので、本当に真っ白な砂浜と、透き通った青い海を味わえます。ここで水平線を眺めながらテントを張ってもらって、ビールを片手にいただいたランチは最高でした。

ワインを飲みながら、夕陽が沈む光景を海の上で眺めるサンセットクルーズ

カップルにおすすめしたいアクティビティは「サンセットクルーズ」。私は青年海外協力隊時代にルワンダで活動していたとき、おなじく隊員だった女性と遠距離恋愛だったのですが、毎回ザンジバルで落ち合っていました。はじめて彼女とここを訪れたときにこのクルーズを体験して、あまりの夕日の美しさにふたりで何度も「きれいだねー!」と言い合ったことを2年経ったいまでもよく覚えています。

そしていまでは、その彼女が妻になりました。サンセットクルーズをはじめ、ザンジバル旅行で関係が深まったおかげで、2年間の遠距離恋愛を乗り越えて結婚できたと言っても過言ではありません(過言です)。プロポーズをしたのは5回目のザンジバル旅行(青年海外協力隊は、任国から渡航できる国が限られています。私と彼女はお互いの国を行き来することはできなかったのですが、唯一タンザニアだけで会うことができたため、2年間で5回も行きました)。

ルワンダのお土産屋さんで買った指輪を渡した、直後の写真(きちんとした指輪は帰国後に購入)。

民族楽器「カリンバ」を演奏してくれたおじさん

いい感じのムードになっていると、突然やってきたおじさんが民族楽器「カリンバ」を使った演奏を披露。「どこから来たの?」と聞かれたので「日本人だ」と答えると、即興で「スズキ~トヨタ~♪」と歌ってくれるサービスぶり。ザンジバルならではのおもてなしで、想い出に残るプロポーズとなりました。

 

ザンジバルで、遊ぶ外国人と暮らす地元民。

歴史や文化、綺麗な海を堪能できて大好きになった観光地ザンジバル。

よく泊まっているホテル。一部屋1万5000円程度でリッチな気分を味わえます。

ルワンダは内陸国で海がないうえに観光地として整備されているところも少ないため、より一層魅力満載のザンジバルを楽しむことができました。しかし、現地には、私のように「非日常」のバカンスを味わいに観光客がこぞって足を運ぶ一方で、「日常」を送っている住民もたくさんいます。

ストーンタウンの街中。2階には住民の洗濯物が見えます。

観光地であり住宅街でもあるストーンタウン。路地裏でベランダに干された洗濯物や、食事の用意のためにおこされた煙から、住民たちの「暮らし」の手触りを感じることができます。言葉も宗教も違いますが、料理をして、洗濯をして、掃除をしてーーという日々の営みは、日本から1万km離れた観光地の路地裏でも同じなんですよね。でも、私たちのように何万円もかけて海外旅行に行って余暇を過ごす、という人はほとんどいません。

観光客向けの屋台が出る公園脇の海。地元の子どもたちが泳いでいますが、ここに加わる観光客はいません。

観光客と現地の人々が入り混じる空間で過ごしたからこそ思い知らされたものが、先進国と途上国の「壁」。歴史的な建造物をパシャパシャと撮影したり、ボートに乗って冒険気分で海に出たり、自分にとっては新鮮な経験でしたが、モスクでお祈りするおじさんや、自転車で駆け回る子ども、市場で買い物をするおばさんたちは、自分たちの土地に押し寄せるこんな外国人観光客を見てどう思うのだろうかーーという思いも心をかすめました。

ザンジバルに来るたびにドライバーをお願いしていた、ラシッドさんという現地に住む男性がいます。家族は奥さんと子どもふたり。教師やドライバーの仕事をしつつ、大学に通って勉強し、それとは別に最近ではマッサージの資格まで取った努力家です。5回目となった最後の旅行でも、彼に空港まで送ってもらいました。すると、空港よりもかなり手前の街中で「ちょっと待ってて」と突然車を降りたラシッドさん。

弾けんばかりの笑顔で見送ってくれたラシッドさん。

何事かと思ったら、お土産にタンザニア名物であるバオバブの実でつくったお菓子をプレゼントしてくれたのです。もうしばらく会えないのに、ここまで心を尽くして送り出してくれるなんて。彼のおかげで、最高に晴れやかな気分でザンジバルを後にすることができました。

観光地として栄えたザンジバル。これからもこの地域の発展に観光客は不可欠です。「自分たちの土地を荒らしやがって……」と、その存在を疎ましく思っている現地の人も、もしかしたらいるかもしれません。それでも、ラシッドさんのように心からもてなしてくれる人もいるし、仲良くなれるかどうかということに先進国とか途上国とか、国籍はきっと関係ない。生活者の匂いを感じられるビーチリゾート・ザンジバルで、そんな生き方を学ぶことができました。観光客にとっても、生活者にとっても、この土地が楽園であり続けますように。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

タケダ ノリヒロ

タケダ ノリヒロ

日本の大手食品メーカーで3年勤務した後、退職して青年海外協力隊としてルワンダの農村で2年間活動。18年夏から当国でスタディツアーを運営。身長と体重と生まれた年がテイラー・スウィフトと同じです。個人ブログ『タケダノリヒロ.com』(月間PV12万)/ルワンダ情報専門サイト『ルワンダノオト』編集長/Twitterはこちら

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