韓国のビーチリゾートは三方三色、それぞれの魅力と由緒

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※本記事は特集『海外のビーチリゾート』、韓国からお送りします。

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韓国の海水浴客はTシャツ派が多い

ソウルで最も暑い季節は7月末~8月初旬にかけて。この時期は会社員たちが夏休みをとるピークとなります。夏のレジャーといえば、水遊び。ここ数年は海だけでなく、ウォーターパークのような複合テーマパークで遊ぶ人も増えているようです。

ちなみに韓国のビーチでは、水着の上からTシャツを着て海に入る人をよく見かけます。人前で裸を見せない儒教的な考えが影響しているのか、日焼けを避けたり、体のラインを気にする美容的な理由からかもしれません。

もう一つ考えられることは、行水のような感覚で、本格的に泳ごうとしていないことも影響しているのかもしれません。学校にプールがないため、泳げない人もいるからです。

 

韓国人なら誰でも知るビーチ、海雲台

「韓国で最も有名な海水浴場はどこか」と韓国の人に尋ねたら、ほとんどは韓国第2の都市・釜山の「海雲台(해운대、ヘウンデ)」と答えるでしょう。釜山の代表的な観光地でもあり、夏のレジャーシーズンとなれば、国内はもちろん、海外からも観光客がやってきます。

シーズン前、とある年の5月の海雲台海水浴場

その海雲台海水浴場は、釜山の南東に位置。砂浜は約1.5キロメートル続く、規模の大きな海水浴場です。新羅末期の文人・崔致遠(최치원、チェ・チウォン)がここの景観を眺め、岩に「海雲台」と刻んだことが名前の由来とされています。

海岸の北側はタルマジギル(달맞이길、月迎えの道)と呼ばれる丘になっており、オシャレなカフェやペンションがあるドライブコース。南側にはタワーマンションが建っており、富裕層が多く住む場所でもあります。とくにここ数年は人気が高く、住宅価格 が大幅に上がっているようです。夜になると、そのマンションの光が海岸に届きます。

夏の夜の海雲台海水浴場、奥がタワーマンション

海水浴場の周辺には観光ホテルが多いだけでなく、カジノや天然温泉、ナイトクラブのようなレジャー施設があり、まさに海の行楽地そのもの。地元の市場には飲食店が並び、刺身店や海鮮鍋専門店もあり、釜山らしく海の幸が味わえます。

釜山・海雲台は休養の場というより、遊び場としてのリゾート地。ビーチ近くの人気のお店には夜中でも人があふれているほどです。

 

ソウル―済州路線は、なんと10分に1本以上

済州島といえば、かつては韓国の新婚旅行先でした。経済発展を遂げた今は行き先に海外が増えたため、新婚旅行で行く人は少ないですが、それでも韓国屈指のリゾート地といえばココ。

夏休みの国内旅行先としても人気ナンバーワンで、海水浴はもちろん登山や、リフレッシュのために訪れる人もいます。修学旅行で行く学校も多いのです。

済州島行きの飛行機は、韓国各地の国内空港から出ていますが、特にソウル・金浦空港からは飛行機が10分に1本以上も発着陸する超過密路線。シーズンオフの平日にLCCを利用すると、片道の運賃が2万ウォン(約2,000円)を下回ることさえあります。

世界遺産・城山日出峰

済州島は東洋のハワイとも言われ、太古の火山活動によってできた島。島内には自然にできた洞窟や奇岩などがあり、オルム(오름)といわれる約360の小さな火山が点在しています。空港のほか、島内にはヤシの木が植えられており、南国気分が感じられます。

エメラルドグリーンが美しい済州島の海岸

済州島の名物は「漢拏峰(한라봉、ハルラボン)」といわれるデコポンのほか、黒豚が有名。また海に囲まれていることから、魚介類や海藻などの海の幸も豊富です。韓国のほかのどの地域よりも観光地らしさが感じられ、下の写真のようにお刺身に花が添えられて出てくる店もあります。リゾート気分満点です。

 

三方を海に囲まれた韓国、それぞれの海水浴場

日本は四方を海に囲まれていますが、半島国家である韓国は三方が海に囲まれており、東西南、それぞれの方角に海水浴場があります

リアス式の南海岸

南の海は、南海(남해、ナメ)と呼ばれています。広い範囲でリアス式海岸になっており、海岸線が入り組んだ地形です。そのため左右が開けておらず、陸地に囲まれたような海水浴場が多い、という特徴があります。

崔致遠が「南方で景色が抜きんでている」と評した「南逸台(남일대、ナミルデ)」

南海岸にも人が多く訪れ、由緒ある海水浴場もあります。慶尚南道・泗川にある南逸台海水浴場はそのひとつです。とはいえ南海岸はソウル首都圏から距離が遠いこともあり、訪れやすさを考えるならば、東海岸や西海岸ではないかと思います。

海岸線が南北に長い東海岸

ソウルから東海岸までは、高速道路を利用すると、約2時間で到着します。水平線のはるか先は日本ですが、韓国の東に位置する海であることから、韓国では「東海(トンヘ、동해)」と呼ばれています。起伏が少なく、南北に長く続く海岸線が東海岸の特徴です。

東海岸で最もよく知られているビーチは、平昌五輪のスケート競技が開かれた江陵(カンヌン、강릉)にある鏡浦海水浴場。人気アイドルグループ・SUPER JUNIORのウニョク(은혁)は、ソウル以外のおすすめスポットとしてこの海岸の名前を挙げています。(雑誌『FRAU』2014年5月号)。

鏡浦海水浴場の裏手には松林が広がっており、そのすぐ後ろには「鏡浦湖(キョンポホ、경포호)」という湖があります。海岸線に砂が堆積し、長い年月をかけて形成されたラグーン(潟湖)です。その鏡浦湖のほとりには月見の名所、鏡浦台(キョンポデ、경포대)という東屋があります。

鏡浦台

この鏡浦台に伝わる詠み人知らずの詩があり、ここからは5つの月が見えるとされています。

  • 空に浮かぶ月
  • 湖に映る月
  • 海に浮かぶ月
  • 杯に映る月
  • 君の瞳に映る月

日本でもよく知られているサントリーの韓国焼酎『鏡月』のネーミングは、鏡浦台から見える5つの月に由来するそうです。

韓国でも「5つの月」が定説ですが、江陵出身の方(※)によれば、かつて地元では「空・湖・杯の3つの月」としか言われておらず、残りの2つはあとから加えられたものだそう。実際に鏡浦台に上がっても、海岸までは見えないのです。(※東京・三田の韓国料理店「東光」の崔順女さんのお話による)

鏡浦台から見た風景。海は見えない。

いずれにせよ、古くから月見の名所であったことは確かなこと。この鏡浦湖のまわりからは、韓国の5千ウォン札の肖像となった儒学者・李退渓(이퇴계、イテゲ)や、その母で5万ウォン札に描かれた女流書画家・申師任堂(신사임당、シンサイムダン)といった奇才な人物が輩出されていることでも知られています。この湖には芸術的な感性を生む要素があったのでしょう。

なお東海岸にはこのようなラグーンが点在しており、ひとつの地形的特徴をなしています。また江陵には海辺にコーヒー通りがある海岸や、フォトフレームなどの造形物があり、インスタ映えする江門海岸などがあるほか、日の出の名所である正東津などは有名です

似ているようで違う韓国の年越しとお正月、「除夜の鐘」に「とんど焼き」も

遠浅の海が広がる西海岸

一方の西海岸は、中国大陸へつながる「黄海」です。韓国では西海(서해、ソヘ)と呼ばれています。もし仁川空港から韓国に入国するときは、ぜひ上空から海を眺めてみてください。海には干潟が広がっています。遠浅の海こそが韓国の西海岸の特徴です。

そんな西海岸の最大規模の海水浴場といえば、忠清南道・保寧(보령、ポリョン)市にある大川海水浴場(대천해수욕장、テチョンヘスヨクチャン)。ソウルから列車に乗ると途中から海沿いを走り、約2時間半で到着します。

この付近では世界的にも良質のマッド(泥、mud)が採取できることで有名で、毎年7月には「保寧マッド祭り」というユニークなお祭りが開催されます。大川海水浴場付近のマッドには多量のミネラル分が含まれていることから美容にもよいとされ、その泥を使った化粧品や石鹸なども開発されています。

お祭りでは参加者たちが体を泥だらけにしながら、レクリエーションを楽しみます。傍から眺めているだけでも、楽しさと熱気が十分に伝わってくるイベントです。

保寧マッド祭りの様子

貝焼きが名物の西海岸

遠浅の海が続く西海岸では、潮干狩りが楽しめます。海岸近くにはやはり、飲食店が多数。もちろん場所や地域によっても異なりますが、刺身店のほか、貝焼き専門店などが多くみられます。

下の写真はとある海辺で食べた、貝焼き。韓国の海岸で食べるポピュラーなものです。アサリやハマグリ、ホタテやサザエなどが焼かれていますが、隣に添えられたインスタントラーメンが韓国らしいところ。

西海岸にグループで訪れると貝焼きなどを食べた後、アサリが入った韓国式うどんのカルグッスを食べたりもします。グループで訪れると、洗面器のような大きな器に盛られてでてきます。

湯気が立つあさりのカルグッス(韓国式うどん)

このように海のグルメも多様ですが、海水浴場で遊んでいるときには食堂に行かずに、カップラーメンで食事を済ませたり、砂浜で出前をとる人もいます。

2016年末には韓国の中央部に東西を横断する高速道路が完成。これにより東海岸で日の出を眺め、その日のうちに西海岸で日の入りを眺めることも容易になったといえます。なお年末年始にはそれぞれの場所で、日の出祭り、日没祭りが開かれたりもします。

 

韓国の海に出かけてみよう

海に囲まれた朝鮮半島。東西南それぞれの海岸に特色があり、異なる景色を見せてくれます。また海のグルメも魅力。刺身はもちろんのこと、貝焼きや海鮮鍋などは豪快さが際立ち、韓国の海にいるんだという気分にさせてくれます。

韓国のビーチに一度行ってみたくなったという方は、まず日本からの直行便があり、韓国人の誰もが知っている済州島や釜山で海水浴を満喫してみてほしいと思います。

 

 

編集:ネルソン水嶋

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この記事を書いた人

吉村 剛史

吉村 剛史

東方神起やJYJと同年代の1986年生まれ。「韓国を知りたい」という思いを日々のエネルギー源とするも、韓国のオシャレなカフェには似合わず日々苦悩。ソウルや釜山も好きだが、地方巡りをライフワークとし、20代のうちに約100市郡を踏破。SNSでは「トム・ハングル」の名で旅の情報を発信。Profile / Twitter / Facebook / Instagram / 韓旅専科

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