かわいいパンダ、中国でのイメージは意外と辛辣? 上海動物園で人気調査
※本記事は特集『海外の動物』、中国・上海からお送りします。
カンカンとランランから45年、友好の象徴であるパンダ
日中国交正常化を記念して、中国から2頭のパンダ、「カンカン」と「ランラン」が東京・上野動物園にやってきたのは1972年。公開初日は6万人近くの見物客が押し寄せ、それは大変なフィーバーだったそうです。それから45年の月日がたった昨年、上野動物園では赤ちゃんパンダの「香香(xianxian)」が愛くるしい姿を披露し、再びパンダフィーバーを巻き起こしています。
誰がなんといおうとかわいいものはかわいくて、個人的に大好きなのですが、中国人自身はパンダをどう思っているのでしょうか? 今回、観察&調査してみます。
本題の前に……実は、パンダの元祖はレッサーパンダなのである
本題に入る前に、まずはパンダに関するコネタをひとつ。通常パンダといえばすでに挙げた写真のような黒と白のジャイアントパンダを指しますが、正式には「ジャイアントパンダ」と「レッサーパンダ」の2種類を総称して「パンダ」と言うんですね。
実は先に発見されたのはこちらなのに、パンダといえばジャイアントパンダとなってしまったのは少々切ないところです。ジャイアントパンダは中国語で「大熊猫(ダーションマオ)」、レッサーパンダは「小熊猫(シャオションマオ)」といいます。ただ「熊猫(ションマオ)」とだけ言う場合は、やはり日本と同じくジャイアントパンダのことを指します。レッサーパンダに幸あれ!
パンダを見るために上海動物園へ行こう
さて、そういう訳で、本題のジャイアントパンダです。中国に住んだからには、本場のパンダを見なければ始まらない。早速、上海中心部から最も近い『上海動物園』へと足を運びました。
地下鉄10号線を利用すれば中心部から30分ほどで到着、観光客にも行きやすい立地です。しかし、ここでひとつの懸念が。今回はパンダを見ることが目的ですが、中国の動物園だから当然いるだろうという先入観だけでここまで来てしまいました。いやいや、いないわけないでしょう?
と、少々不安に思いつつチケット購入。
じゃん! よかった! これはもうパンダいるでしょう。もはや上海動物園の顔です。ちなみにチケット代金は大人40元(約680円)となかなか良心的。
東京ドームの16倍、とにかく広い上海動物園
上海にはもうひとつ『上海野生動物園』があり、そちらが最大だと聞いていたため、上海動物園は広くはない、との勝手な思い込みがありました。
しかし、園内MAPを見ると相当広そう! 先にネタばらししてしまうと、この日はなんと2万歩、時間にして約4時間も歩く羽目に。途中で迷ったこともあり、とにかく歩いた、歩いた。それもそのはず、Wikipediaによると74.3万平方メートルもあり、これは東京ドームのおよそ16倍弱。ちなみに上海野生動物園の方はというと、153万平方メートルとさらに倍の32倍強になります。
「象、トラ、パンダを見たい方はこれに乗ると早いですよ~」とのアナウンスが流れているカートもありましたが、結構並んでいたために断念。後から考えると乗ればよかった。しかし、パンダって象やトラと同じ並びなのね。
魚、鳥、金魚、マニアックな動物(?)たち
入場して歩くと、まずは「爬虫類館」がお目見え。
土曜日だったせいか、家族連れを中心にこの通りの混雑。トカゲや蛇にそこまで群がるかねと思うが、入場して間もない場所なのでみんなが集中するのは致し方ないところか。その後も、魚、鳥、金魚(!)など、いわゆる動物園らしい動物がなかなか登場しません。
しばらくするとようやくパンダのサインが! しかし、まだ630mも先とは……。いきなりパンダはないだろうなと思っていたものの、想像以上に道のりは遠いです。分かれ道も多く、そのうちパンダの居場所を示す看板も消え、とにかくやみくもに歩きました。キリン、象、ライオンが登場し、動物園らしくなってきたものの、パンダの表示は相変わらず出てきません。
これは後からわかったことですが、百度MAP(GoogleMAPのような中国のアプリ)を開ければ、ARで動物がいる方向が示されるとのこと。そうですよね……IT先進国ですものね。動物園自体は昔ながらのつくりであったためそんなものがあるとは思わず、うっかりしてました。時すでに遅し。
パンダ以外の中国を代表する動物・キンシコウと初対面
パンダに出会うまでにすでに疲労困憊気味の私、しかしここで少しテンションがあがる動物との出会いが。
以前、友人に、何気なく聞いたことがあります。
中国を代表する動物といえばやっぱりパンダよね
そうですね。でも、キンシコウもいますよ
えっ! なにそれ
と、くいつく私。
日本では『ゴールデンモンキー』と呼ばれていますね。中国を代表する動物としてはパンダと並ぶと思います
へー!
本当かどうかはわからないけど、孫悟空のモデルと言われることもありますね
へー!
と、完全に前のめりになったのです。
中国=パンダだと思っていたので、ちょっとした衝撃を受けました。そのキンシコウが今、はじめて目の前に。しかし、眺めているお客さんは私を含めて3人のみ……。
確かに「中国を代表する」であって「人気がある」とは言ってなかったもんなぁ。しかしこの孤高を思わせる表情。2500年前から生息していたというキンシコウは、確かに存在感がありました。
そしていよいよ、ついにパンダとご対面!
疲れすぎてあきらめかけた頃、突如パンダのぬいぐるみを売るショップが現れました。とにかくパンダ一色のお店。ということは、これは本丸・パンダにも近いということか。
そして……
ついに! いました! パンダ!
さすが中国を代表する動物だけに、パンダの小屋の屋内外にゆったりとしたスペースがとられています。そして、驚いたことに、ここに来ると急に日本語が聞こえ始めました。やはり多くの日本人のお目当てはパンダなのでしょう。
現在いるのはオスの雅二(ヤーアー)と、同じくオスの星二(シンアー)でともに4歳です。雅二と星二ってなんだか日本人の男の子みたい。トントンやホアンホアンではないのね……。余談ですが、香香(シャンシャン)のような2音続ける名前は女の子に人気があり、男の子にはまずつけないそうです。同僚の女性にもセイセイさんやリーリーさんがいます。響きがかわいらしいですよね。
写真の通り、わりとゆったりと見ることができます。むしろ、絶対爬虫類やゴリラの方が見物客の人口密度は高かったな…。
仰向けになって笹をむさぼるパンダ。ちょっと体が汚れて茶色くなってます。
滑り台を上っていくパンダ。
部屋の中に入れてよ~って言ってるように見えるパンダ。
開けてもらえなくて諦めるパンダ。
水のみ場に上がっちゃうパンダ。
gifアニメーションでもどうぞ!
とにかくコロコロしていて目の周りが黒いだけで、なんでこんなにかわいいのだろうか、というほどいちいち動きが愛らしいです。30分はたっぷり観察し、やりきった感の中ふらふらと歩き出すと……いました! お隣に。みなさんもすでに忘れていたかもしれませんが、そう、あの子です。
レッサーパンダ!
手の伸ばし方がかわいい! さきほどのパンダとは違った方向性だが、これはこれでかわいい。これはこれで、とか言っちゃいけないけどかわいい。パンダよりも見物客は圧倒的に少なく、存在感もないものの、かわいらしさでは負けてないと個人的には思います。
本当はレッサーの方が元祖なのに、この、葉っぱに隠れている控えめな感じがいい。ここでようやく本当にやりきった思いになり、出口へと向かいました。
日本とは異なる、動物園での食事風景
こちらの動物園や遊園地の多くがそうですが、ちゃんとしたレストランがほとんどありません。
このような古めかしい売店がぽつぽつとあるばかり。スナック菓子やフランクフルト、ドリンクといったラインナップですが……
メインはカップめん。スーパーで買うよりも5割から8割は高い価格設定ではありますが、それでも200円ちょっとです。
外にあるテーブルに色々な食べ物などを広げ、カップめんを食べている人が多く見られます。中華料理の食堂が2軒ほどあったものの、人気はないようでした。
なぜカップめんを食べるのか、中国人の友人に聞いてみたところ「観光地で高いお金を払ってまずいものを食べるのがバカらしい。その点、カップめんは安いし、何より味はどこも変わらない」とのこと。観光地ではついつい気が大きくなって少々高くても払ってしまう、典型的な日本人気質の私ですが、やはりこんなところでも中国人は合理的なようです。
中国人に聞くー、「パンダは好きですか?」
そんなかわいいパンダ、中国人はどう思っているのか? 身近な20名に質問をしてみました。「パンダは好きですか?」という質問に対して、回答は「大好き」「好き」「普通」「嫌い」「大嫌い」の5段階です。円グラフにするまでもない簡単な結果だったので、発表してしまいます。
大好き 1名
好き 11名
普通 8名
以上です。
さすがに嫌いという人はいませんでした。「好き」と答えた人の多くは、実物が好きというよりは、パンダのグッズがかわいいという理由。確かにパンダグッズは大人でもほしくなってしまうほどかわいい。
売店はぬいぐるみやクッションなど、ほぼパンダグッズで占められていましたが、動物園側も「パンダが一番人気であり、グッズも売れる!」と見越してこのようなラインナップにしているのでしょう。しかし、何より、「普通」が4割もいるとは! 嫌いになるほどではないものの「汚い」「でかい」「意外と猛獣」というのがそこまで好きではない理由だとか。確かに茶色かったし大きかったけど、そのコロコロした動きは充分にかわいいものだと思うのだけれど。
中国と日本のパンダに対するそれぞれの想い
上海動物園に行って実際に様子を観察してみて、日本人、中国人、動物園側、それぞれからパンダに対する想いに少しずつのズレがあるように感じました。日本人である私は「とにかくパンダが見たい! どこなの? どこにいるのー!?」状態。中国人は「中国といえばパンダなのは間違いないけど、他の動物も見たいよね」と冷静。動物園側は、「まぁそうは言ってもここは中国だからね」となんとなく広告塔にしているイメージ。
とはいえ、たった一人「大好き」と答えた中国人の友達は、私と同じくらいかそれ以上にパンダを見るとテンションが上がるタイプなので一概には言えないのですが……。
おそらく、中国人にとっては身近すぎるパンダ。かわいいけれどもそれ以上でも以下でもない。自国の動物に対する想いって案外そんなものかもしれないけれど、「パンダをこんなにゆったりと見れるのは贅沢なんだよ」ってことを触れ回りたい気分になったのでした。
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編集:ネルソン水嶋
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この記事を書いた人
海辺 暁子
2016年より上海在住。日本にいるときから典型的なO型と言われ続けてきましたが、こちらにきてさらにO型っぷりに磨きがかかりました。色々なことが自由なので体重も順調に増してます。中国の家庭料理「宮保鶏丁」が好きすぎて、大量に作って冷蔵庫にストックするのが幸せ。